表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/216

ものは考えよう

 




「はるちゃーん?」





「すぐ取り戻せるってー」





「ほら、これではるちゃんの希望通りファンタジー生活を長く楽しめるでしょ? あ、こっち向いた」



<地球>さんがなんか良い事言った。



「……これってもしかしてちょっとした強くてニューゲームみたいな感じ……?」


「そうそう! はるちゃんうまい事言うね~」


「みんなともっと一緒にいられるんですね……」



 ぎゅうぎゅう挟んでくる愛しのモフモフ達。



「ありがとうございます……<地球>さん、チカチカさん……」



 ふてくされてすんません。



「はるはこの世界の構成要員じゃないからどうしてもこの惑星の力も必要でね。拠点は人間に作らせて」


「……はい」



 よくわからんがまあいいや。



「……このシュッと開く感じが近未来感出ててかっこいいです」


「おっ元気出てきたね~。いいこいいこ」



 もうちょっと優しく撫でられないもんかね。



「これ街の人達でもシュッてなったりしますか?」


「大丈夫! はるにしか反応しないから」


「おお……かっこいい……!」



 物語の主人公はこうでなくちゃね。



「ゲートっていうのは伏せて拠点建設関係者には伝えておいた方がいいですかね?」


「そうだね! 勝手に掘り起こしたり砕こうとすると大変な事になるから。人間が」



 ……こええ。



「じゃ、じゃあサンリエルさん……じゃなくていいや。アルバートさんに先に伝えておきましょう。家も近いですし。あ、港にいるかな?」


「家にいるよ。死んだように寝てる」



 かわいそうに……。いろんな心労が重なったんだろうな……。



「じゃあカセルさんにしましょうか。――港にいる? サンリエルさんと? あー……」



 まあサンリエルさんがいてもいいか。気持ちが重いけど。

 それにしても、ボスだけじゃなくチカチカさんにも見られてるって知ったら気絶しそうだな……茶色い髪の彼は。カセルさん辺りならなんとなくわかってそうだけど。



「ぴちゅ」

「キュッ」


「寝かせてあげようよ。疲れてるんだから」



 起こすって。



「クー」

「コフッ」


「あいつの方が面白い……? いやいや」



 アルバートさんやったね、守役達に好かれてるよ……。



「何? あのおろおろ人間? 起こそう起こそう! 寝起きドッキリだよ!」



 やったね、惑星の意思にも好かれてるよ……。



「あの、せめてカセルさんも一緒にしてあげないと倒れちゃいそうなんですけど」


「倒れちゃおろおろが見れなくなっちゃうね! ――じゃあお前が連れて来る係ね」



 すまん、アルバートさん。今日という日を乗り切って欲しい。



「お2人は身分バレしても大丈夫なんですか?」


「神じゃなくて神を守る者設定でいこうかな~。神の騎士的な?」


「……チカチカさんはそれで大丈夫ですか?」


「特に話す事もないし。聞かれたら神の騎士が答えるだろうし」



 クールだ。



「私の顔って今戻せますか? 後で金髪バージョンにも」


「任せて!」


「じゃあ……チカチカさん、こっそりアルバートさんとカセルさんをここに連れて来てもらっていいですか?」


「あれ? おろおろ人間の部屋じゃないの?」


「この岩を見てもらった方が早いかと……」



 プライベート空間は死守するからね、アルバートさん。



「わかった。ちょっと待って――はい」



 そして現れるカセルさんと、丸くなって寝ているアルバートさん。

 すまん……すまん……。



「あれ…………!」



 後ろの気配に気づいたのか、勢いよくこちらを振り返り一瞬の内に状況を判断したらしいカセルさん。そのまま土下座のようなポーズをとった。すごいな。



「カセルさん、申し訳ありません突然。立って下さい」


「はい…ですが……」



 そっと視線を上げて<地球>さんとチカチカさんに視線を向けるカセルさん。

 言いたい事はわかる。だって2人とも宙に浮いてるもんね。



「我々の事は気にするでない」



 何その口調。



「はい……」



 そろそろと立ち上がるカセルさん、そこでアルバートさんに気が付いた。



「アル…………!」



 突然声が出なくなって驚いた様子でこちらを見てくるカセルさん。

 ごめん、私も驚いてる。



「騒ぐでない。起きてしまうではないか」



 だからその口調……。チカチカさんは興味無さそうだしなんだかなー。



「お2人に急いで伝えないといけない事があったので来てもらったんですが……。アルバートさんをどうやって起こそうか考えてると言いますか……」



 その言葉でカセルさんにはわかったのか、にやりとした顔をして口をパクパクさせた。



「言いたい事があるみたいですよ」


「静かにするか?」



 頷くカセルさん。



「――――ありがとうございます。私“風”のカセルと申します。アルバートを上から皆様方で覗き込むというのはいかがでしょうか」



 幼馴染って何だろう。



「ふむ。悪くないな」


「私が声を掛けて起こすとこの者は油断すると思います」


「では起こす役割はそなたに任そう」


「ありがとうございます」



 かわいそうに……。地べたに寝かされてるし幼馴染はああだし……。それを止めない私も悪だけど。






「――ではよろしいでしょうか?」


「うむ」



 みんなで(私とチカチカさんは除く)アルバートさんを囲み準備は完了。<地球>さんは空中から覗き込んでいてかなりの恐怖体験だと思う。ダクスの精一杯の剥き出しの牙は全然怖くないけど。



「おい! アルバート! 起きろよ! いつまで寝てんだよ! もう朝だぞ~!」



 アルバートさんの足を容赦なく揺すっているカセルさん。人ってあんな笑顔で嘘がつけるんだな。



「お~い!」


「…………うる……さ……」



 お? 起きるか?



「起きろ~!」


「うるさいぞ……」



 手でその辺を払っているが今手に触れたのはロイヤルの羽だ。



「……ん…………?」



 もふっとした感触にどこかおかしいと感じたのだろう、アルバートさんが動きを止めた。

 そして――



「…………ひっ!! いたっ! あ! 申し訳ありいた!!」



 忙しいな。



 横で見ていると、目を開けてまず覗き込んでいる面々に驚き、咄嗟に顔を上げてしまいキイロのくちばしがおでこにささり、謝罪と共に距離を取ろうとして地面に後頭部をぶつけるという流れなのはひとまず理解できた。



「何その反応~!」



<地球>さん、口調が元に戻ってますよ。



「ははは!」



 カセルさん笑い過ぎ。

 一方アルバートさんは身動きも出来ずに地面に背中をはりつけるようにしておろおろしている。

 あ、こじんまり組が上に乗った。



「アルバートさんおはようございます。……ほらもう降りようか」


「ぴちゅ」

「キャン」

「キュッ」


「それじゃあ起きられないよー」


「この者達を落とさぬよう起き上がるのだ」



 何を言ってんだ――あっわざと端っこに移動した。こじんまり達め!



「もうちょっと難易度を下げてベリーイージーくらいでお願いします。なんなら練習モードで。寝起きですし……」


「そこまで言うならしょうがあるまい」


<地球>さんがそう言うとこじんまり組はしぶしぶといった様子で頭の方に移動した。そこ……?



「あの……アルバートさん、守役の事は気にせず起き上がってください。自分達でなんとか調整すると思いますので」


「は、はい……!」



 そしてそおっと頭から体を起こすアルバートさん。

 キイロとロイヤルは器用に頭と肩に落ち着いたが、ダクスが色々と危なっかしい。



「大丈夫です。立ち上がっても」


 上半身を起こした状態で、肩に両前脚を引っ掛けてしがみついているダクスを見ながらおろおろしているアルバートさんに伝える。自業自得っていう言葉があるからね。



「あの……申し訳ありません……」


 そう言いながらゆっくりと立ち上がるアルバートさんに、後ろ足をしゃかしゃか動かしているダクス。

 落ちるなと思った瞬間、マッチャがそっとダクスをアルバートさんの肩に乗せた。

 その優しさは今必要なのかしら……。



「アルバートさん、熟睡していたところすみません」


「いえ……! お気になさらないでください!」



 3つの物体を乗せて少しふらついている寝癖アルバートさん。ちょっと面白い。

 そんなアルバートさんを見ながら羨ましそうにしているカセルさん。



「……キイロ……、良かったらちょっとだけでもカセルさんに……」



 なんだか申し訳ないので“風”繋がりのキイロにもお願いする。思い出した、みんなの力と一族の力について詳しく聞こうと思ってたんだ。後で聞こう。



「ぴちゅ」



 キイロが嫌がらずにカセルさんの頭に乘った。



「あれ? どうしたの?」


「ぴちゅ」



 なかなか面白い案を出す人間だと、悪い顔をしているキイロ。

 そんな距離の縮まり方があるのか……。


 そのカセルさんは幸せそうな笑顔で耳がぴくぴくと動いていた。やだ、可愛らしい。



「よくぞ試練を乗り越えた」



 突然の<地球>さん。

 ほんとなんなんですかそのキャラは。



「も、申し遅れました! 私アルバートと申します! あ……! 申し訳ありません!」



 急に体をかがめて膝をつこうとしたためダクスとロイヤルがバランスを崩し、ロイヤルの羽でバシバシやられているアルバートさん。

 不憫な子……。今度虹色鉱石の欠片でもこっそりあげようかな……。



「うむ」



 うむて。



「カセルさんには少し説明したんですけど、伝えたい事があってここに来てもらいました」



<地球>さんが前に出てくると話がさっと終わらなさそうなのでこの場は私が仕切る。



「ここは拠点予定地なんですが……」


「……やはりそうですか」


「はい。それでお2人の後ろにあるその岩ですが、触れずに建物内に収める形で拠点建設をお願いしたいのですが可能ですか?」



 後ろを振り向きゲート岩を確認する2人。



「可能だとは思いますが……」

「ひっ!」


「……気にしないでください」


「は、はい……!」



 岩の方を見ていたアルバートさんの背後にふわりと近付いた逆さ状態の<地球>さん。こちらに向き直ると目の前に人の顔があったアルバートさん。

 楽しいですかそうですか。



「中庭のようにすれば風情があって素敵ですね」



 実際は街の人にとってはとんでもない岩だけど。



「領主様に伝えます」


「よろしくお願いします。触れてしまうと大変な事になりますのでお気を付けください」



念の為少し大げさに伝えておく。



「……差支えなければどのような事が起きるのかお教えいただけないでしょうか?」


「そうですね……」



 私も知らないのでこっそり<地球>さんを見る。<地球>さんはあぐらの状態でふわふわ浮きながら意味ありげに「世界を無に還す」とだけ発言した。



(おい……!)



 お世話になってるけど爪でガリってやりたい。なんでその発言を選んだんだ。



「世界を……」



 ちょっとちょっと、カセルさんも悲壮感を漂わせないで。

 アルバートさんも顔が……。



「世界を無に還す……くれぐれも気をつける事だな」



 また言ったよ。



 デリカシーよ宿れ、という気持で<地球>さんを見ていると、今まで我関せずのチカチカさんがすっと近寄って来て眉間のしわを伸ばされた。






 惑星のこだわりが本気で分からない。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ