表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/216

生活消耗品は同じタイミングで無くなる事が多い

 




「ゴーレムさん動き始めたんですか!?」


「森に向かってる」


「あらら……」



 とうとうこの時がきたか。



「スピードはゆっくりなんですよね?」


「これまでに比べれば早い」


「おおう……」



 どうした最古の魔物。いきなりやる気を出すんじゃないよ。



「サンリエルさん、急いで近隣諸国の地図を簡単にでいいので描いてください。――カセルさんとアルバートさんはそのまま続けていてください」



 アルバートさん、おろおろしてたら包丁で手を切るぞ。


 サンリエルさんはすぐさま腰に着けているカフェエプロンで手を拭き準備に取り掛かってくれた。

 エプロンが意外と似合うんだわこれが。







「――――こっちから来ますか? それともこっち?」



 キッチンの椅子に座り地図を指差しながらチカチカさんに確認する。



「こっち」


「――こっち? リンサレンス側か~」



 地球式の方角で言うと北東方面からやってくるようだ。



「どのくらいで雷充電できそうな位置に来ますか?」


「数週間」


「ふんふん。追いかけてくる魔物達は?」


「それより早い」


「そっかあ……数は?」


「10はいかない」



 意外と少なかった。

 いや、でも長生きしてるっていうくらいだから高レベルモンスターのはずだ。



「人間は積極的に襲わないんですよね?」


「やられたらやりかえすけど」



 ……ですよね。



「じゃあ近隣の人達にはひっそりと籠城的な事をしてもらって、雷充電が終わるまで耐えてもらう方向が良さそうですかねえ」


「被害を最小限にとどめたいならそれでいい」



 最小限かあ……。



「……ちなみになんですけど、向かってる中で1番弱い魔物に対して、もしこの世界の軍隊が討伐に乗り出したら勝てます? クダヤの兵力は考えなくていいです」


「勝てる」


「お。まじですか」


「その後他国に攻め込まれて簡単に滅ぼされるくらいの被害は出るけど」


「へ、へえ~」



 これは手を出さずに静観がやっぱり正しい選択肢だな。



 いつの間にか難しい顔をしていたみたいで、カセルさんとアルバートさんが手を止めて心配そうにこちらを見ていた。



「すみません、つい」



 眉間の皺を自ら伸ばす。



「皆さん、落ち着いて聞いてくださいね――」



 それぞれの顔を見渡しチカチカさんから聞いた話を伝える。













「手を出すと国が滅びますか……」


「結果として国の寿命を急速に縮める事になる、という事ですね」


「リンサレンス側が素直に警告を受け取るでしょうか?」


「自己責任というしかあるまい」



 あ、やっぱりそうなのね。

 ミナリーム側っぽいもんな~。



「ひとまず神の社に船を送りますので、さりげなく港の執務室にお戻りください。御使いに海上で拝謁しその事実を知らされたふりをしてもらう事になりますが」


「ヤマ様はこれから……」


「私は食事をしてのんびりしてます」


「本日はこちらにお泊りですか? 寝具をご用意致しましょうか?」



 島でも街でも至れり尽くせり。



「キャン!」


「はいはい。――暖かく薄手の大きなものがあれば1枚欲しいです。それに守役達とくるまって寝ます」



 実際に泊まるかどうかは決めていないがあってもいいだろう。

 商品を補充しないといけないし。



「ヤマ様」


「はい」



 なんだねサンリエルさん。

 少し視線を逸らしているところを見る限り言いにくい事なんだろうけど。

 いつも前のめり凝視だもんな。



「執務室とここは近いので後程菓子などを運んできてもよろしいでしょうか」


「良いですけど……?」


「せっかくの成功祝いですので……」



 なんだ、ただの良い人じゃん。



「良いですね~。ヤマ様がいらっしゃいますのでクダヤに危険は無いようですし、他国に警告し警備体制を強化した後は時間がありますからね」


「そんなものなんですか~」


「他国に親書が届いた後は騒がしくなるでしょうが、時間を見つけてヤマ様の店のお役に立ちますので。お望みの調味料に関しては私の方でも自作してみます」



 サンリエルさんは寝ずに手助けしてくれそうで怖い。


 しかし明日からは1人でお店の切り盛りが始まるのか。

 明日はしっかりテキパキ動かないとな。



「アルバート、お前は明日もヤマ様をお手伝いしろよ」


「え……? え!?」



 うるさっ。

 そんな大声出せたんだ。



「領主様、アルバートの分の仕事は俺が頑張りますから。ヤマ様お1人だと大変でしょうし。他国の件ではアルバートはそこまで関わらなくても平気ですよね?」

「カセ……!」


 おいおい、アルバートさんの『腕を力いっぱい掴む攻撃』はまったく効いていないな……。

 しかも私の手助けという名目を却下するわけにはいかないし、自分がずっと手伝うわけにもいかないから何も反論できないでいるサンリエルさん。



「実はアルバートさんにはまた手伝ってもらいたいと考えていたんです。先生だからでしょうか、お金の管理がとても上手だと感じましたので」


「お前褒められたぞ。良かったな!」


「お、お……う……」



 やだ、なにこの可愛いテレ男子。ニヤニヤしちゃう。

 でもそろそろサンリエルさんにフォローをいれておいた方が良いな。



「冷めてしまうかもしれませんが簡単な食事を作っておきますので、本日店に立ち寄る際は良かったら食べてください」

「はい」



 完全に食堂のおばちゃん。

 しかも料理上手ともヘタとも言えないおばちゃん。


 でもサンリエルさんの目が心なしかきらめいたのでフォローは成功だと思う。返答もかぶせ気味にしてきたし。

 普通料理を食すがいいわ。




 そしてメンズはエア拝謁と魔物対策の為に港の執務室に向かった。






「――さて、私は1人です。自由です」



 突如感じる解放感。

 自分の店で1人。好き放題できるぞ。



「チカチカさんチカチカさん、実体化して私の作ったテリヤキチキン食べて下さいよ」


「いつもコメントに困る味のやつ?」


「…………食べた事ないじゃないですか」



 悔しかったのでお姉様バージョンですっと現れたチカチカさんに振り回した髪を当てる。

 地球生活のどこの場面の事を言ってるんだ……!



「無難に煮込むやつにすれば」


「テリヤキも無難ですー」



 ぷりぷりしながらもカセルさんが途中まで切っていた野菜を同じように切る。煮込みも追加で作るだけだし。無難に逃げたわけじゃないし。

 しっかしあんな短時間でここまで下ごしらえが済んでるってすごいな。



「カセルさんはどんな味付けをしようとしてたんだろ……まいっか。煮込めば野菜のうまみとか出るでしょ。後は適当に調味料入れて――」


「基本の力がないのにアレンジしようとするから失敗する」


「…………」





 その後はずっと不機嫌なまま料理を作り続けた。

 ずっと眉間に手を添えられていたが。

 宙に浮けるってずるい。


 オムライス作りの達人のようにフライパンを動かした時に「すごいすごい」と褒めてもらいうっかり笑顔になるところだったが、「すごい」に心がこもっていなかったので何とか思いとどまった。


 そしてマッチャが私の味付けを手直ししていた瞬間も見なかった事にする。










「いただきます!」



 キッチンのテーブルの上にはテリヤキキチンに2種類のサラダにティーさんのパン、そしてコンソメスープに野菜炒めにシチューに牛皿に焼き魚。『もどき』が付くけど。


 とにかく豪勢。湯気でさらに美味しそうに見える。

 そしてなんと白ご飯もある。チカチカさんのおかげ。ずっとぷりぷりしててすんません。


 さっそくかきこむ。





「美味しい。ほんと美味しい。……でもテリヤキチキンと野菜炒めだけ普通な気がする……」



 2つともずっと私が付きっきりで作ったものだ。

 つまりマッチャがこっそり味を整える暇がなかったという事で……。



「ぴちゅ」


「そっか。私料理上手か……」


「キュッ」



 みんなが口々に褒めてくれる。

 優しい。島のみんなが全員優しい。



「フォーン」


「お?」



 ことりと置かれる焼いたお肉が乗ったお皿と茶色いタレの入った小皿。



「もしかして……」



 急いでタレをつけ食べる。


 更にもう1枚。


 さらに続けて――




「……焼き肉のタレだ……!!」



 お皿にのっていたお肉だけじゃ足りない!



「フォーン」


「チカチカさんが……?」



 がたたっと席を立ってチカチカさんに勢いよく抱き着く。



「ツンデレ過保護!」



 チカチカ分身が私の見ていない所で焼き肉のタレを作っていたなんて。

 想像するとシュールだけど。



「ありがとうございます! 好きです!」


「知ってる」





 が、お肉を追加で焼いている間もずっと感謝の気持ちを伝え続けていたら最終的にめんどくさそうにされた。

 しつこくてさーせん。





数日更新をお休みします。読んでいただきいつもありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ