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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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個性の渋滞

 





 ぴちゅぴちゅ



 ぴちゅぴちゅ







 …………鳥の鳴き声で目覚めるって健康的。



 ぼんやりと明るい光を浴びながら目を覚ます。


 しかし頭がはっきりとしてきた事により、違和感に気がついた。



(この島に普通の生き物っていないよね……?)



 不思議に思い窓を開けテラスを見ると、キイロが手すりにとまってぴちゅぴちゅ鳴いていた。


 ですよね。



「キイロおはよー」



 サンダルを履きテラスに出て挨拶をしながら、昨日用意してあった水で顔を洗う。

 テラスに落ちた水はきっと乾くと信じている。テラス用の履物も決めないとな。


 キイロに近付くと下にみんなが集まっているのが見えた。お早い集合で。

 マッチャは手に虹色の物をいろいろ持っている。やった! 持って来てくれたんだ。



「みんなおはよー。好きに家に出入りしていいからね」


 そう告げると、みんな光の玄関をくぐって消えた。私も1階で合流しよう。



 チカチカさんにも挨拶しつつ、キイロは肩にとまらせて階段を降りる。


 下に降りると、マッチャが虹色コップに健康水を入れて手渡してくれた。この気遣い、メイド・執事プレイも出来るな。

 お礼を言ってコップに入っている健康水を飲み干す。うん、健康そうな喉越し。



 クローゼットの中のバスタオルが乾いていたので顔をざっと拭く。

 さて、ナナ作成のあれこれを確認しようか。


 ここに早急に机と椅子が欲しいと思う。しょうがないので床に座り込もうとしたところ、エンがそっと寄り添って座ってくれた。

 ふわっふわ! 顔を擦りつけて堪能する。



 気が済んだらまずはマッチャに渡された虹色コップの確認だ。ひとまずはナナにハグをして感謝を伝える。


 こういうのって琉球グラスって言うんだっけ? ステンドグラス? とにかく綺麗。

 じっくり鑑賞していると、お皿2枚に果実と野菜を乗せてスプーンを添えたものが差し出された。果実と野菜は洗った形跡がある。やっぱり使い方知ってるんだね。



「おお、ありがとう。わざわざ洗ってくれたんだね~。嬉しい」



 もしゃもしゃ食べ始める。みんなは昨日収穫しカゴに入れていたものを食べ、今朝収穫して持って来てくれたものをカゴに入れてくれた。

 たまに母親だけ余ってるからって自分だけ残り物の夕飯で、私達子供にその日作った料理をたくさん食べさせてくれたことを思い出した。


 思い出すと胸がぐっとつまった。

 いけないいけない、必ずまた会えるんだからしんみりするのはやめよう。



「みんなで朝ごはん美味しいね。幸せだね」



 今ある状況にあらためて幸せな気持ちが湧き起こる。モフモフ達と楽しく食事してるんだよ、なんて幸せ。

 モフモフだぜ、モフモフ。


 ニヤニヤと食事を続けていると、急にホワンと真っ白な強い光に包まれた。



「うおっ!」



 いかん、低い声が出た。急は止めてほしい。

 そして白い光はすぐに消えた。



「チカチカさん……、なんか光りましたけど?」



 ついついハイ・イイエで答えにくい質問の仕方をしてしまったが、チカチカさんは虹色にお光りに。


 虹色レインボー発動だ。なんだ? お祝い事かしら?

 不思議に思っていると、キイロが髪をくいッと引っ張ってきた。引っ張っられた方を向くと、自分の髪の毛が目に入った。



「白くなってるんですけど!」



 髪をまとめて確認すると、私の胸辺りまである髪の毛が下から1cmほど白に染まっていた。



「ちょっとちょっと私をどんなキャラにしたいんですか……」



 しかもよく見ると絵の具の白ではなく、光沢がかったきらきらしている白だ。真珠?

 すごくあれだ、個性があれだ、うん。イニシャル紋様も含めてあれだ。



「……チカチカさんこれは良い変化って認識でいいですか?」


 相変わらず虹色レインボーなチカチカさんに尋ねる。



 チカチカッ



 良い変化らしい。チカチカさんも喜んでいるようだし深く考えるのはやめよう。根元からだったら白髪に見える可能性があったが、毛先からならその心配はない。



「今後もこうなる事はありますか」



 チカチカッ



 うん、レベルアップに近い何かだと思っておこう。



 私があれこれ騒いでいるうちにみんなは食事を終えたようだ。私はもう少し食べておくことにする。

 鍋に、水瓶と斧も出来ているようで素敵。



「そうだ、ナナが作ってくれたお鍋でお湯を沸かしたいから外で食べようか」


 そう提案して外で食事の続きをする事にした。







 外に出て燃えそうなものを集める。燃え広がらないようにエンに穴を掘ってもらいそこに小さめのたき火を作る。



「ナナ、このお鍋って直接火にあてて大丈夫だよね?」



 一応確認をしておく。やたら豪華な鍋だから割れたりするのは避けたい。

 問題なし、という事で水を入れたお鍋を火の上にセットする。


 温かいものって落ち着くよね。調味料があればスープが飲めるんだけどなー。



「ねえ、良い香りのする食べられそうな植物って知ってる?」



 ハーブティーなら作れるかもと思い立ち聞いてみると、島のあちこちに散らばって生えているそうだ。これで味のあるものが飲める。それらは探索ついでに集める事にして、食事を続ける。



 ちょうど食べ終わる頃に、沸いてきたようだ。すぐ飲みたかったので沸騰はさせずに、火を土で消してコップで鍋のお湯をすくう。鍋掴みもいつか手に入れよう。



「ふーー」



 ただの白湯だが温かいと落ち着く。ついつい気の抜けた声が出る。

 みんなも興味深そうに白湯を見ている。



「これ熱いけど大丈夫かな?」


 そう言ってもう1つのコップに白湯をすくい入れマッチャに渡し、自分が飲んでいたコップを肩にとまっていたキイロに差し出してみる。




 飲んだ。



 結構あっさり飲めた。大丈夫そうなのでエンとナナには鍋から飲んでもらう。

 みんなは見た目動物だけど、この島に住んでるからやっぱりどこか違うよね。今度一緒にハーブティー飲んでみよう。


 近くの木の根元を枝でがりがり掘って、食べ終わった皮なんかを埋めた。栄養になあれ。

 そして、食事が終わったので今日の予定を発表する。



「今日は砂浜探索をして、その後はテーブルセット作成と洗った物を干すあれこれを作りたいと思います」


「ぴちゅ」

「クー」

「フォーン」

「コフッ」



 ……? コフッ?

 いやまあ消去法でナナしかいないんだけどね。また斬新な鳴き声を。



 ではみんなにも予定を伝えたし出かける準備でもするか。



 鍋に残った白湯で軽く食器を洗い、家に持って入る。チカチカさんにお出掛け報告しながらバスタオルで拭き、ひとまずはクローゼットの棚に置いておく。

 そのうち食器棚作成だ。しかし次々と必要なものが出てくるなあ。



 虹色水瓶に昨日汲んだ水をまとめて入れ、空いた果実容器とバスタオルを持ってテラスに向かう。

 果実容器はテラスの窓付近で乾燥させる事にし、バスタオルを手すりに干す。

 重かったが何とか布団も干す。雨は降らないようなので(外れなし! チカチカさん予報)、しっかり日光を浴びてふかふかな寝心地を提供して欲しい。布団のふか度は私にとってまさに死活問題だ。


 干し終わったので1階に下りて着替える。今日は砂浜に行くのでサンダルも持って行くことにする。

 カゴにサンダル、コップ、果実をごちゃっと入れて麦わら帽子をかぶる。仕上げに虹色ナイフと斧をもう片方の手に持ち出発だ。



「チカチカさん行ってきます」








 外に出て砂浜に向かう。カゴはいつものようにマッチャ、ナイフはキイロが持ってくれるので斧を片手にエンに乗り込む。


 ふふふ、騎馬民族っぽい。持ち手も刃の部分も虹色の斧を持った勇ましい民族。虹色族と呼ぼう。

 勇ましさちゃんと出てるかな?


 エンに少し速足で進んでもらい無駄に掛け声をかけて中腰で斧をぶんぶん振り回してみる。

 いやっほー!





 しかしすぐ飽きた。というか中腰きつい。騎馬民族の足腰凄いわ。


 後はもう大人しくエンに揺られてました。途中でハーブっぽいのをみんなが見つけてカゴに入れてくれるのも見てるだけでした。騎馬民族の族長の娘っていう設定にしておこう。



 しばらく進むと潮の香りが濃く、木々がまばらになってきた。砂浜は木の滝や虹色ゾーンよりは遠い場所にあるようだ。

 そして、木々の間から海と砂浜が見えた。



「プライベートビーチ!!」



 ちょっと凄いんですけど! プライベートなんですけど! ビーチなんですけど! 秘境っぽいんですけど!



 エンから飛び降り、下り坂になっている砂浜を一気に駆け下りる。

 海の色とかすっごく綺麗。もう興奮しない方がおかしい光景。


 うお~と駆け下りていると、海面に何かが浮かんでいるのが目に入る。



「お? あれ? ラッコ? え、でもあのフォルム普段見かけるんだけど……」



 海が近くなるにつれて、それもこっちに近付いてきているのがわかった。



「……ダックス?」



 ラッコのような背泳ぎ状態で浮かびこちらを見ているのは犬のミニチュアダックスでした。


 胸がキュンキュンしすぎて苦しい。実家で飼ってたのよダックス。


 撫でたい衝動を抑えられず手を伸ばそうとして――



 ドパンッ!!



「ひぃぃ!?」



 ――何かが海中から飛び出してきた。



 それは空中でくるりと1回転してすたっと砂浜に着地した。



「お、おう……。えーと、ペンギン……さん、かな?」



 濃い青色のグラデーションをしたペンギン? が立っていた。そう、手が羽みたいになってるのね……。



「ちょっとみんな落ち着こ――」




 ザパアァン!!




「ちょっ、もう何だよ!?」



 ざぱざぱザパザパもうこっちはお腹いっぱいなんだよ!

 その気持ちをぶつけるべく音のした方を向くと――



「ぎゃあ!!!!」





 みんなの憧れドラゴンさんがいました。








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