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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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起きた時の絶望感

 











「はる、そろそろ起きたら」








「…………おお? 重っ……」



 目を開くと、ダクスが首元でマフラーみたいになっていた。

 なんでそこに落ち着いた。



「……おはようございます」



 ダクスをそっと持ち上げて起き上がる。体中がギシギシする。



「ぴくりとも動かなかったね」


「そうなんですか……」



 どうりで。……あれ? チカチカさんはどこだ?



「チカチカさーん」


「なに」


「どこにいますか?」


「ああ……」



 すると突然足元から球状の光がにゅっと現れた。



「わっ」


「こっちの方がいい?」


「どちらでも大丈夫ですけど……昨日まで見えていたのでつい」



 目をこすりながらテラスに向かう。どちらでも大丈夫ですけど夜中にいきなり現れるのは本気でやめてくださいね。

 ロイヤルにばしゃりと水をかけてもらい、ナナの頭に乗っていた布で顔を拭く。





「…………夕方かな?」



 ひと息ついて改めて空の様子を確認すると、もうそろそろ陽が沈みそうな薄暗さ。

 どれだけ寝ていたんだ……。



「フォーン」


「おはよマッチャ。ありがと~」



 マッチャに差し出されたコップからは湯気が。

 そっと飲んでみると、熱過ぎずぬる過ぎずの適温。

 いつもの健康水ではないが、寝すぎた体にじんわりと染み込む美味しさ。



「マッチャママン」



 マッチャに抱き着く。心配りがとても嬉しい。もはやおかん。



「ぴちゅ」

「キャン」

「キュッ」


「みんなも」



 こじんまり達もじわじわと近付いてきたので1人ずつ毛をぼさぼさにして最後に抱き着く。

 エンとナナもぼさぼさした後に抱き着いた。というか背中に飛び乘った。ボスはウロコをカリッと。



「今日はもうごろごろしてようかな――あ! <地球>さん!!」



 思い出した。大事な事を忘れていた。



「チカチカさん! <地球>さんは!?」


「帰ったよ」


「いつですか!?」



 いつ帰った? そもそも私はいつ寝たんだ? 徹夜のつもりだったのに。



「はるが眠った後」


「ええー…………」



 別れの挨拶もしていない。なんて事だ。



「私寝ちゃってたんですね……。覚えてないですけど……」


「早い段階で寝てたね」


「ああ~…………」



 あほ! 私のあほ! 今まで生きてきた中で1番起きておくべき時に……!



「挨拶もしてないです……お世話になったのに……」


「あっちはしてたから大丈夫。拳をぶつけるやつ」


「…………え?」



 どういう事だ。



「えーと、これですか?」



 マッチャと拳をグッグッとやる。外国人風の挨拶だ。



「そうそれ」


「……どうやって?」



 私覚えてないですけど。



「はるの両腕を浮かせて」


(こわっ)



 寝ている間にそんな事をされていたのか……。そんな事する余裕があるなら揺さぶり起こしてほしかった。



「残念です……けどまた会えた時に改めてお礼をたくさん言います」


「……そうだね」



 騒がしいとも思っていた<地球>さんだが、いなくなると静かに感じられてなんとなく寂しい。

 また会えるのを楽しみにしておこう。



 今日は引き続き食っちゃ寝をする事に決めた。

 しかし、ボスから今日の分の貢物が届いているという報告を聞いて白フワの事を思い出した。


 <地球>さんがいる間に大森林まで瞬間移動で送ってもらえばよかった。ナチュラルに砂浜まで一緒に戻って来てタツフグの頭に収まったからそのままおやすみの挨拶をして別れてしまったのだ。

 白フワファミリーも心配しているだろう。



「ボス、砂浜に連れてもらっていい? 白フワの様子も確認したいし」



 もうすぐ暗くなるから大森林に連れて帰ろう。



「両方移動させるけど」


「……私の性格的にとことん甘えそうなんで止めておきます。物凄く困ったらお願いしてもいいですか?」


「そう言えばダイエットも2日と続かなかったね」



 おい。



「じゃあ物凄く困ったら言いなよ」


「お願いします……」



 ジムもすぐ行かなくなった事知られてるんだろうな……。



「じゃあ砂浜に行ってそのまま大森林に行ってきますね~」







 ユニコーンのコーンと白フワファミリー用にブレンドティーを用意して砂浜に到着。

 雑に鍋ごと持って来たけど大丈夫だろう。マッチャのバランス感覚に任せる。



「おはよ~。遅くなってごめんね」



 今日もタツフグのジャンピングはキレがあるな。



「白フワはいったんお家に――それどうしたの?」



 タツフグの頭に乗っていた白フワの毛が急に虹色になった。

 おそらくくるりと回転したのだろう。


 どうしたのとは聞いたがタツフグが関わっているのは確実だ。

 虹色白フワは自慢するかのように小刻みに動いている。



「タツフグに虹色インクつけてもらったの?」



 激しく上下に動く白フワとジャンピングタツフグ。



「全部虹色じゃない所が渋くて良いと思う」



 今度は上下左右に激しく動く白フワ。興奮しているみたいだ。


 それにしてもこの子はこんな目立つ外見になってしまって大丈夫なんだろうか。大森林の木の滝に遊びに行く時は判別がつきやすくて便利だろうけど。

 野生の中で目立つって大丈夫なのかな。



「ちょっと白フワこっち来て」



 ふわりと近付いてきた白フワの毛を近くでじっくりと観察する。まあ見事に虹色だ。



「海水平気? ちょっと毛を濡らすね」



 海水で虹色部分の毛を洗ってみる。落ちない。



「1人だけ目立っても平気かなあ?」



 上を向いてボスに質問する。ずっと寝ていたから体が痛い。

 ボスの返答によると金粉がこの辺もカバーできるみたいだ。ハイスペック金粉。



 貢物を確認し終わり、暗くなるまでタツフグと白フワと一緒に遊ぶ事にした。

 昨日の過密スケジュールの影響かなんとなく動きたくなかったので、座ってナナにもたれたまま見ていただけなので遊ぶとは少し違うかもしれない。


 タツフグはダクスなら近付いても平気なので、こじんまりした3人が楽しそうにしている光景は思いのほか心が和んだ。

 武闘派のこじんまり達はエンの背中できりっとしていた。あの顔……だめだ、思い出したら笑える。

 あのサーカス状態を動画に撮っておけば良かったと今さらながら悔やまれる。暇な時に見てニヤニヤしたい。



「そういえば<地球>さんにお祭りの動画をお願いされたけど……島でしか使えないって言ってたよね? チカチカさんに撮ってもらうって事かな?」



 島のみんなにだらしない体勢のまま質問する。ダンス練習の時は惑星の力で使えていたんだろうけど私は人間だ。



「使えるようにしておくよ」





「あれ……?」



 何か聞こえた。チカチカさんの声だけど……。


 きょろきょろするがチカチカさんは見えない。



「チカチカさんいますかー?」


「いるよ」



 声はするが姿が見えない。



「聞こえてました?」


「そうだね」


「……惑星だからですか?」


「そうだね」



 そっか。この世界そのものがチカチカさんなんだからどこにいても何をしていてもすべてチカチカさんはわかるよね。ようやく実感できた。



「情報が多すぎて頭がぱーんってなりませんか? 来る時にシェイクされた私みたいに」


「人間らしい質問だね」


「考えただけで大変そうですし」


「はるも肉体の期限がきた時にわかるよ」



 いきなりなんだ。



「……死ねばわかるって事ですか?」


「人間的に言えばそう」



 惑星の話はやっぱりよくわからんな。

 昨日も、レベルアップする事によりチカチカさんと話せるようになった仕組みを何気なく聞いたが全く分からなかったし。

 はるを構成しているエネルギーが地球向けのなんとかくらいまでは聞いていたが、後はわからずひたすらむしゃむしゃしていた。

 今思えば難しい話を聞いていたから寝てしまったんだと思う。絶対そうだ。













「――じゃあいってきます」



「いってきます」というのもチカチカさんに対しては正しいのかどうかわからないが、返事を返してくれたのでまあいいか。


 暗くなるまでマッチャに手伝ってもらいストレッチをしていたので体はもう普段通りだ。

 チカチカさんの的確過ぎるアドバイスのおかげでもある。地球でそういう職業についたら繁盛間違いなし。

 リアルタイムで細胞を見てアドバイスするんだからそりゃあ効果てきめんだ。


 今のうちに知識を増やして戻った時に活用しよう。好きなだけ食べたい。特に焼き肉。そして塩キャベツ。









 いつも通りの急降下で大森林の木の滝に到着。

 ブレンドティーは大丈夫かとお鍋を見せてもらったが減っているようには見えなかった。マッチャのバランス感覚凄すぎ。


 当たり前と言えば当たり前だが、白フワファミリーもコーンも姿を見せなかったので白フワに呼んできてもらう事にした。島のみんなだと多分怖がらせるだろうし。






「ヒッ」


「あ、いた。お邪魔してます」



 声のした方に顔を向けると、顔だけをそっと出してこちらを窺っているコーンがいた。

 視線を上に向けると白フワ達も木の枝付近にみっちりとつまっていた。



「白フワを送り届けに来ました。長い間拘束してごめんね」



 みんなにはその場で待機してもらい私だけ近付く。



「お茶を用意したんだけど飲む?」



 チカチカさんとボスから飲んでも害はないと聞いていたので勧めてみる。

 白フワの飲んだ量から考えるとファミリー全員分は無いかもしれないが。


 私の提案にみんなが遠慮しあっているように感じられたのでまずはコーンから飲んでもらう事にする。



「冷ましてあるから飲めると思う」


「……ヒッ!」



 お皿に入れたブレンドティーをコーンは美味しそうに飲んでくれた。良かった良かった。



「あなた達はどうやって飲む?」



 白フワはじゅっと吸い取るようにして飲んでいたので、いくつか持ってきているお皿に注げばいいだろうか。

 しかしお皿を地面に並べているとボスから驚く事を言われた。



「――え? 撒くの? 上から?」



 どういう事だと考えていると、白フワ達が集まってきてひとつの巨大な球体になった。さすがにボスの方が大きいが。



「あ~。ここにお茶を投入って事?」


 そう聞くと、身を寄せ合っている白フワファミリーがそれぞれ高速でブルブルし始めた。大きさが大きさなので迫力がある。さりげなく白フワもまじってるし。真っ白の中の虹色はよく目立つ。





「じゃあいくよ~?」



 白フワ達が怖がらない様にそこそこの高さまでボスに浮いてもらい、ボスの頭に乗ってそこからブレンドティーを撒く。



「おお~」



 白い毛がじわじわと茶色に染まっていく。

 全部撒きおわったところで声を掛けると、次の瞬間には茶色い部分は元の白色に戻っていた。なにそれすごい。






 その後はお礼として巨大白色モフモフに上空からダイブさせてもらった。

 かなりの勇気が必要だったが、チカチカさんの「平気」のひと言で思い切って飛んだ。

 白フワ達はかなりの弾力性を備えているようで、何度もぼよよんとなりかなり楽しめた。




 あと3回ぼよよんさせてもらった。






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