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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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自分が思っているほど人はこちらを気にしてはいない

 




 キイロだけ肩に乗せてベッドルームに戻ってきた。


 扉を押し開けて中を覗いてみると、奥に足元まである大きな窓? 戸? が目に入った。



「ガラスってあるんだね」



 ぼんやりと呟きながら脱いだブーツを手に窓に近づき開ける。今回も押して開けるタイプだった。


 両開きの窓の外には大きめのバルコニーが。こういうのはもうテラスって言うんだっけ?


 再度ブーツを履き外に出てみると、テラスはベッドルームと同じくらいの大きさがあった。手すりもちゃんと用意されており安全だ。

 見晴らしに関しては、巨木の周りにある木々もそれなりに高いので遠くを見通せるわけではないが開放感はある。


 これだけの広さがあると洗濯物を干したりしつつもテーブルセットを置いてのんびりできそう。

 優雅にお茶を楽しむ習慣はないけどね。 せっかく日常と離れた環境にいるのだ、いつもと違うこともやってみたい。



 上を見上げると巨木の幹から枝が新たに伸び、青々と茂った葉をつけているので木陰も確保できている。

 オサレ。

 優雅なひと時の為にも、家の為にも、早くテーブルセットを作ろうと決意した。



 レベルアップリクエストで何とかなりそうだが自分でも作ってみたい。こういうのを創作意欲に火がついたと言うんだろうな。作り方なんて知らないから手探りで1からと言うのも中々楽しそうだ。

 でも一応保険はかけておく。



「チカチカさん、テラス広いしとても素敵です! ありがとうございます。次回のレベルアップもリクエストして大丈夫ですか?」



 室内に向かって話しかける。



 チカチカッ



「ありがとうございます。テラスにテーブルセットを設置したいんですが作成可能ですか?」



 チカチカッ



「あ! 先に1階の外から直接テラスにみんなが上がって来られるように出来ますか? この島に危険は無いようなので、外からの侵入対策は考えなくていいと思いますので」



 チカチカッ



 良かった。これでみんなと気兼ねなくテラスで過ごす事ができる。



 ふと空の様子を見るともうすぐ夕方になってしまいそうだった。明るいうちに出来ることは済ませておかないと。


 キイロを撫でながら下に降りる。

 もう少しだけ健康水を飲んで、オレンジ色の果実を3つとキャベツときゅうりをカゴに入れる。

 よし木の滝に向けて出発だ。



 外に出ようとしたところで大事な事を思い出した。お風呂だ。

 今のところ滝に打たれて体を綺麗にする案は思いついている。エセ修行。しかし、クローゼットの中にはタオル類は入っていない。どうしようかと考えたところで思い出した。



「あ! 枕代わりにしてるバスタオルがあった!」



 だだだだっと2階に上がりベッドルームからバスタオルをとってくる。

 枕代わりにしていた私のファインプレイだ。


 じゃあ着替えも……、と予備の服も持って行くことにする。カゴは2つになったが、ひとつをマッチャが持ってくれるのでエンに乗りながらでも残りを片手で押さえて運べそうだ。

 虹色ナイフはもうキイロのくちばしでスタンバイ。

 ナイフを入れるケース欲しいなー。腰から下げるタイプの職人バッグってカッコいいよね。



「木の滝まで行ってきます」



 どやどやとみんなを引き連れて家を出る。チカチカさんは柔らかく光って送り出してくれた。











 エンに乗っていたのですぐに目的地についた。この湿潤な空気と一面の緑がとても癒される。

 マイナスイオン出しまくり。



 水辺に腰をおろし、まずは草原エリアで手に入れた野菜の味見をする事に。

 まずはピーマンの形をしたきゅうりを池で洗い、手で半分に割ってみる。



「中身もきゅうり……」



 ひと口かじってみる。



「味もきゅうり……」



 ぼりぼり食べる。あー、もろみ味噌が欲しい。マヨネーズでもドレッシングでもいい。

 やっぱりいりこ入りのもろみ味噌がいい。あーシンプルな味だ。

 でも形もきゅうりで良かったのに個性出ちゃったね。


 みんなは少しは食べるけど好物とまでは行かないようだ。甘い方が好きなのかな。いや、ナナは地味に食べてるな。それもそうか、ナナの管理エリアの食べ物だしね。



 次はキャベツだ。小さいが1枚ずつ葉を剥がして水にさらして食べる。


 うん、キャベツ!


 塩キャベツで食べたい。玉ねぎサイズなのでリンゴのようにかじりつく。

 う~ん調味料のありがたさが身に沁みる……。そして焼き鳥食べたい。焼肉でも可。

 塩キャベツの味の思い出よ去れ! それに付随したメニューが思い出されて辛い。



 切なくなりそうなので味見は終了した。果実容器でも作ろう。3つすべて水入れ容器にしようか。



 スパッと上の方だけ切って中をくり抜いていく。

 もうお腹がいっぱいなので食べる担当はみんなに任せる。あ、種はひとまとめによろしく。

 水で洗い綺麗にすすいだ後、水を入れてきちんと置けるか確認する。ぐらぐらしないので中身がこぼれる心配はなさそうだ。


 一気に3つ作り上げ、水は帰る時に入れる事にした。帰りは歩きだな。



 さて、じゃあお風呂にしますか。

 池の水はもちろん冷たいが入れないこともない。入る前に周辺から枯れ枝や燃えそうな物を集めておく。



「エン、これに火をつけてもらっていい?」



 上がった時にこれで温まってぬくぬくして帰ろう。水場も近いから火が燃え移る危険もないし。



「クー」



 エンはトコトコ近付いてきてすうっと息を吸ったかのような動作をした後、口から火を吐き出した。



(え!? 口から?)



 予想外の発動の仕方だ。

 あっという間に火がついて燃え盛っているたき火を見ながら思った。



 服を脱ごうとしてチラ、とみんなを見てみる。私が何をするのか気になるようでみんなジッとこちらを見ている。

 ……ちょっと恥ずかしいな。



「池で、水浴びがてらお風呂にしようと思って」



 そう説明しながら勇気を出して服をばっと脱ぐ。みんなも裸みたいなものだしね! 平気平気!


 頭から服をすぽんと引き抜き、周りを見るとみんながいない。

 あれ、どこいった? と探すと池の中に入って遊んでいた。




 ……おい。私の恥じらいを返せ。


 マッチャはぷかぷか浮いているし、キイロまでイルカのように高速で泳ぎ回っていた。羽、大丈夫なのかな?


 野外でマッパさんはさすがにハードルが高いので元々着ていた下着のまま池に入る。水着に見えなくもない。


 ちゃぷんと片足からゆっくりとつけて池の中に進んで行く。

 すると、ナナがすい~と寄ってきた。泳ぐのに適しているとは言えない体なのにすいすいと泳いでいる。



「ナナ泳ぐのうまいね」



 甲羅を撫でながら話しかけると、「甲羅に乗って」という意思が伝わってきた。



「え、大丈夫? 沈まない?」



 大丈夫らしいのでどうにか甲羅に乗る。

 キイロアシストはもちろん発動した。



「わーーーーーー!!」



 私が乗ったことを確認したナナがスピードを出して泳ぎだした!

 何これ楽しい!



「ナナ! 次、ギュインって曲がってみて!」



 ドリフトだ!

 ナナは希望通りギュインと曲がってくれた。楽しすぎる。

 ナナは私の遊びに付き合いながらも水が流れ落ちている場所まで連れてきてくれた。



「ありがとー」



 お礼を言って水中の根の上に立ち、水が流れ落ちている所に頭を持っていってわしゃわしゃと洗う。


 シャンプー欲しい。しょうがないので頭皮をマッサージするようにしっかりと揉み洗う。



 しっかり洗い終わった所でナナにたき火の所まで戻ってもらった。果実容器を持ってくるためだ。


 3つの容器を持って再度池に入ろうとすると、エンがこちらを見ていた。相変わらず優しい目をしている。

 どうやら今度はエンが乗せてくれるらしい。……マジで至れり尽くせりだよね。



 一旦すべての容器をマッチャに持ってもらいエンに乗り込む。

 が、容器を受け取ろうとマッチャを見ると背泳ぎの状態でお腹に容器を乗せて滝の方まで泳いでいた。

 さすがのバランス感覚。



 流れ落ちる水を容器に入れ、1つは私が持ち、残りはマッチャに任せる。


 たき火まで戻ると地面に容器を置いてバスタオルで体を拭き、女子が得意とされるモゾモゾ着替えで新しい服を着る。体育とか水泳の授業で発動するあれだ。



 そしてたき火の前で髪を乾かしながらのんびりとする。火が暖かい。幸せ。



 髪がある程度乾いたころにはもう日が暮れそうになっていたので、家に戻ることに。


 歩いて帰るかと思ったが、マッチャが2つ容器を持ってくれたのでなんとかエン乗って帰ってこれた。

 空いたカゴはエンの角にかぶせ、濡れた下着とバスタオルはナナの甲羅に貼り付けるように置いた。

 申し訳ない、とは思っている。



 家に着き果実容器を中に運ぶのを手伝ってもらった後、みんなとはここで別れることにした。



「今日はたくさん助けてもらってありがとう。また明日! あ! ナナにはひとまず、水瓶とお鍋みたいなもの、お皿2枚とスプーン2本にコップ2個、あと斧みたいなものを作れたらお願いしていい?」



 虹色製作のお願いも忘れずにしておく。お箸はまた今度。

 大量注文もナナは快く引き受けてくれた。楽しみだ。

 みんなと握手をして今日は解散。それぞれの役割に戻るようだ。





 みんなが部屋から出て行った後クローゼットの中の服を寄せてスペースをつくり、濡れている下着とバスタオルをハンガーにかけた。

 早くテラスに干せるようにしたい。扉を開けていればそのうち乾くだろう。



 ブーツをサンダルに履き替え、水の入った容器を1つ持ちベッドルームに向かう。

 今日はいろいろと濃い1日だったので早めに寝ることにする。……寝てばっかりだな。



「チカチカさん今日は――――――」



 チカチカさんに今日あったあれこれを報告しながらそのまま眠りについた。


 おやすみなさい。






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