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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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正しい能力の使い方

 



 惑星のさじ加減により、初のラッキースケベ体験をする事になった私。

 神の島在住 20代女性。



 そうだよね、本来倒れ込む前にチカチカさんの力で回避できたはずだもんね。

 それにしてもアルバートさんはどれだけ無害認定されてるんだ。



「…………! あ! す、すみません!!」



 ようやく動き出したアルバートさん。

 咄嗟に手をつこうとしたところが私の体だったのでさらにパニックになって私の体の上から転がり落ちた。


 大丈夫? 物凄い高速回転だったけど。



「すみません! すみません!」



 完全なるローリングからの土下座。すごいや。



「あの、大丈夫ですから」

「すみませ――――」



 お、ようやく目が合ったな。



「何ともないですから」



「よいせ」と掛け声と共に体を起こす。


 チカチカさんの手を借りて立たせてもらっている時にカセルさんがやってきた。



「お前なにやっ――――――大丈夫ですか?」



 さすがカセルさん、立ち直りが早い。小刻みに震えながら口を開いたままの彼とは違う。一瞬見た事ない顔をされたけども。

 でも生まれたての仔馬状態の御使いは見られたくなかったな。



「大丈夫です、ありがとうございます」



 何でもない風を装いながら立ち上がりカセルさんに向き直る。

 背中に密かに衝撃を感じるのはモフモフ達の臨戦態勢の表れだろうな……。リュックの中で何やってんだ。

 アルバートさんは悪くないよ。



「申し訳ありません!!」



 ……まだ終わっていなかった。

 周りが驚く程の真剣さで謝罪を再開してきた思春期の青年が残っている。



「大丈夫ですから」


「いえ! とんでもない事を……! 申し訳ありません……!」



 立場が変われば私も同じような謝罪をするんだろうけど……ここまで謝罪されると少し困ってしまう。

 というか君は本当に悪くない。



「あの本当に……」

「おいおい、困ってるだろ~」



 カセルさんのフォローがきた。



「どうした?」

「アルバート?」

「大丈夫か?」



 周りも参戦してきた。



「アルバートが女性を押し倒したみたいでさー」

「おい!!」


「なんだそれ!」

「大胆だな~!」



 多少なりともお酒を飲んでいるからだろう、場はあっという間に陽気な雰囲気に。

 みんな大笑いしている。



「大丈夫?」



 1人の女の子が話しかけてくれた。優しい。



「はい、平気です」


「服は……汚れていないみたい」


「ありがとうございます。よそ見をしていてご迷惑を……」


「あ、花が取れかかってるからちょっと動かないで」



 エリーゼちゃんまできた! 何これ、異世界補正かしら。



「髪の毛とっても可愛い。はい、できた」


「いえ、こちらこそありがとうございます」



 エリーゼちゃん良い子。この前会ったのは金粉効果で分からないのかな?



「アルバート、こういう時は贈り物だ」


「えっ?」


「お詫びの品でも買って来い。な? カセル」


「そうだな。お詫びの品を持って改めて謝罪しろよ」


「ある意味ついてるけどな~」


「花束なんかどうだ?」



 あのにやにやと悪そうな顔をしている人達は一族の人達みたいだな。



「ほら、今のうちに」



 どんと背中を押されてオロオロしながらも走り去っていくアルバートさん。

 みんなからお金を渡されていたのはばっちり見えている。

 何を買ってくるんだろうか……。



「改めて謝罪の場を設けさせてもらえませんか?」



 チカチカさんにも許可を求めてくるカセルさん。



「何ともないですし……」



 本当は避けられる出来事だったし。あれ? これって犯罪みたいじゃない?

 故意にぶつかっておいてのやつ。



「後悔でのたうち回るでしょうから、あいつの気が少しでも楽になるように良かったら力を貸してもらえませんか?」


「そうですね、力を貸しましょう」



 のたうち回る図がありありと想像できてしまう。



「お前ら聞き耳立てるなよ~」


「勝手に聞こえてくるんだからしょうがないよなあ」


「謝罪の場って、変なところに連れ込む気じゃないでしょうね」


「カセルとアルバートだぞ? 誰よりも安全だろ!」



 おお……。一族の人間はやっぱり華やかだ。それが集まるとオーラがとんでもない事になってるな。

 キラキラしい。眩しい。



「そうね……御使い様がお許しにならないわね」


「だろ~?」



 なんかここだけ海外のコメディドラマみたいだな。



「あの2人は変な奴らじゃないから」


「あ、はい。知り合いと言いますか……以前お話しした事がありますので」


「そうなの? なら安心ね」



 はい、ウインク頂きました。



「ほら、あっち行けよ」



 同年代仕様のカセルさんも良いな。



「少しこの場から離れてもいいですか?」


「はい」



 そっちの方がこちらの都合も良い。


 S青年また後でね。エリーゼちゃんも。

 出来れば2人の仲が進展する前に戻ってきたい。でもカセルさんがいない今がチャンスだぞ。


 そして王女様、あんなタイミングでこんな事になってごめん。












「申し訳ありませんでした」



 アルバートさんが走り去った方向に向かって歩いていると、カセルさんから話しかけられた。

 どうやらこの辺まで来ると風の一族でも声は聞こえないみたいだ。



「いえ。あの出来事なんですけど、避けられたのに故意に避けなかったと言いますか」


「故意に……?」



 そう言いながらもチカチカさんをそっと見るカセルさん。正解。

 するどいな。



「倒れ込んだように見えて実際は倒れていないとも言いますけど。なので平気なんです」


「そういうものですか~」


「そういうものなんです」



 理解が早くて助かる。



「初めまして、私“風”のカセルと申します」



 カセルさんがチカチカさんに挨拶をしてくれた。紹介を忘れてた。ごめんごめん。



「ちかさんです。えーと……私の大好きな人です。護ってくれています」


「……はい。よろしくお願いします」



 どうやら色々聞きたい事を飲み込んでくれたようだ。紹介がふわっとし過ぎだしね。

 まあ守役の1人とでも思ってくれるだろう。


 そのチカチカさんはカセルさんの方を一瞥しただけで挨拶をする気はないらしい。ツン部分を出してきたな。



「普段から誰に対してもこんな感じなので気にしないでくださいね」


「はい」



 ただのツンデレ過保護なんで。



「それにしてもなんだか頻繁に会う事になってしまってすみませんね~」


「こちらとしては嬉しいですから」



 本当にそう思ってくれているならこちらの気も楽になる。S青年の様子を見に来ただけなのにこんな事になるとは。

 さっきから視線がちらちらとリュックに向けられているから本音だろうけど。



「ちかさん、今は便利能力発動してます?」


「してる」



 よし。



「カセルさん、今は何を話しても平気です。あと、今の守役達は戦前の戦士のような状態ですので顔を見ない方が良いと思います」


「戦士ですか~」



 嬉しそうなのはなんで? 戦士だよ? 荒ぶってるんですけど。



「アルバートさんに会った時が心配なんです」


「アルバート? ああ! あいつ思いっきり倒れ込んでましたから」


「ヴー」


「ダクスは静かにね」



 完全に威嚇する気だ。



「そもそも私がアルバートさんと王女様のやり取りをこっそり見ていたのが悪いんですよ。ついつい気になってしまって……」


「はは! 私も会話はばっちり聞いていましたから」


「……なるほど」



 やっぱり聞いてたのか。



「でもヤマ……チカさんのお姿はあの出来事が起こるまで気が付きませんでした」


「そうなんですか~」



 カセルさんに返事を返しながらもチカチカさんを見上げると、こっちをちらりと見てきたのできっと惑星の能力の効果なんだろう。

 過保護さんめ。


 とりあえず話を変えておこう。



「アルバートさんは何を買いに行ったか予想できます?」


「おそらく馬鹿正直に花束とお菓子あたりじゃないですかね~」



 馬鹿正直……。



「急いでいるからそこまで大量に買ってはこれないと思いますが――いましたね」


「どこですか?」


「呼んできます」



 カセルさんの向かった方向を見ていると、少ししてから花束を抱えた人がせかせかとこちらに向かってくるのが見えてきた。

 ああ……あれは確かに目立つ。


 少し道の端に寄りアルバートさんが到着するのを待つ。

 カセルさんが花束を手伝って持つという事がないのがなんとも。



「あ、あの……申し訳ありませんでした……!」



 震えながら花束を渡された事がこれまであっただろうか。いや、ない。

 しかも緊張からの震えではなく恐怖の震えの方。



「お!? どうした喧嘩か?」

「しっ! 邪魔しないでよ!」

「良かったら許しておやり」



 良い見世物になってしまっている。どうやら惑星の便利能力は今は発動していないみたいだ。

 みんなは緊張の震えだと思ってるんだろうな……。



「もう気にしないでくださいね」


「お!」

「良かったな~!」

「優しい子で良かったじゃないの」



 気付けば大団円ムード。知らないうちにエンディングを迎えていた。



「花束ありがとうございます、嬉しいです」



 泣きそうな顔をしているアルバートさん。

 そんなアルバートさんを良かった良かったと祝福している街の皆さん。



 でも皆さん、彼はこれから威圧×3が待っているんです。ほぼ100%の確立で。何も悪くないのに。

 でもそれを柔らかめに変換できるか頑張ってみます。いちおう。






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