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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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142/216

本音と建て前

 



 私の言葉(建て前)に何やら勇気づけられた様子の見知らぬ青年その1。

 S青年もそうだけど純粋な良い子だなあ。


 なんか……ごめん……。



「お嬢ちゃん先生、努力次第で顔を良く見せるってどういう事だ?」



 モテちゃんまで食い付いてしまった。



「そうですねえ――」



 女性誌、女性誌の記憶よ出て来い……!



「……元々の素材が良い人はどんな格好をしていても様になります。そうじゃない人は努力でそれを補うんです」


「ほうほう」



 みんな! こんな小娘のあっさい薄っぺらの言葉をそんな真剣に聞かないで……!



 チカチカさんに助けを求めようとしたが、いつの間にか椅子に腰かけ足を組みこちらを静観している。

 アルバートさんからもらった花束がお似合いですね……。

 女王様みたいです……。


 しかしこれで助けは期待できない事はわかった。

 これが自業自得というやつですね。



「――おしゃれな人はそこまで素材が良くなくても雰囲気がかっこ良く見えると思いませんか? 女性の場合は雰囲気美人ですね」


「おしゃれな奴はかっこ良く見えるっていうのはわかるな」

「確かにな~」


「自分に似合う髪型、服装、装飾品なども見つける事が出来ると自分に今より自信が持てます。それが心の余裕として女性を惹きつける事にもつながるかと……」



 もう私の頭の中に女性誌の知識はない。

 出し尽くした。

 後はチカチカさん直伝の細胞ストレッチの知識くらいしか出てこない。



「髪型かー」

「お嬢ちゃん先生……俺気にした事ないんだけど……」

「そんなに服に金はかけられないしな~」



 ……良い事を思い付いた。ごまかし方を思い付いたとも言える。



「たくさん服を買わなくても自分の体に合った服を着るだけでも違うと思います。――ちょっとお姉さん達の意見も聞いてきますね。あの、少し手伝ってください」


「お? いいぞ?」



 モテちゃんにお願いして一緒についてきてもらう。


 怪訝そうにしながらもモテちゃんはついてきてくれた。

 後ろからチカチカさんも。過保護さん。好き。



「おせっかいなんですけど……メリッサさんと、シャイアさんに好意があるかもしれない女性に自然にお手伝いして頂けないですかねえ? 髪型の意見を聞いたり」


「そういう事か」



 にやりとモテちゃんは話に乗ってくれた。



「シャイアの子はメリッサと一緒にいると思うぜ~」



 おお、それは好都合。


 がしがしと頭をやや乱暴に撫でられつつ後ろをついて行く。

 キイロ、肩に爪が食い込んでるから。痛い。






「――なあメリッサ、ちょっと手伝ってくれよ」



 メリッサと呼ばれた女の子はあれだ、そう、濃い茶色のトイプードルみたいな髪の色をした女の子だった。

 トイプと違ってさらさらストレートだけど。頭良さそう。


 エリーゼちゃんと一緒に、カセルさんのいる一族集団と一緒にいる。



(あれ? アルバートさんはいない? ――はいはい)



 私の何かを探している仕草を見てボスが「おろおろ人間は女性といる」と教えてくれた。

 実況中継の申し出もあったが首を横に振って断った。

 アルバートさん、気楽にやりなよ。





「――あの、ヤマチカと言います」



 説明しているモテちゃんとメリッサちゃんとの会話に加わる。

 もうヤマチカでいいや。後でサンリエルさんにささっと住民手続きでもしてもらおう。



「初めまして、メリッサです」

「あれ? どこかで……?」


「はい、シャイアさんとお話ししている時にお会いした事があります」



 エリーゼちゃんは少し思い出したみたいだ。



「シャイアと……あっ思い出した」



 笑顔が可愛いな。



「シャイアさんとえー……」

「スタンに協力してやってくれよ」



 見知らぬ青年その1はスタンという名前だったのか。



「今皆さんは女性人気が高まっている時期なのでそのお手伝いをと」


「え……? 人気……?」


「はい。この人気がずっと続くようにもっと似合う髪型や服装に変えたり」


「…………」


「元々素敵な人達ですからもっと人気が出ちゃうかもしれませんね」



 2人とも複雑そうだなー。

 大丈夫、ハッピーエンド請負人の御使いに任せて。

 あっ、今チカチカさんため息ついた!



「面白そうですね」

「君が手伝うの?」



 カセルさん、一族の皆さん、君達は参加しちゃダメなやつ。



「一族の人達は元々素敵過ぎますからダメです。素敵過ぎない素敵な人だけが参加できるんです」


「そうなんですか~、残念です」

「俺達は過ぎるか!」



 うわっ、笑った顔が眩しい。一族集団の華やかさ半端ない。

 族長さん達の時は平気だったのに……。これが若さなのか。


 軽く頭を下げながらもエリーゼちゃんの腕をつかみその場を離れる。

 目をやられてしまう。

 メリッサちゃんの他にも数人、女の子が一緒について来てくれて嬉しい。



 女の子達を引き連れて戻るとS青年とスタン君は明らかに挙動不審になった。

 わかりやすいな。



「あんた……女の子に人気が出て調子に乗ってるみたいね?」



 ちょ、メリッサちゃん落ち着いて。いきなりの先制攻撃はちょっと待って。

 これがケンカップルと言うやつなのだろうか。



「のっのってねーし!」



 スタン君も落ち着け。



「メリッサさん、ちなみになんですけど……好きな髪型とかありますか? とりあえずスタンさんに似合う髪型を探そうかと」



 メリッサちゃんの服を引っ張りスタンさんの前に立つ。



「まずメリッサさん、スタンさんの前髪を横に流してもらっていいですか? そうだ! エリーゼさんはシャイアさんの前髪を。――他にもどなたか手伝ってください」



 S青年とスタン君の他にも数人を並べてそれぞれ似たような髪型にする。そしてそれを何パターンか繰り返す。



「――なるほど。人によってこんなに違いが出るんだな」

「シャイアは後ろに流した方が男らしさが増すな」

「スタンは逆かな?」


「……なんだかあんたじゃないみたい」

「ほんと……いつものシャイアじゃない……」



 ふふふ、スキンシップ大作戦は成功みたいだ。名前はセンスないけど。

 これは王女様からヒントを得た作戦だ。


 初めは恥ずかしがっていたS青年とスタン君も今は彼女達が髪に触れるのに慣れてきている。

 距離が近い。それはもはや恋人の距離であり仕草だ。美容院というものがこちらに無ければだけど。


 しかも一緒について来てくれた女の子達も加わり集団全体が自然と楽しそうな雰囲気になっている。

 なんだか合コンを成功させた幹事の気分。

 お後は若い人達でどうぞ。



 お互いに異性の好みなどの情報をやり取りしている集団を見ながら、充実した気分でお酒をぐびぐび飲んでいるとチカチカさんが近付いてきた。



「満足した?」


「すごく!」


「オロオロが戻ってきたよ」



 『人間』という言葉を付けないチカチカさん。



「そっかあ。じゃあいつでも拠点予定地に行けるようにお土産だけ先に買っておきましょうか」



 住民にしてもらう為の賄賂も買ってこないとな。



 自分の教え子のような気持ちでみんなに挨拶をしお土産を買いに行く事に。

 別れ際にシャイアさんがお店に来てくれたらごちそうすると言ってくれたので、エリーゼちゃんがいる時間帯にお邪魔する事にした。

 エリーゼちゃんとメリッサちゃんとも友達になったし。自分判断だけど。











「2人がついてきてる」


「――え? カセルさんとアルバートさんですよね? ひとこと言っておいた方が良かったかな……」



 今は花束に半分埋もれているチカチカさんと一緒にお土産を物色しているところだ。



「まあいいか。さっと遊んだらすぐに後夜祭に戻れるし」





 その場に留まって待っているとカセルさんの赤い髪が見えた。本当に見つけやすい。



「――すみません、また後で呼びに行こうと思ってたんですけど」


「いえ、今はアルバートもあそこに居づらいでしょうから」


「……そうですか」



 アルバートさんの方にさっと笑顔を向けた後は極力見ないようにした。

 今日はその話題に触れないからね。一週間後はわからんが。



「おじいちゃん達とサンリエルさんにお土産を買って行きますので」


「領主様はそちらにいらっしゃいましたか」


「泥だらけでした」


「なんですかそれ~」



 あ、アルバートさんも少し笑った。

 少しでも楽しい気分になってくれるといいなあ。どこか暗い顔をしていたもんな。





 カセルさんにアドバイスをもらいお土産を買い、お互いに少し離れて拠点予定地に向かう。

 高台の人気が無くなった所まで来たので2人が追い付いてくるのを待つ。

 夜空が綺麗だなー。





「――チカさんはどちらに?」



 変装カセルさんとアルバートさんの2人と合流した途端質問された。



「帰りました」


「……そうですか」



 君達の親分が大変な事になるからさ。花束も持って帰ってもらったんだ。

「木の上に登ってはるが来るのを待ち構えてるよ」という不吉な言葉を残して消えたけどね。正確にはいるけど。

 そして今ボスから「こっちに来てる」という更に不吉な言葉を頂いているけどね。



「サンリエルさんが来ます」


「早いですね~!」



 ほんとに。

 泥だらけじゃない事を祈る。



 そして少しも進まないうちにこちらに向かって走って来る人物が。

 なにあれ早送りの映像? 実際の忍者っぷりは凄いな。



「――お待ちしておりました」



 到着ついでに部下をひと睨みしたのバレてますよ。



「はい、これお土産です。あと今日中にヤマチカをクダヤの住民にできますか?」

「お任せください」



 突然のお願いだけどさすがのサンリエルさん。でもお土産を捧げるように持つのはやめて欲しいな。

 服は綺麗になってるけど。



「サンリエルさん、おじいちゃん達はいつまで仕事をしていますか?」


「交代しながらですが、常に何人かは作業をしております。今は全員揃っているようですが」



 シフト制の24時間体制なのかー。お年寄りなのに。



「御使いの命令で祝祭最終日を楽しみなさいって言えばお休みしますかね?」



 休んで欲しいし、スライダーキャッチするのに人がいない方が助かる。



「ヤマ様の命に背く者はおりませんが……。拠点建設はあの者達の生きがいのようなものですから」


「……自らの意思で楽しく作業をしてるって事ですよねえ?」


「そうです」



 ご老人達の生きがいか……。



「ダクスに白フワ、遊ぶのは林の中で遊ぼうと思ってたんだけど……おじいちゃん達に姿バレしても平気?」


「キャン!」


「いたた、ちょっと落ち着いて」



 急にリュックの中が騒がしくなった。

 リュックが破れるから大人しくして。見えない所に着いたら出ていいから。




 林の中に入ったので暴れるこじんまり達をリュックから出す。

 こら! 白フワはアルバートさんの顔に突っ込まない!

 ロイヤルは私が抱っこするから!



「キャキャン!」



 勇まし気に先導してくれるダクス。拠点はそっちじゃない。

 でも尻尾とお尻の毛のフワ具合が恐ろしいほどのフワ。エアリーの最上級。



 うろうろする事になったが心のフワフワは充電できた。

 帰ったら撫でまわす。






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