表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/216

理由は何でもいい

 



 ランチの準備ができるまで、代々伝わる名画をこの世に生み出すお手伝いをしようと思う。




「カセルさん、アルバートさん――」


「はい」

「は、はい!」



 サンリエルさんは呼んでませんぜ。さりげなく近寄って来たけど。



「絵を描いてもらえるんですか?」


「頂いた証の横に飾られると思います」


「その白い服を着てご家族の所に戻ってもらってもいいですか? 食事の用意ができたら戻ってきてください。それはサンリエルさんが伝えてくださいね」



 サンリエルさんにも仕事をふっておけばいいだろう。うん、満足そうだ。



「何か理由があるんですか?」


「内緒です」


「内緒ですか~」



 不思議そうにしながらもカセルさんはグラデーション衣装を脱いで白いひらひらを着込んでいる。

 イシュリエさんとリレマシフさんが「女性の前で」って怒ってるけど。

 アルバートさんは焦れば焦るほど服が絡まってるから落ち着け。ただでさえヒラついてるんだから。



「それでは」



 爽やかな笑顔でカセルさんはアルバートさんの背中を押しながらご家族の所に向かった。

 ひらひらしてるなー。



「サンリエルさんお茶を下さい」



 お嬢様御使いに戻り、お茶を飲みながら守役強襲のタイミングを窺う。



「そうだ、ロイヤルはどうやってあそこまで行く? キイロに連れて行ってもらう?」



 出来ればかっこいい登場をしてもらいたい。カッコ可愛いって最高だと思う。



「――なるほど、そういう方法もあるね」



 ボスから提案されたのは、尻尾をカセルさん達の方まで伸ばしその上をロイヤルが歩くという方法だった。

 ほんとハイスペック。


 でも歩き方はやっぱりペンギンに近いんだよね……可愛さでみんな気絶したらどうしよう……。



「移動させるけど」


「……あー、じゃあ行きはボスロードで帰りは神の御業でいきますか」



 こんな事に惑星の力を使わせてしまっていいんだろうか。今更だけど。



「いたた、ダクスはまた今度ね。夜にまた遊びに来るから」



 優しく噛んでアピールされた。反対の手の甲がぴちゃりと濡れたのはエンの鼻だろうな。

 大きい組はずっと大人しくしてるから暇だよね。ご飯食べたら戻るからね。



「お、そろそろいいかな。じゃあ守役降臨いってらっしゃい。つついたりは無しだよ~」



 歴史的名画の誕生だ!



「え? ちょっとロイヤルそのポーズなに――」



 絨毯の端まで歩いて行きいきなり腹ばいになるロイヤル。

 そして――



「キュッ!」


(えー!?)



 物凄いスピードでカセ&アルに向かって滑っていった。



「ちょ、あれ、あの……? ……なんで滑ってんの?」



 私は今物凄く混乱している。



「ウォータースライダー」


「ウォータースライダー……」



 そういう事じゃ……。



 弾丸のように滑っていったロイヤルはびたんとアルバートさんの背中に張り付いた。

 ちょうどカセルさんがこちらを向いており、アルバートさんが前に倒れるのを防いでくれたようだ。

 飛んで行ったキイロがカセルさんの頭に乗っているのがなんとなくシュールだわ。


 そしてここまで聞こえてくる歓声。



「――おお? 目が……」



 急に遠くの光景まではっきり見えるようになった。



「笠の調整機能をアップさせた」


「ハイスペック怖っ。視力までいじれるんですか~。とういうか<エスクベル>に来た時に眼鏡無しでも見えるようになったんだった」



 惑星の力改めてすごいわ。



「皆さん大喜びしてますね」



 突如現れた守役を近くで見ようとつめかけている住民を、自然と従えているローザおばあちゃんの顔も良く見える。

 SランクじゃなくてSSランクだったかしら。



「画家さんは描いてるかな~? どの人だろ……あれ? あの人どっかで……?」



 笑顔のレオンさんにすっごく体を揺すられている涙目の男性はどこかで見たような気がする。

 そしてあの人が画家っぽい。

 あんなに揺すられたんじゃ描けないと思う。あ、お父さんが止めに入った。



「ヤマ様、準備が整いました」


「あ、はい。ありがとうございます。じゃあお2人を呼びに行ってもらってもいいですか?」


「かしこまりました」

「じゃあ俺も……」

「私も!」

「私も行きましょうか?」



 ティランさんまでもがアピールしてきた。キイロだもんね。



「守役はすぐに戻って――来ましたね」



 言ったそばからキイロが絨毯の上に現れた。……ロイヤルはどこだ?


 ロイヤルの姿が見当たらなかったので視線を戻すと、アルバートさんの肩とギルバートおじいちゃんの肩を行き来している青い物体が目に入った。



「んん? あれ? 見間違い……じゃないや。何をやってんだ……」



 2人の肩に交互にジャンプしている青い生物は守役様でした。

 なんでその行為をしようと思ったのか聞かせて欲しい。そのジャンプ力もなんなの?



「チカチカさん、ロイヤルは何やってるんですかね……」



 親ならわかるはずだ。



「似てるから」


「似てる? 似てるからああなってるんですか?」


「そう」


「…………」



 そりゃあおじいちゃんの孫で面影はあるけどさあ、それでなんで空中反復横飛び……。



「……ご飯食べるんで集合で」



 そうお願いするとロイヤルが膝の上に現れた。



「キャン」


「わかったわかった。よいせ」



 ロイヤルを持ち上げてダクスの上からおろす。

 問題児ロイヤルは羽を膝の上で揺らしていたからダクスを撫でていたんだと思う。

 その優しさをアルバートさんにも発揮して。



「ロイヤルさんお帰り。つつきはしなかったけど体当たりは余計だったと思います」


「キュッ」


「悪い顔!」



 悪い顔のロイヤルは、頭の毛を流れとは反対方向にごしごししてぼさぼさにしておいた。まったく。


 カセルさんとアルバートさんの2人もサンリエルさんの合図でこっちに走ってきている。

 ひらひらが絡まらないか心配。





「御使い様、守役様、ありがとうございます!」


「良い絵が出来上がりそうですか?」


「はい!」


「良かったです。それでは食事にしましょうか」



 カセルさん嬉しそうだな~。アルバートさんは息切れしてるから後で話しかけよう。



「カセル、私も絵を頼んでいいだろうか」


「もちろん!」



 やだティランさん可愛い。



「ティランさん、画家の方をここに呼んで描いてもらいますか?」



 これは後世の歴史に一役買ってるんじゃなかろうか。ふふふ。



「御使い様にお許しを頂けるのであればぜひお願い致します」


「構いませんよ。皆さんも」


「ありがとうございます……! 御使い様はお食事をなさってください。それでは失礼致します」



 まさしく風のように去って行ったティランさん。良かったね。

 残りのお偉いさん達も嬉しそうにしているし。



「冷めるといけませんのでさっそく頂きますね」



 カセルさんとアルバートさんに同じテーブルに着いてもらい空中ランチを開始。

 空中といってもそこまで上空でもないので初めは緊張していたアルバートさんも楽しそうにしている。

 サンリエルさんはまた今度な。




 ティランさん、リレマシフさん、イシュリエさんが持ってきてくれたものはデザート系だったので後にして、まずは具だくさんスープを飲む。味見はよろしく。




「美味しいですね」


「良かったです」



 こちらを見ないように気をつけているサムさんにそう伝えると、にこにこしながらガツガツとガルさんの持って来たお肉を食べ始めた。超あるから超食べて。

 スープはコンソメ系で美味しい。


 ネコ科がこちらを気にしているようなので次は丸焼肉と串焼きを食べる。

 いかん、食べる前からよだれが。


 イシュリエさんの配慮なのか、串焼きは串から外されフォークで食べやすいようお皿に盛りつけられていた。ありがたい。


 御使いがひと通り食べないとみんなが安心して食べられないのでそれぞれ食レポを行う。

 その後ようやくみんなも満足そうに食べ始めた。ティランさんはいないけど。

 安心してもりもり食べてください。






「美味しいですね~」

「お前少しは遠慮しろよ……」



 ガルさんの用意してくれたお肉はスパイシーなタレ、バルトザッカーさんの串焼きは塩とタレがあった。


 結論、お肉は最強である。

 カセルさんもがっついている。正しい食べ方だ。


 誰か焼き肉のタレ作ってくれないかなー。サンリエルさんとかいけそうかなー。今度頼んでみよう。説明が難しいけど。



 ティランさんはシュークリームのようなもの。

 リレマシフさんは見た目ブドウ味ライチな果物。

 イシュリエさんは杏仁豆腐にのっている赤い実のようなものをはちみつにつけているようなもの。


 正体がわからないので『ようなもの』がつくがどれもとても美味しい。

 肌に良いとか女性はすぐ釣られるからね。






「御使い様、お食事中申し訳ありません――」



 戻ってきたティランさんの後ろにはあの涙目の彼がいる。



「一族の者ですのでご安心ください」


「ほら、深呼吸しろ」



 こっちは平気なんですけどそっちの彼が……。ガタガタ震えてますけど。



「技の一族と理の一族は絵が描ける者が多いんですよ~。理の一族は何をやらせても上手くこなしますけど」



 なるほど。彼は技の一族みたいだな。だからサムさんが話しかけたのか。



「何名かいましたが御使い様が食事中ですので1人だけにしました。先程守役様を近くで目にしていますし」



 気遣いありがとう。

 話し合いの参加者は食事中は気を遣って見ないようにしてくれているが、クラッシャーララウルクはしゃべらない代わりに物凄く見てくる。しゃべったら本気で追い出されそうだもんね。



「1人で大丈夫ですか?」



 震えてるし。



「はい……!」



 アルバートさんとは路線の違う人だな。ガタガタ人間とでも言うのか。



「ヤマ様、彼は守役様を描いた事がありますから」


「絵を?」


「以前遠見の装置で」


「……そうでしたね」



 そうだったそうだった。序盤でばっちり見られてたんだった。



「記憶力も大変優れており、一度見たものは完璧に再現できますので1人でも大丈夫かと」



 はあ~本当にそんな人っているんだね。すごいね。



「嫌がってたけど」



 突チカきた。



「……絵を描く事ですか?」


「大役すぎるって」


「まあそうなりますよね~」


「おろおろ人間の家族と耳長に説得されてた」



 耳長て。

 わかるけど。自分とこの人類ですけどそれでいいのか。







 その後は涙目の彼には悪いが、頑張ってもらう事にして食事に集中した。すまん。

 だってお肉が美味しいんだわ。お肉とデザートを交互に食べる喜びがとてつもないんだわ。





 もりもり食べて何をしに来たんだがわからない時間が終わり島に帰る際、バルトザッカーさんに絵を売ってもいいかと尋ねられた。しかも物凄く申し訳なさそうに。


 なんでも商人達は密かに商売の機会を狙っているらしい。

 そういやバルトザッカーさんは一族以外の住民代表だった。商人からの要望があったんだろうな。



「適正な価格で、なおかつ実際に目にした人が描いた物であれば」と許可を出した途端にララウルクさんがこちらを見ながらスケッチをとり始めたのでうわっと思った。



 周りのみんなも同じ顔をしていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ