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幸せに暮らしましたとさ  作者: シーグリーン


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欠かせないアイテム

 



「楽しかった~!」


「チカチカさん、降臨してきました」



 テラスで待っていてくれたチカチカさんに話しかける。

 最初はつまずいたがどうにか降臨演出は成功したと思う。



「おかえり」


「みんな感動してくれてさ~! あのただ純粋に喜んでる顔! いやーこれだから降臨はやめられないね!」


「食事もばっちり頼んできました」


「いや~崇められちゃってたな~!」


「はる、カメラ」


「ありがとうございます! あれ? これインスタントカメラなんですか?」

「人間達泣いて喜んでたな~」


「そういう機能も付いてるね」


「へえ~! ただのカメラかと思ってました。これ壁に貼ってもいいですか?」

「あ~この世界の神より信仰者が増えたらどうしよ~」






 ……こっちがどうしよう。<地球>さんはやたらとチカチカさんを見てるんだよな。でもチカチカさんは何にも言わないっていう。ここに私が口を挟んでも大丈夫なのだろうか。



「ね~はるちゃん? すごかったよね?」



 うわ。方向転換してきた。



「はい……。虹とかさすがだなって思いました。あの、アルバートさんだけびしょびしょになってましたけど……?」


「あ~あれね! あの人間さー、な~んか面白いんだよね」


「ぴちゅ」

「キュッ」


「だよね~! いっつもびっくりおろおろしててさ~!」



 うまく話を違う流れに持っていけたのはいいんだけど……。アルバートさん……。



「馬鹿正直に人を裏切らないタイプの人間だね~裏切れないとも言うけどさ! まあ不器用なんだけど無償の愛というものを周りに施せる人間なのは確か。はるちゃん見る目あるよ!」


「たまたまなんですけどね」



 好きな子にちょっかいをかける小学生みたいなものか。良かったね、アルバートさん。<地球>さんとキイロとロイヤルに好かれてるみたいだよ。



「キイロとロイヤルも好きならつついたり蹴ったりしなきゃいいのに」


「ぴちゅ!」

「キュッ!」


「ごめんごめん、別に好きじゃないんだよね。面白いからやってるだけね? うん、わかった」



 完全にチカチカさんのツンデレを引き継いでるな。



「あの、もし良かったらみんなで写真撮影したいんですけど。ここで全員集合の撮って、次に海岸でタツフグと白フワも一緒に」



<地球>さんが降臨の件をまた言い出さないうちに写真撮影を始めたい。



「おっけ~! 僕これでいい? はるちゃんもメイク直す? 髪アレンジする?」


「メイクしてないので大丈夫です……」



 女子みたいな気遣いを受けながら結んでいた髪の毛をほどく。

 すると、目に見える範囲の髪の毛がすべて真っ白になっていた。



「おお?」



 急いでクローゼットまで駆け下りて鏡を見る。



「おお~! 結構たまった……」



 髪の毛は耳の下あたりまで白くなっていた。



「おめでと~!」

「わっ!」



 急に天井から逆さの<地球>さんが染み出てきたように現れた。チカチカさんもいつの間にか背後にいるし。

 これ夜やられたら腰抜かしそうだ。やっぱり光状態でいてもらった方が……いや、それも怖いな。



「ごめんごめん!」


「これからもっと集まりそうだよ」


「もっとですか?」


「人間達が祝いの祭りをするってさ」

「あっごっめーん! もしかして別世界の神が先に記念日制定されちゃった~? 申し訳ないな~! 格の違い見せつけちゃった~?」


「貢物も大量に届くかもね」



 チカチカさんのスルースキルすごいな。

 それにしても大量の貢物というと恐怖の思い出しかないけど大丈夫だろうか。



「お祭りは楽しそうでいいですけど、貢物って前みたいなやつですかね……?」


「怪しい人間はいるけど大丈夫そうだよ」


「なんか楽しそうだね! 僕も滞在延長しようかな? ね、はるちゃんも嬉しいよね?」

「あんたはさっさと帰った方がいいと思います」



 チカチカさん、さっきまで聞き流してたのに……。



「そんな言い方するならもっと居座ってやろうかな」


「あ、あの! <地球>さんは私がこの世界でレベルアップとエネルギーをたくさん集めたから来てくれたんですよね?」



 こっちの話に食い付いてこい……!



「そうだよ! はるちゃんとまた話せるのを待ってたよ~。思ったより早かったけど!」



 よし食い付いた。こういう時フィーッシュッて言うんだっけ?



「それって今後も自由に行き来出来るって事ですか?」


「う~ん、自由にとはいかないなあ。今回はたまった力を少し地球に持って行くって名目で来てるから」


「名目ですか?」


「うん。僕達高次の存在もね……はるちゃんには難しいか。えっとね、1番大きな存在がいて、僕達もルールの中で存在してるって事!」


「……ほほう」



 話す前から私には難しい内容だと判断された事に少し引っかかりを覚えるが、確かによくわからない。



「1番大きな存在って……誰……というかどなたですか?」


「――すべてだよ。僕達含め人間達の言う宇宙そのもの」


「すべて……」


「あ! もう! またおブスな顔! うっすら偉い人がいるってわかってたらいいよ~!」



 何故かチカチカさんに眉間のしわを伸ばされている。ツンデレさんめ。



「ごめんね、はるちゃんに難しいを話しちゃって」



 頭を撫でられているがその言い方も引っかかる。



「難しい話はもうおしまい! どこで写真撮る? やっぱり外? どうする? 花咲かす?」


「テラスでこの家を背に取りたいです。花はお任せします」


「お任せあれ!」


 そう地球さんが言うと、テラスの地面からにょきにょきと色とりどりの花が生えて来た。そして巨木からもたくさんの枝が生えてきてこれまた色とりどりの花が咲いた。



「おお~!」


「これ実体じゃないからそのままにしとくね! 楽しい気持ちになるでしょ?」


「何勝手に決めてるんですか」


「何? はるちゃんの為に維持する程度の力も使えないって言うの?」


「勝手に決められるのが嫌なだけです」



 またか。



「あの、これって維持するにはチカチカさんの力が必要なんですか?」


「そうなんだよ~こいつの世界だからね~」


「はるは気にしなくていいよ」



 まあ気にはなるよね。この2人は仲が良いとは言えないけど悪いわけでも無さそうだし……不思議な関係だな。



「……じゃあ写真を撮りましょう! ボスは大きいから1番後ろで、チカチカさんの世界だからチカチカさんが真ん中で」


「はるが真ん中でいいよ」


「じゃあ僕その隣! ――唸っててもその見た目じゃ全然怖くないからね」


「ダクス、唸るの止めようか」


「僕のおかげで今ここにいるっていうのに恩知らずだね~」











 …………ん?



「あ、あの! 今<地球>さんのおかげって……!?」



 聞き捨てならない。



「そうだよ! 知らない世界でも寂しくないようにはるちゃんの好きなものを用意したんだ~」


「あ……実家でダックス飼ってました……」


「でしょ? こいつの子供達が見た目動物だからちょうどいいかなって」


「ダクスは島のみんなとは目的が違うって事でしたけど……」


「そうそう! はるちゃんの精神安定剤みたいなものだね!」





 ……謎が解けた。正直そんな事忘れてたけども……。



「そっかあ……ありがとうございます……」



 ダクスを抱きしめながら感謝の気持ちを伝える。



「まあ1回説明はしてるんだけどね! まさか降臨の時にポーン! ってなるとはねえ……あはは! これさあ、他の惑星に言うと必ずウケるんだよね~!」



 どうしよう、<地球>さんの腕に爪を立ててガリってやりたい。



「キャン!」


「牙でがぶってやらなくてもいいよ、ありがとね」



 ダクスに慰められた。優しい子。その慰め方もどうかと思うが。



「じゃあダクスとロイヤルは私が抱っこして――エンとナナは両サイドが良いの? マッチャは後ろ?」


「残念! 隣の枠はひとつしか空いてませんー」


「……<地球>さんは私の前で座ったり、寝そべったりしてメインの位置でどうですか?」



 集まりの中でもお調子者がおさまるポジションだ。ぴったりだと思う。そして若干私の腹いせも含まれている。



「え~? はるちゃんより目立っちゃうよ~?」


「<地球>さんにぴったりだと思います」


「じゃあ威厳を出してあぐらなんかいいかもね!」



 いそいそとあぐらで座りだす<地球>さん。チカチカさんはどこに立ってもらおうかと視線を向けると、にやりと笑いかけられた。

 デレた……! ツンデレがデレた……!




<地球>さんの要望で何回も撮り直しがあったがみんなとの初記念撮影は無事終わったので、砂浜に行ってタツフグと白フワとも写真を撮った。


 2人は島のエネルギーが強すぎて上陸出来ないので、海にざぶざぶ入っていってリゾート地で撮る雑誌の写真撮影みたいになった。

 空中からとはいえ島の内部から白フワを落としたの申し訳なかったな……。


 島の外の生き物のタツフグと白フワはさすがにチカチカさんと<地球>さんを前にして委縮していたので、お2人には空中から参加してもらった。

 カメラのシャッターを押す時も分身を登場させていたし、神ってすごい。












「あ゛ーーーー」


「はるちゃん渋い声出すね!」


「今日はいろいろあったので温泉に入りたかったんです……。<地球>さんはあったかいとかわかるんですか?」



 海に入って濡れたのでただ今おうち温泉中。あー贅沢だ……。



「ばっちり調整できるよ!」


「服も着たままとかいいですね……。服でもないのか」


「ザ・エネルギーだからね!」


「便利ですよね――あ、ありがとう」



 マッチャに冷えた健康水の入ったコップを渡された。ここは天国か。



「チカチカさん、そういえばこの健康水ってどんなお水なんですか?」


 温泉には入らず岩に腰かけているチカチカさんに質問する。



「はるの名付けた名前の通り。それを飲んでるから排泄行為が必要ない。昨日飲んでないでしょ? 期間が空くと排泄行為が再開されるよ」


「えっ?」



 ……あっぶな! 

 慌ててごくごく健康水を飲む。野外排泄は今さら勘弁して欲しい。



「これさえ飲んでたら生きて行けるからはるちゃんでも大丈夫かなって!」


「……ありがとうございます」



 なんだろう、素直に喜べないんですけど。



「フォーン」


「うん、おかわり欲しい。お願いします」



 こりゃあ街に行く時にも持って行かないと大変な事になるぜ。

 アレクシスさんに家のトイレを案内された時割と近代的なトイレで驚いたけど、やっぱり日本のに慣れてるとどうもね……。

 ここまできてもファンタジー世界で生活する覚悟とかそんなに無いな。野宿は出来たけど。

 まあ無理に苦労する必要はないか。




「私お2人に聞きたい事がいろいろとあったんですけどね、今は何だっけ? という状態でして……」


「思い出したら聞けばいいよ」


「そうだよ! こいつもいちおう惑星やってるからね! 大丈夫だよ~」



 ひと言多いよね。



「思い出したら……あ!! 思い出しました!」


「じゃあ<地球>さんが的確に答えちゃうよ!」


「私ってエネルギーが満タン、髪が全部真っ白になったらすぐ地球に帰らないといけないんですか?」


「う~ん、通常はそうなるね~。この世界のバランスが崩れちゃうから」


「……バランスですか?」



 やっぱり神様だから難しい話多いな。そう見えないけど。



「そうそう! 1つにエネルギーを集約できる限界があってね」


「……へえ~」



 わかったふりをして場の雰囲気を壊さないというのも時には必要だと思う。



「まあその辺は僕の力で多少の融通はきくよ! お前も協力しろよ」


「はるの為ならしょうがないですね」



 やだなに素敵。はるの為とか言われちゃった。好きだ。<地球>さんも。

 卒業旅行出来るのを楽しみにしておこう。






 その後は難しい話は無く、あそこの民族の作り出すものが色鮮やかで素晴らしいとか、新種の動物が生まれたとか、地球の事を聞いて楽しく過ごした。



 温泉に入り、美味しい食事もこれから届く……天国か。





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