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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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インテリアコーディネート

 




 鼻血を出している男性に手を掴まれている女性。




 (はた)から見たら完全に犯罪現場。



 そしてモフモフ達がじりじりと威嚇しながらこちらに近付いてきている。



「ちょっと待って! 今サンリエルさんに衝撃を与えたら血が飛び出る……!」



 まさしく惨状に……!



「それ気絶させる?」



 物騒惑星!



「気絶は必要ないです! 誰かカセルさん呼んできて!」


「キャン!」

「キュキュッ」



 うわ。1番心配なペアが名乗りを上げてしまった。



「ロイヤルは誰かに連れて行ってもらってね! 痛いのはなしで!」



 何だこれ。泣きたい。



 声を掛けても「大丈夫です」と返すだけで俯いたままのサンリエルさん。

 申し訳ないが力いっぱい手を引き抜く。


 その瞬間ぼたぼたっと更にこぼれ落ちる鼻血。



「うわっ出血が増えた!」



 もうほんとに何なんだよ……。




「――どうかされましたか?」



 サンリエルさんにハンカチを渡していると、階段からカセルさんがひょっこりと顔をのぞかせてきた。

 そしてこちらの様子を確認した途端目が輝いた。



「またですか~」



 確実に面白がっている。



「握手をしたらこうです」


「あ~それはしょうがないです」



 そうか、しょうがないのか。



「結構血が出てるんですけど……」


「大丈夫でしょう。一族の人間は頑丈ですので」



 そうか、頑丈か。



「ヴー」



 ぼんやりと鼻血サンリエルさんを見守っているとダクスの唸り声が。



「申し訳ありません!」



 そしてアルバートさんの声も。どうした。


 階段から聞こえてきたので見に行く。

 すると、アルバートさんの靴を噛んで階段を上がらせようとしているダクスと、それを近くで監視しているキイロとロイヤルと白フワの姿があった。

 白フワはダクスの頭に張り付いてるだけだけど。




「……ダクス、それアルバートさん自分の意思でのぼった方が早いよ」



 アルバートさん超気を遣ってんじゃん。ダクスが交互に靴を引っ張るのじっと待ってるし。

 ほんと良い子……。



「ほら、もう握手事件も終わったから大丈夫。アルバートさん、構わず上ってきてください。階段危ないですし」


「はい……!」



 こじんまりを最大限避けながらアルバートさんも2階に。

 これで全員集合だ。



「り、領主様……!?」


「ヤマ様に握手して頂いたみたいだぞ。ま、お前の気絶には誰も勝てねーけどな!」


「お前……!」



 わいわいがやがやと楽しそうなメンズを椅子に座りながら眺める。

 向かいの席には止血中のサンリエルさん。やれやれ。




「ヤマ様、1階の奥に炊事場がありますので少し休憩しますか?」


「そうですね……冷たい飲み物だけ欲しいです」



 血を見た事により食欲は失せている。



「それでは領主様お手製のお菓子は後にしましょう」



 そういや移動中そんな事言ってたな。お菓子持ち歩き男子。



 用意はメンズがしてくれるというので遠慮せずお願いする。

 準備ができるまでの間、椅子に座りエンのモフモフをもふもふしながら商品のレイアウトでも考える事にしよう。



「――あ」



 レイアウトの前に気になる事が出てきてしまった。



「サンリエルさん、ここに掃除道具ってありますか?」


「階段下にほうきを置いています」


「拭き掃除をするものは?」


「申し訳ございません、机を新たなものに取り換えます」



 がたたっと血だらけの手で立ち上がるサンリエルさん。血よ、いい加減止まれ。



「そういう事じゃないんですよ。ここの2階は靴を脱いで寛ぐ場にしたいので、床を拭き掃除をしようと思いまして」


「靴を脱ぐ……ですか」


「こちらでは無作法だったりしますか?」



 地球では足を見せるのが良くない文化もあったような。

 アルバートさんの家でもみんな靴を履いたままだったし。



「いえ、ですが奇襲をかけられても対処できるよう靴は履いたままです」


「へ、へえ」



 奇襲て。そんなものなのか。



「寝る時はどうしてます? お風呂とかではもちろん脱ぐんですよね?」


「……靴を脱ぎ側に置いて寝ています。布で出来た室内靴もあります。入浴中は脱ぎます」


「へえ~」



 眠るサンリエルさんってあんまり想像できないけど、いつでも戦闘に移れるようにしてるんだな。

 そしてプライベートな質問をしてすまん。




 結局、話を聞く限りでは私の思うモップや雑巾は売って無さそうだったので、使えそうなものがないか買い物に行く事にした。

 はぎれとかは売ってそうだし絨毯も欲しい。島の洞窟にある絨毯は国が買えそうだから止めておこう。

 それとテーブルの血痕も拭い去らないとな。


 隣は雑貨屋さんで向いはパン屋さん。良い場所に用意してもらえて嬉しい。

 家に帰ったら街の地図で確認してみよう。






「――ちょっと買い物してきます」



 キッチンで騒がしく準備を進めているカセ&アルに声をかける。

 ほら、サンリエルさんは手を洗って。



「ちょうど準備が出来ましたので飲んでいきますか? 買い物もお供します」


「じゃあ飲んでから。買い物も優先順位はそこまで高くはないのですぐに戻ってきますけど」



 1階だけ掃き掃除をしてしまえば2階は後日でも店はとりあえずオープンできるし。





「何を買われるんですか?」


 キッチンの椅子に座って冷たい守役スペシャルティーを飲んでいるとカセルさんに質問された。

 守役ブレンドは相変わらずの美味しさ。



「清掃用品と絨毯と……後は近くのお店に挨拶回りを」


「あの一族の老人達に言えば素晴らしい絨毯がすぐにでも手に入りますが」


「サンリエルさんにも説明したんですが、なるべくご近所さんのお店で必要なものは揃えようかと。今後お世話になる事もあるかと思いますし」



 挨拶をされて嫌な思いをする人はそうそういないだろう。

 さっきの人混みで迷惑をかけてないといいけど。



「荷物持ちをします!」


「そうですね、誰かお1人――そうだ、ちょっと待っててください」



 入り口付近に置かれている荷物の中からキウイメロンを取ってキッチンに戻る。



「1つはそれぞれ差し上げますが、これ買ってもらえませんか? お金が欲しいです」



 今の私にはお金の余裕がない。以前もらったサンリエル基金は持って来るのを忘れた。

 お小遣いはじいじとばあばにもらっていたけど買い食いで少なくなっている。

 手っ取り早い金策、キウイメロン保険。



「すべて買いますしこのお金も自由にお使いください」

「何個まで買えますか? 銀貨1枚ですよね? 今日いくら持ってたかな~」



 すごい食い付き。

 アルバートさんも慌てて財布の中身をチェックしてるし。

 サンリエルさんはじゃらじゃらと金貨を出してくるのやめてください。白金貨は無いみたいで安心したけど。


 チカチカさん、本当にありがとうございます。島の恩恵で儲かりそうです。



 ミュリナさん達、アルバートさんのご家族の分を残して後は全部売る事に。

 分給10万円のお仕事。

 そしてお供はサンリエルさんになった。ですよね。ここまで騒ぎになっているし今さら隠す必要もない。





「掃き掃除だけお願いしますね」


「お任せください!」



 こじんまり達は何をするかわからないのでリュックにぎゅうぎゅうに詰め込んである。キイロは肩。

 大きい組はお留守番だ。仲良く掃除をお願いします。



 入り口の扉を開けて外に出ると人だかりは無くなっていた。族長さん達がうまく対処してくれたんだろう。

 店の立地を落ち着いて確認すると、港近くの小島のように見える区画の1つ、その隅にあるようだ。



「申し訳ありません。新たに建物を建築できる場所、かつ安全面で最適な場所がこちらでした。商売のしやすいもっと人通りの多い場所にする予定だったのですが……」



 店の隣の水路を興味深く眺めているとサンリエルさんに謝罪をされた。



「当初から他店との差別化を図る方針でしたので問題ありません。お店とても素敵です」



 お店を用意してもらえるってだけで凄い事だし。



「向かいのパン屋と隣の雑貨屋の経営者は一族の人間ですのでご安心ください」



 なんでもクダヤの一族は城関係の仕事に携わる事が多いため、こういう場所でお店を経営しているのは珍しいみたいだ。

 抜かりない市場調査をありがとうございます。



 よし、まずはパン屋さんに挨拶だ。




「――こんにちは」



 若干緊張しながら開け放たれている入り口をくぐる。

 窓ガラス越しにパンが少しだけ置かれているのが見えたので準備中なのかもしれない。

 店内をきょろきょろ見回していると奥から女性が出てきた。



「領主様がいらっしゃるって事は、もしかしてヤマチカ屋の人?」



 にこにこと聞いてくるその女性は技の一族だと思われる。20代くらいに見えるな。

 ショートカットがお似合いです。



「はい、本日からお店を始める予定です。ヤマチカと申します、よろしくお願いします。先程の人混みでご迷惑をおかけしていたら申し訳ありません」


「随分と礼儀正しいお嬢ちゃんだ」



 しまった、この口調は御使い寄りだったかもしれない。



「エグラスティーヌ、よろしく」


「え、エグ……?」



 一瞬考え込んでいたせいで何を言われたかわからなくなった。



「長いし言いにくいよな、ティーって呼んで」


「は、はいティーさん」



 名前だったのか。ティーさんはサバサバ系の人なんだな。



「これお店の商品です。良かったらもらってください」



 バスケットに入れて持ってきた守役スペシャルティーをティーさんに渡す。ややこしいな。



「ありがたく頂くよ!」



 大切なご近所付き合いなので少し立ち話をする事に。

 準備中だと思っていたのだが、店は開けているそうだ。


 ティーさんが言うには「気が向いたときに焼いて店に出す」そうだ。

 普段は商品開発を楽しんでやっているとの事。ほんとにこういう趣味みたいな商売をしてる人っているんだ……。

 私も似たようなものだけど。



「しっかし驚きました。御使い様以外はどうでもよくて他の仕事は族長達に押し付けてるって噂には聞いてたんですけど……本当にそうだったんですね~。献上品を扱う商人にべったりくっついて!」


「……へえ」



 やっぱりそんな事になってたのかとサンリエルさんに視線をそっとやる。




 そっと逸らされた。





2月2日22時に更新したかったんです。ストックないのにしたかったんです。

更新のペースが乱れたらすんません。

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