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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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食欲という欲

 





「はる、食事が送られてくるよ」


「やったっ。ボスにお願いしてもいい? うん、じゃあお願い」



 ベッドでごろごろしながらみんなをバシャバシャ撮っていると出前配達のお知らせがあった。

 ゆくゆくは名カメラマンになれる気がする。



「さて、味見でもしてやるか」



<地球>さんはゆらゆらと空中を漂っており、チカチカさんはソファーに姿勢良く座りブレンドティー守役スペシャルをこれまた上品に飲んでいる。性格の違いが面白い。



「ここのテーブルが広いからここでも大丈夫ですか?」


「どうせならテラスでサンセットを楽しもうよ! 食べてる間に陽が沈むだろうし。はるちゃんも好きでしょ?」



 リア充みたいな事言ってるな。私もアルバートさんちで楽しんだけどさ。



「テーブルをテラスに運びますか? ――そんな次元の話じゃなかったですね」



 窓からテラスを見るといつの間にか大きなテーブルセットが用意されていた。



「お前にしては気が利くね! さすが僕の後輩!」



<地球>さん、チカチカさんは嬉しそうな顔をしていません。






 テラスでいそいそと飲み物の準備をしながら待っていると、ボスが木の箱を持ってきてくれた。

 3箱……? 多いな。



「ボスありがと~」


 前脚のあたりをかりっと噛みながらお礼を言い、さっそく1つ目の箱の蓋を開ける。



「今日のご飯は何かな――うわあ~!」



 はじめに開けた箱の中にはパンやこの前食べた甘い食べ物たち、そしてテーブルセッティング用のアイテムが入っていた。キャンドルて。おしゃれ。



「わくわくしますね~」


 生花をセットしながらマッチャに次の箱を開けてもらう。

 残りの2箱には見覚えのある食べ物がお皿にのせられてぎっしりと詰まっていた。



「食べた事があるものが多いです。しかも好きなやつ」



 こんな気遣いが出来るのはカセルさんとアルバートさんかな? 今日の食事は中断したからあの人ではないだろう。

 好きだと言っていないものも入っているのでおそらく食べるスピードで好き嫌いを判断されたんだろうな。なんでだろう、あの2人なら観察されていても嫌じゃない。



「お腹空いてきました! 食べましょう!」



 てきぱきとマッチャと一緒にお皿を並べる。

 キウイメロンもばっちり入っていたので並べる。



「この――キウイメロンって呼んでるんですけど、島で収穫したやつです」


「はるちゃんってば悪徳商人! 大儲け!」



 悪徳商人……。



「結果そうなっちゃいましたけどー。そんなつもりはなかったんですー」


「口を突き出さない! おブスになる! 誰も不利益を被っていないから大丈夫だよ~。むしろ楽しんでお金を使ってるからどんどんやりなよ!」


「それはそれで……。まあ困ったらその手を使いますけど。住宅ローンも払う予定ですし」



 あの意気込みだとお金が貯まる前に拠点が完成するのは間違いない。



「拠点を作るなんて主人公っぽいよね!」


「大森林からこっそり街に行こうとすると意外と門まで距離がある事に気が付いてしまいまして。秘密の拠点に上空侵入する方が楽なので」


「はるちゃんっぽいね!」



 私の何を知ってるんだと聞きたいが黙っておく。

 というか今回のお仕事をするために選ばれたという事は前から観察されていたという事で……。うん、深く考えるのはやめよう。



「流れで商人の肩書も手に入れちゃいましたのでその仕事もやりつつ人の為になるような事をしていきますね。そしたら愛と光のエネルギーも集められるかなと」


「いいね~! 急がず慌てずのんびりとやりなよ~」


「はい。急げるような力もないのでのんびりやります。神の社からも定期的に集められると思いますし」



 金額が決まっていない家賃収入みたいな感じだな。虹色オブジェを作っておいて良かった。良くやった私。









「ではいただきます!」



<地球>さんに空中から頭を撫でられつつ食事の準備が完了したのでさっそく食べ始める事に。

 お昼ご飯が中途半端な感じだったのでお腹が空いている。



「はるちゃん美味しい?」


「はい!」


「でも地球の方が美味しくない?」



 また答えにくい事を……。チカチカさんもいるんですけど。



「そりゃあまあ地球の方が種類もありますし食べ慣れてますからそうですけど……。こちらのご飯も美味しいです」


「こいつは人間に天啓を授けるとかしないからな~。その分進歩も緩やかだよね~。少しは人間に興味を持てばいいのに」


「興味を持ちすぎて天啓を連発して人間に知恵をつけさせ過ぎて自分の存在を消しかねない力を持たせてしまわない様に気をつけているだけです」


「一気に言ったけどそれって僕の事?」



 あわわ。言い合いの内容が壮大すぎて何が何だか。あわわ。



「……よ、よおし! いっぱい食べてエネルギー集めがんばるぞお!」



 大きな独り言を言いながらもりもり食べる。食事は美味しく食べたいね。



「<地球>さん、これ焼肉に近くて美味しいんですよ。地球の焼肉のタレがやっぱり最強ですけどね!」



 仲良く食べようじゃないか。



「はるちゃん焼肉好きだよね~。年をとっちゃったからそんなに食べられなくなったけど!」



 まじでどの辺から観察されてんだ私。



「……そうなんですよねー。白ご飯と一緒に食べるとお肉が食べられなくなるのでもうお肉と冷麺って感じで――白いご飯食べたい……」



 無いものを考えてもしょうがないので考えまいとしていたが、地球の話が出来る相手がいる事で地球の味が恋しくなる。



「本格的にお米探しの旅に出ようかな……」


「はる、島にあるよ」

「あー!!」


「……ん?」





 しまにあるよしまにあるよしまにあるよ――――





「ある!? 島に!?」



 がたたたっと激しい音を立てて立ち上がる。ごめん、ダクスに汁がかかった。



「もう! こういうのは自分の力で見つけるからこそ喜びが増えるっていうのに!」


「あんたが用意させたんじゃないですか」


「もうちょっと盛り上がるタイミングっていうものがあるよね~。お前はほんとに面白みのない――」



 お偉い2人はまた言い合いをしているが――こういうコンビ身近に多いな――、私にとってはそれどころじゃない。



「エン、乗せてくれる? ちょっと待っててカゴ取ってくるから」



 礼儀とか食事の途中とか関係なくもう心はお米でいっぱいだ。



「<地球>さん、チカチカさん、すみません。ちょっとそこまで探索に――」


「おっ。欲まみれだね~アクティブだね~」



 褒められてる……?



「僕も行こーっと!」


「でも温かいうちに……」



 探索に出ようとしている私が言える立場でもないけど。



「大丈夫、温かいままに出来るから! あ、じゃあ食べながらはるちゃんの事見てるよ!」


「食べながら?」


「ほら、早く」


<地球>さんがチカチカさんにそう言うと、テーブルセットごと宙に浮いた。



「……おお~!」


「これでついてくからさ!」


「はあ……」



 正直物凄く気が散る。が、しょうがない。

 結局全員でお出掛けする事になった。














「ん゛んっ! あ~喉の調子が……」






「ごほっ!」






「あ~ん゛ん!」







 ……さっきからうるさい人が1人。

 何か伝えたいのかとそちらを向くと大げさに顔を反らしてこちらを見ようとしないくせに、私が進もうとすると喉の調子が悪いパフォーマンスをしてくる。

 どうも間違った方向に進もうとしていると喉の調子が悪いパフォーマーが登場してくるみたいなのだ。



「……どこにあるんだろうな~。エン、こっちに行ってみようか?」


「おほん!」


「……やっぱりこっちにしようか」



 なんだろう、この接待探索は。みんなとのかくれんぼでも接待されたがまさか惑星にまで接待されるとは……。





 たびたびパフォーマーが登場しながらもたどり着いたのは草原エリアだった。



「ここ……? ここにお米なんて無かったけど……」


 ひとまずエンから降り、辺りを見回しながらキャベツもどきときゅうりもどきの収穫エリアまで歩いて行く。

 するとある場所がチカチカと光り始めた。



「…………」


 無言でチカチカさんを見る。

 そのチカチカさんはこちらを見ずに優雅に食事をしていた。さっきまで食事に興味無さそうだったのに……。怪しさしかないですよ。





「んん~?」



 とりあえず光っている植物に近付く。その植物は丸い葉をたくさんつけた緑色の植物だった。

 初めて見た時には全体的に緑色だったので草だとひとくくりにしていたものだったが、よくよく見れば丸い葉ではなく球状の葉をつけていた。



「これかあ……? おっ!」



 球状の葉を指で挟んで少し力を入れると中から見慣れた米粒さんが飛び出してきた。



「お米だ!」


「はるちゃんすごいじゃん! よく見つけたね!」


「よかったね」



 もう何も言うまい。



「お米だ! マッチャ、一緒に収穫して!」



 鼻歌を歌いながら収穫していると、チカチカさんが家に置いてきた携帯音楽プレイヤーを瞬間移動させてくれたのでさっそく大音量で音楽を流す。



「これはもう島でもお祭り決定ですね! 収穫祭ですね!」



 頭を縦に振ったり歌いながら収穫を続けていると、<地球>さんから「はるちゃんは音楽のセンスだけはほんの少しあるよね!」と満面の笑みで言われた。言い方。






「――よし、今日はこの辺で。超特急で戻りましょう!」


「はいよ~」


「え…………」



 一瞬の間に景色が変わり、そこはもう家のテラスだった。

 本気でこの人達すごい。ここの生活はイージーモードだと思っていたが、惑星さん達にしたらこれまでの私の生活は色々と制約があるものなんだろうな。重力とか距離とか――だめだ、難しい話は無理だ。



「ありがとうございます! じゃあさっそくご飯を炊いてきます!」


「ここでやればいいよ。みんなでお鍋を囲ってるみたいに!」



 ここで? と思う間もなくテーブルの中央に家にある虹色鍋が現れた。

 ご飯が炊けるのをみんなで囲んで待つのか。斬新だな。



「えーと、じゃあマッチャ、この丸いとこをキュッとやって――」


「キュッ」


「ロイヤルもやるの? じゃあ羽で優しくそっと押して」


「ぴちゅ」

「キャン」


「わかった。ダクスは足を綺麗にしてからね」



 結局島のみんなでお米を取り出す作業を行う事になったが、エンが鼻でキュッとやると濡れた鼻にお米が付いてしまうのでサイズ的に手伝いに無理があるボスと共に応援にまわってもらった。

 もちろん写真は撮った。ギガ可愛い。


 この事がきっかけでお米を取り出すよりカメラマンとしての仕事の方が忙しくなってしまったが後悔はしていない。





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