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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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キャラ設定盛り込み過ぎ疑惑

 





「申し訳ありません!!」



 ただ今土下座状態のアルバートさん。

 背中にダクスとロイヤルが乗っている。おい、当たり前のように乗るんじゃない。



「いえ、今のは私が悪いですね。こちらこそ申し訳ありません。誰だって急に触られたら嫌ですから。――ダクス、ロイヤル降りようか。白フワは隙を見てサンリエルさんに金粉を振りかけて」


「私はヤマ様に急に触れられても構いません」

「いいな~お前は。守役様に背中に乗っていただけるなんて」



 え、なに気持ちわ……。カセルさんの声で少しかき消されたけど……。聞かなかった事にしよう、うん。



「話があって来たので拠点建設予定地まで移動しましょう」



 スルースキルよ、力を発揮する時だ。


 マッチャが背中のこじんまりを回収し、カセルさんがアルバートさんを立たせてくれる。

 ここまで慌ただしかったな……。





「領主様、差し出がましいのは承知で申し上げます。御使い様のお手に触れられて嫌がる人間はいないでしょうが……女性に対して今の言い方は領主様らしくないかと」

「偽りのない気持ちだが」

「羨ましいお気持ちは分かりますが……」



 後ろの2人は聞こえないように話してるんだろうけどね、ボスによる同時通訳状態だからね。

 カセルさんは会話が筒抜けなの知ってるよね? 彼なりのフォローなんだろうか。できる男だ。

 サンリエルさんストッパーとしての活躍に今後期待したい。







「――3人お揃いですが目立つんじゃないですか?」



 カセル忠告が終わったので、サンリエル・アイを避ける為カセルさんとアルバートさんの間に入り込んで話しかける。

 島のみんなもぐいぐい入り込んできたので2人は左右に押し出されていたが。すまん。



「この2人とは離れてここまで来ましたのでご安心ください」


「領主様と私は髪も隠しましたし」


 そう言ってカセルさんはフードを持ち上げた。

 確かにサンリエルさんとカセルさんはいつもと感じが違う。



「拠点建設に関わる方がこの先で通行人を観察していたようですが大丈夫ですか? 岩の警護みたいですけど」


「私は顔を隠していたのでご安心ください」



 サンリエルさんが懐からそっと黒の眼帯を取り出した。でた。それ隠せてるか……?

 さすがに顔見知りにはバレそうなんですけど。私もすぐ分かったし。ミュリナさんの出産の時はバレてなかったけど。

 自分の容姿に誇りを持っている一族はどこにいった。変装しまくりじゃないか。



「アルバートはこのあたりに住んでいるので問題ないですし、後をつけてくる気配もありません」


「そうなんですね」



 思ったより緩めの警護なのかもしれない。



「建設に携わる者達には…………世界を無に還すほどの力を持った岩である事を伝えておりませんので……。ただ何があっても触れる事の無いようにとだけ。ですのでそこまで厳しくは警護していないかと」



 そのワードを心の底から取り消したい。そして話を変えたい。



「申し訳ないんですが、岩の為に用意されていた柵を壊してしまいました」


「また作り直しますので」



 それにしてもサンリエルさんは物凄い身を乗り出してこっちを見てるな。カセルさんが歩きにくそう。



「作り直さなくても大丈夫です。扉はつけてもらえると嬉しいですが」


「扉ですか?」


「そうです。サンリエルさんが新しく拠点を建設しなくてもすむ案があるんです」



 にこりとサンリエルさんに向けて伝える。

 そのサンリエルさんは何とも言えない表情で黙ってしまった。盛り上がってたところ悪いね。



「詳しい話は岩の所で」






 こじんまりが悪さをしないように両手で抱えて岩に到着。白フワはちょっとくすぐったい程度なので何も言わずにおいたらアルバートさんの肩で落ち着いていた。

 今日もアルバートさん困ってるなあ。



「まあ柵は今こんな感じでして」



 木の枝カーテンをがさりと動かして柵の現状を見てもらう。



「随分綺麗に壊しましたね~」



 にこやかなカセルさんに恐る恐る中を覗き込んでいるアルバートさん。そしてこちらを見ているサンリエルさん。岩はあっちだぞ。



「この拠点が怪しまれているという事なので、ここを使用する人物を皆さんに伝えて安心してもらおうと」


「……ヤマ様の事をお伝えするという事でしょうか」


「ヤマ・ブランケットではなくヤマチカの方ですね」



 そう言って首から下げている身分証をサンリエルさんに見せる。



「ヤマチカの隠された素性を考えてきたんですけど……聞きます?」



 次にニヤリと笑ってカセルさんを見ると、ニヤリと返してくれた。



「面白そうですね~」

「ぜひお聞かせください」



 身を乗り出してくるサンリエルさん。いかん、椅子がないから距離が近い。島のみんなの威嚇もあまり効果が無い。

 なので「まあまあ立ち話もなんですから」と破壊した柵の板に椅子代わりに座る。ワイルド密談。



 私と3人の間にはエンとナナが寝そべっていて、膝にはダクスで後ろにはマッチャ。完璧な布陣だ。

 キイロとロイヤルは威嚇の為に前線に出ているが、カセルさんが嬉しそうにしているのでまあいいか。

 白フワは……寝てないよね? たまにずり落ちてハッとした感じで肩にとまり直してるけど。そこまで野生をないがしろにしてないよね?




「岩はそこまで気にせずに。故意に、でなければ平気ですので。守役もですが」



 とりあえずびくびくと白フワと岩を窺っているアルバートさんを安心させておく。



「は、はい!」



 やっとしゃべったな。



「では。私の考えたクダヤの領主が気を遣う相手、ヤマチカの生い立ちから――」



 一族の生き残り……最後の力の継承者……特別な力……ふふふ、かっこいい。















「――ヤマ様から『ヤマチカ』という一族の力を継いでいる少女を保護するよう命を受けたという事ですね。私が、直々に」


「そんなところです」



 直々、を強調し過ぎだけど。あと少女でもない。



「なので岩に扉ですか~。クダヤ以外の土地でも力が薄まる事のない人間がいるとなると……そりゃあ重要な秘密にもなりますね」


「そうです。設定としては岩で力の暴走を食い止める感じですね。神の島に近いですから密かに眠っている力が騒ぎ出すわけですよ」



 どうしよう楽しい。



「すごいです……!」



 アルバートさんも私と同じ素養を持ってるのかな? それとも純粋なだけかしら。



「このような裏事情を建設に携わる方達に伝えてもらえれば、私の姿を見かけてもそっとしておいてくれるでしょう。ですのでサンリエルさんが拠点を近くに用意してごまかす必要もありません」


「我々と同じ一族の人間でもありますしね」


「生き残っていた一族は今までひっそりとはるか遠くの――――」








「ヤマ様?」


「――いえ、なんでもありません」



 いや、なんでもありすぎる。とんでもないタイミングで思い出してしまった。



 <地球>さんの降臨の直前、このメンバーとの食事の席で秘境巡りの話をボスとしていた時だ。

 ボスは「行かなくても来る」と言っていた。


 え? これ忘れちゃまずい奴なんじゃない? よく今まで忘れられてたな。ほんと記憶力良くなりたい。

 そもそもあれはどういう事だったんだろう。



「ボス、前さあ、秘境巡りの話で向こうから来るみたいな話してたよね? よくわからないんだけど後で教えてね」



 忘れないうちにボスに頼んでおく。すると――



「おっ……」

「ひっ……!」



 突然エネルギーが集まったサインが。しかもいつもと違いチカチカと2回点滅するように白く光った。


 光りがおさまると驚いたようにこちらを見ている3人が目に入った。



「……神のお言葉ですね。少し話をしますのでお待ちください」



 その言葉に納得する3人。光るキャラとして定着してほしくないんだけどな……。



「チカチカさん、今の2回はなんですか?」


「はい、って事」


「……今ですか?」


「ちょうどたまってたし」


「はあ……。ありがとうございます、後でごろごろしながら聞いてもいいですか? 重要な感じですか?」


「そうでもない」


「じゃあ後でお願いします」


「いいよ」



 そういやチカチカさんは御使い設定が気に入ってたような……。盛り上げたのか?





「失礼しました」


「いえ。……何かございましたか」



 ただの神演出だとは言えない空気。



「……皆さんの負担にならないように拠点建設をという事でした」


「ありがたいお言葉を……!」



 3人とも感激してるけど……チカチカさんそんな事言わなさそうなんだよね。ごめん、思いっきり嘘ついた。



「そうそう、私ここに畑を作ろうと思うんですけど、アルバートさんのお家は井戸でしたよね?」


「は、はい!」



 だから急にごめんて。



「水やりがあるので水は必要なんですが、ここに井戸は難しいですか?」


「出来なくはありませんが時間はかかります。ここより下に離れると、アルバート達が使用している水源が近くにありますので比較的簡単にご用意できますが……」



 今にも「だから私も拠点を」と言いそうだな。



「クダヤは元が湿地でしたので先祖達は水関連の事に力を注いできました。その技術が現在も残っておりますのでクダヤほど生活するにあたり綺麗な街は無いんじゃないですかね~」



 お、カセルさんの話逸らし良いね。素敵。



「優れた技術を持っているんですね~。ちなみになんですが……、私がここに穴を掘って水が出たら使いやすくしてもらえますか? 汲み上げ装置とか」



 どうやって井戸を造るかなんて知らないけど穴を掘ればいいとは思っている。



「もちろんです」



 よし。それならちょっと試してみよう。



「ねえ、みんなで井戸を掘ってみない?」


「ぴちゅ!」

「キャン!」

「キュッ!」



 おお~やる気だ。マッチャもその辺の石を粉々にしているし、エンとナナも前脚で勇ましくがりがりやってるし。



「じゃあ祝祭まで穴掘りでもしよ~」

「そこから5歩左に歩いてさらに右に10歩の所を掘るといいかもね」



 ……突然の神だわ~。



「……えーと、ありがとうございます。いちにいさん――」



 御使いの謎の行動に3人はきょとんとしている。

 正真正銘の神のお告げだから。怪しくないから。





「きゅう、じゅう。――ここを掘りますので資材等を置かない様にしてもらえると助かります」



 振り返ってそう伝えるとダクスがさっそくがりがりとやり始めた。

 ダックスって犬種は元々アナグマ狩りの犬だっけ? 果たしてこのダクスにその能力は備わっているのか……。



「祝祭まで人がいないようですのでこっそり掘ってみますね」


「手伝います。それにお食事はお持ち致しましょうか?」

「アルバートの祖母直伝のお菓子がありますよ~」



 みんな忙しいよね……? 

 ただ穴を掘るだけなんですけど。ローザおばあちゃんのお菓子は食べたいけど。



「フォーン」


「あ、うん。皆さん少し下がっててください」



 マッチャの謎の指示に従い後ろに下がり、穴を掘り(地面に攻撃)中のこじんまり達が大きい組にそれぞれ回収されているのを不思議に思い見つめる。


 そしてみんなが離れたところで物凄い勢いで掘られていく地面。



「おおお? ――もしかしてボス?」


「そう」


「……チカチカさんの指示ですか?」


「はるが井戸を掘りたいみたいだから」


「そうですね……」






 これって甘えて欲しいんだろうか? 瞬間移動とかばんばんお願いして良い系? こっちは全然かまいませんけど。

 なんにせよ惑星の性格はいまだによくわからない。









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