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第005話 悪魔deアイドル

 時間が足りない……。一日40時間位になればこっちも狐耳の方と同じ位のペースで更新できるのに(´・ω・)

「では本題に入るとしようか」

「その前に何故女装野郎(ハニエル)が自分等と同じテーブルで暢気にストロベリーパフェなんか食ってるかの説明からお願いしたいんスけど?」

「何よーあたしが居たらそんなに迷惑な訳?」


 全宇宙の夢見るヴァラちゃんファンの皆さん今晩は。現在天使たちの支配領域の真っ只中にて若干殺伐としたお茶中なヴァラちゃんでッス。


 今回初っ端から胃が痛くなりそうな状況に立たされている真っ最中ッス。この召喚者(いらいにん)はライブ会場のすぐ側に立つカフェテラスでいきなり本題を話し始めるし、何故かそこに当初のラスボス想定だった筈のハニエルの野郎まで同席しちゃってるしでまずはその辺りの説明を求めても罰は当たらないんじゃないかなーなんて思う次第なんスけど……何この二対一なアウェイ感。


「迷惑っつーかお前今回のラスボスっしょー。これからお前をぶっ倒す手段を練るところなんだからとっとと消えた消えたッス」

「ひっどーい!この可憐なあたしを捕まえてぶっ倒すだなんて。これだから悪魔は野蛮って言われるのよね」

「……なんなら今この場でおっぱじめても自分としては一向に構わねーッスよ?」

「きゃ~野蛮な悪魔があたしを凌辱するぅ!?助けて愛の下僕一号!」

「お任せあれアナエルたん!」

「オイ」


 何これいきなり召喚者(いらいにん)が敵に回ったオチ?一瞬ハメられたのかとも思ったけどあの時のコイツの熱意は間違いなく本物だったし……きっとファンクラブ根性でも発動しちゃったんスかね。まじ頭痛いことッスよ……。


「―――はっ、いやいや!ハニエル様も一先ず落ち着いて話を聞いては貰えませんかね?今から俺が話す事は今後の封鎖都市世界全てに関わる重大な問題ですので」

「むぅ。封鎖都市(この)世界に顕現している間はアナエルって呼んでよね。元々ハニエル(そっち)の呼ばれ方はあまり好きじゃないんだから……」

「はっこれは失礼致しました。では以降はアナエルたんと」


 最後の『たん』で折角復活しかけた真面目な雰囲気も全てがぶち壊しッスね。ともあれ、ちょっとは真面目な雰囲気になったみたいなんで話位は最後まで聞いてやるとするッスか。


「あ、そうそう。あたしは本来こっちの姿が本質だから、女装してる訳でもないし野郎でもないんだからねっ。そこんとこ、間違えないように!」

「へーへーそッスかー。取って付けた様な苦しい言い訳ご苦労さんッスね」

「アンタ全く信じてないでしょ!信じるものは救われるって昔から言われているのも知らないの!?」


 そりゃ信じ込ませる側に都合の良い洗脳をする為の言葉じゃねッスか。これだから天使って連中は。


「ちーがーうーのー!うちの主は基本男尊女卑だから公の場じゃ男の(かたち)で居ろって煩いのよ。だから仕方無く男の姿で身体を作る事もあるだけなんだってば!伝承(オフレコ)でも言われているでしょう、ハニエルは極めて美しい女性の姿で現れるって」

「自分で極めて美しいとか言うんじゃねッス」


 ふム、でもそういえばそんな話もあったッスね。天使達も見えない部分じゃ結構苦労しちゃってるんスねぇ。


「まぁ分かったッスよ。しょうがないからアナエルって呼んでやるのも吝かじゃないッス」

「ほんとっ?アナエル嬉しいっ!」

「……のっ!?こらー!自分にゃそんな趣味は無いッスよ!さっさと離れろ~!」

「あぁあんっ……んもぅ、恥ずかしがり屋さんね」

「良いなァ、俺もアナエルたんにハグされてぇ……」


 感激のあまり?抱き着いて愛の儀式をしようとするアナエルとそんなアナエルに抱き疲れる自分を見比べながら羨ましそうにしてる愛の下僕一号君。結局、コイツ真面目に自分に説明をする気はあるんスかね?

 それにしてもハニエルもといアナエルって、こんな性格だったんスねぇ。以前呼ばれた戦場では野郎姿のハニエルと殺り合った覚えしかなかったから分からなかったッスけど、この様子じゃあ偶像(アイドル)活動も案外好きでやってるってだけなのかもしらんね。











「―――で、これは一体何の冗談ッスか?」

「あはははは!ヴァラ可愛い!似合ってるよっ」

「うむ。これなら悪魔然としたキャラが良い感じに立って民達にも大いにウケるだろうね」

「………」


 あの後、愛の下僕君から支配体制への挑戦のプランが自分達に提示され、その手段の一つとしてあるモノに着替えたんスが……。


「何スかこのフリフリの衣装は!ボンテージ基準なのは……まぁ悪魔だし別に違和感も無いッスけど」

「フッ、これはアナエルたんの天使風ミニスカ衣装と対を成すイメージで作成したものでね。ボンテージだけでは近寄りがたい印象を持たれてしまうかもしれないから敢えてそこにフリフリの『柔らかさ』を組み込んだ俺の傑作さ!」

「おー下僕君やるわね。これなら確かにあたしのライバル的イメージを打ち出せるし斬新かも―――ぷっ……で、でもあのヴァラがこんな格好で……もうダメ~アハハハハハッ!」


 下僕君作だったんスか、これ……。

 見事なまでに愛の下僕君の趣味全開な衣装を着せられ、姫様っちゅーか女王様っちゅーか、そんな感じのポーズを取らされている自分が此処に居るッス……何なのこの下僕君の美味しすぎる(オーラ)は。またまたその熱に浮かされて、気付いたら自ら着替え始めちゃったりなんかしててまるで本気で使役されてる気分ッスよ。


 それはそうとアナエル、失礼だからひとを指差して笑うんじゃねッス!






 それじゃあそろそろ事情を説明するとしまスかね。

 事の発端は下僕君のこの発言からだったんス。


「支配にも色々形はあると思うんだ」

「うんうん、そうだよね。この前まではこの辺りも堅物野郎(ミカエル)が支配しちゃってたせいか、悪魔達に反理想郷(ディストピア)なんて揶揄される位に人間達も委縮しちゃってたもんねぇ……」

「ほぅほぅ」

「ええ、今でこそアナエルたんの支配する時代に入り漸く民も娯楽という概念に目覚めはしましたが。やはりまだまだ前支配者であったミカエル様の落とした昏い影がこの封鎖都市世界には広く残っている現状です……」


 あー、そいやこの辺りはつい何年か前に支配者が入れ替わってたんだっけ。そんで今の支配者が目の前でアイドル活動に勤しむアナエルという訳で。


「全くあの権力馬鹿ったら。神に似た者なんて呼ばれて調子に乗っちゃって色々とやりすぎたものだから、あたしがこの世界層を引き継いだ時はそれはもう荒れ果てちゃって酷いものだったわ。今は主の下で354年間反省文を書かされ続けてるから暫くは何も出来ないでしょうけれど」

「それは何ちゅーか……ミカエルざまぁ!!」

「「ぷっ―――」」


 この辺りの感覚は悪魔も人間も天使もないみたいッスね。自分の正直な意見に二人共噴き出して、暫くの間和やかな笑いが場に響いてたッス。


「でもそれで新しい風を入れようってのは解ったッスけど、現支配者としては自身の支配領域に悪魔なんか入れちゃってもいい訳?お宅の主辺りはそういうの許しそうにないと思うんスが」

「んー。快く思わない天使達は多そうだけれどもね。主は案外そういう細かい部分は無頓着よ?大筋が通っていて結果さえ出せば割と寛容と言うか一々見る気も無いと言うか。大体五月蠅いのは座天使とか主天使辺りだわね。でも、今はあたしの支配する時代。あたしが居る間は他の連中に口出しさせる気は無いから」


 この答えから解る様に、やはり下僕君による自分の召喚はアナエルの意向もあったらしーね。結果的にはそれに自分が見事に釣られたという訳ッスけど今となっちゃこれはこれで面白そうでもあるし、現界で自分とアナエルが真向から争うと世界の揺らぎが不安定になっちゃって狭間からのペナルティも喰らいかねないからな~。まぁこの方向で行くのもアリかなーなんて思ったりもするッス。


「ふぅ、しょうがないッスね……今回だけは特別にその案に乗ってやるッスよ。ほんじゃま、振り付けの練習から始めるとしまスか~」

「本当か!?これでまた俺のローアングルショットコレクションが増えるぜ。ぐふふ……」

「良かったわね~下僕君」


 どうみても変態的な下僕君にニコニコと笑みを浮かべながら声かけるアナエル、それで良いのか七大天使。


「……悪魔の自分が言うのもなんスけど、こんな欲情に塗れた下僕君を放置しちゃってて良いんスか?」

「何言ってるのよ?あたしは愛全般を司る天使よ、性愛も愛の内じゃないの。そりゃ泣き叫ぶ相手に無理矢理に、とかなら流石に止めるけど」

「アナエルたんっ!俺っ一生貴女の下僕として仕え続けることを此処に誓います!」

「下僕君の気持ちは嬉しいけれどそれじゃ駄目よー。同じ人間と結婚をきちんとして、生まれた子供達にも親の愛を与えてあげないと」

「くうっ……この慈愛!もういっそアナエルたんと結婚してえええええええっ!」

「……あぁそッスか、末永くお幸せに」


 まぁ、どこぞの反理想郷(ディストピア)を作りまくった反省文書き取り中のムサ男天使と違ってこのアナエルの場合は自主的に拝されてるみたいだし、それに関しちゃ特に言う事は無いんスけどね。






 その後、一週間程を振り付けとキャラ作りそして歌詞を諳んじることに費やし、迎えた翌週の金曜日―――


「者共っ!このヴァラ姫ちゃんに跪けーぇイッ♪」


 ウォオオオオオオオオオオッ!!


「ほれほれ~これが良いんだろぉ……?ぶちまけたいんだろォ!?この下劣な欲情に塗れた豚共がっ!」


 ドオオオオオオオオッ!!!


「ふぉおおおお姫様ー!踏んでくだせえ!」

「アナエルたんも良いけど俺は断然ヴァラちゃん派だわ」

「手前は今全宇宙のアナエルたんファンを敵に回したな!!……でも俺もちょっとヴァラちゃんの方が良いかもって思った」

「「同志よッ!」」

「お姉さまー!そのおみ足をもっと拝見させてェー!!」

「……儂ちょっとトイレいってくるわ」


 若干パンクが入ったフリフリのボンテージファッションに身を包みスポットライトに照らし出された銀色に光る長髪を弾ませながら、ノリノリに躍る自分と先週以上の盛り上がりを見せる愚民共。

 アナエル達の計画通り、いやそれ以上の反響を呼び金曜日の突発乱入ヴァラちゃんライブは大盛況の内に終わったッス。


「むむむ……これは予想以上の反響ね。このままではこのあたしの不動の地位が脅かされるかもしれないわね……」

「アナエルたんの愛の栄光は不滅ですよ!なァに、相手は所詮ぽっと出の悪魔アイドル。天使の支配する世界に降り立った悪魔という斬新さで一時的に盛り上がってるだけですから心配することはありません―――あ、ヴァラちゃんそのブーツに包まれ続けて蒸れた素足で下僕第一号記念に俺の顔を踏みつけて下さい!」


 発案自体には賛同してたのに今は何故かハンカチーフを齧りながら悪役然とした台詞を発するアナエルと、最早節操の無くなってきた発案者の下僕君な二人の様子に思わず溜息が漏れ出てしまう次第ッス。下僕君、幾ら美味しい(オーラ)を発揮しててもこればかりは譲ってやらんッスよ!


「テメーはアナエルの下僕でしょーが。ファン掛け持ちなんてヌルい真似が許されると思ってんスか?……まぁ今此処で自分専門の下僕に乗り換えると誓うなら足の指がふやけるまで舐めさせてやってもいいッスけど?」

「ぐっ……流石は大悪魔。その辺の木っ端悪魔共とは誘惑のレヴェルの桁が違い過ぎるぜ……」

「負けないで下僕君!アナエル応援してるからっ!」


 ―――自分から振っといてなんだけど、こいつ等絶対素で楽しんでるっしょ……?


 ともあれ、こうして天使達の支配領域である封鎖都市世界にて、自分のアイドル活動は幕を上げたという訳ッス。

 ついに念願のアイドルになったヴァラちゃんなのでした。次回で封鎖都市世界のお話、終幕です。


 アナエルというかハニエルについてですが、「天使」の九階級と「大天使」は別の枠組で考えた方がややこしく無くて良いかもしれませんね。ハニエルを始め複数の階級に就いている大天使も結構いますし。

 でもこの作品中では誰か何と言おうとウザ可愛天使のアナエルたん!

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