第003話 悪魔de聖女
「聖女様ー!」
「神の使徒が降臨なされた……これで魔王めの企みも潰えようぞっ」
「ヴァラたんかわええ(*´Д`)」
はぁい♪こちら何故かいきなり聖女認定されちゃったヴァラちゃんでッス。
現在大聖堂にて勇者とやらとの対面式を終え、『聖別の儀式』とか言う怪し気なモノを執り行う事となった次第ッス。
別にこんなモン今時の悪魔達にゃ効きもせんと思うけど、謎なのは何で自分が聖別を「する」側なのかって事なんスよね~。いっそこの目の前に跪く勇者とやらに魔王討伐を失敗する呪いでもかけてやろうかなんて思ったりもするんスが、別にこの勇者君個人に不満がある訳でも無いからそれも可哀想だしな~。
どうしてこんな事になってしまったのだろうか、それは今を遡る事数日前―――
「―――そんじゃお次は自分のターンッスね!【ホーリーライト】対象は闇・不死属性全員、【ディバイン・ディバイド】と【聖女の慈愛】効果により分割した聖属性の基礎威力底上げで対象全てに300%ダメージッス!」
「ちょっと待てええええっ、何で3ターンもかけて作り上げた俺の分身達を通常技であっさり全滅させてんだよっ!」
「くっそお、こっちも一撃でパーティが半壊だ……悪魔なら悪魔らしく聖職者キャラなんか使ってないで力で勝負しやがれこのクソアマ!」
「殺るか殺られるかの勝負に何甘ったれた事言ってんスか?対策を確りと練ってないお前等の自業自得じゃないの。勝てば官軍ってやつッスよ!とりゃあ~!」
「痛えええっ!?何だこのクソゲー本気で聖属性ダメージフィードバックしてきてるじゃねぇか!」
「ごぼあっ!!今日は対聖コーティング、洗濯中だったのを忘れてたぜ……無念」
いつも通り自分は死神マスターのバーで召喚掲示板を検索しながら、腐れ縁の悪魔連中とマスターが引っ張り出してきた神装遊戯っていうレトロ対戦ゲームを暇つぶしにやってたんス。
このゲーム、簡単に言うと神>魔>人の三種族によるジャンケンのような三つ巴対戦ゲームってやつッス。
出た当初は対戦中のダメージが現実にある程度フィードバックされるという斬新さが血の気の多い悪魔連中に大いにウケて一時期魔界で大流行したものッス。でもパーティの連携システムや一部の強キャラの固有能力を利用した戦術等はあるものの、悪魔達は好んで神聖属を使う奴もおらずいつしかただの魔属性同士による疑似的な殴り合いゲーと化してしまったという、不遇な扱いを受けちゃったゲームなんスよね。
その場に居合わせた飲んだくれの暇人を二人程捕まえて久々にやってみたんスが、予想通りに連中魔属性ばかりで固めてきちゃってねー。これがマスター相手なら間違いなく人間属も混ぜて来て苦戦必死だったとは思うんスけど。
「それは兎も角、そろそろ止めといくッスよ!喰らえ必殺ッ、セエエェイクリッドォ……」
「ちょっ、待っ……」
「―――ん、おいヴァラ。条件召喚の項目がHITしている様だが」
「この一撃で終わるからもうちょっとだけ待つッス!ジャッジメェェェンッッッ!!」
「ぎゃああああああ!?投了投了!俺の負けでいいからそれを止めろぉぉぉ!」
ンな事言ってももう遅いッス。技宣言しちゃったから後は発動を残すのみなんで、大人しく聖なる裁きを受けるがいいッスよ。
しかしその瞬間、自分の聖属性魔法の発動を待っていたかのように召喚門が現れ準備していた魔法諸共どっかの世界に呼び出されてしまったんス―――
「……た、た、助かったぁ」
「あれの直撃喰らってたら全治数か月コースだったな……」
「ヴァラのやつは魔界上層部でのこのゲームの第三回優勝者だからな、相手が悪かったと思って今度奴が来た時にでも何か奢ってやることだ」
「何だそりゃ。マスター知っててやらせたのかよ……」
「もう二度とアイツとはやらん!」
―――因みに、マスターは第二回と第四回の優勝者ッス。いつか必ずあの時の雪辱を……!
そして勇者と時を同じくして最も強い神力を持った者を呼び寄せるという条件に引っかかり、自分が強制召喚されたらしいッスね~。召喚には惹かれ易い悪魔の性質がちょっとばかり仇になってしまった形ッス。
んでまぁ、本来の威力を発揮出来る属性ではない聖属性変換をされたとは言え元は自分が遠慮無しに練り出した魔力を使用しての【聖なる裁き】だったもんでね。少しばかり先に召喚されたまだLv1な勇者への刺客として放たれた、イベントボス的な邪神を倒すには過剰な火力を叩き出して蒸発させちゃってねぇ。結果完全に神の使徒と勘違いされちゃって今に至るという訳なんス。
どうしたもんかねこの状況……。
「聖女様っ、これから宜しくお願いしますねっ」
うお、何この眩しい笑顔。何もかもを信頼し切った雛鳥の様な無垢な表情で……。
対する異界の勇者召喚を果たした面子は豚ともやしまみれッスね。人間ちゅーのはほんと両極端ッスよねぇ。案の定聖女の衣装を身に着けた自分をどいつもこいつも視姦してくれやがったんで、そのイメージに強制介入して剛毛と一物を追加してやったッス。半分はそれで昼食を戻してたけど、残りの半分が更に興奮していた辺りフェチ率多すぎて近い内に某一神教の神様辺りから一国丸ごと塩の柱にされたりするんじゃないか、なんて率直な感想を抱いてしまったッスよ。
「宜しくッス。自分悪魔なんで様付けも要らんし聖女なんて呼ばなくていいッスよ」
「あははっ。聖女様それあんまり面白くないよ」
面白くないと言いながらも楽し気に笑うショタっ子、もとい勇者君。結果的にはあの時死にかけていた勇者君の命を救った形になるから、伝説では本来聖女は勇者の従者的立ち位置らしいんスが今回に限ってはどうにも主従逆転しちゃってる気がしちゃってるッスね。まぁ自分は勇者なんぞを従える気は無いしただの旅の同行者って感じなんスけどねー。
「にしてもあの強制召喚術式はどうにかしてブッ壊さないとまずいッスねー」
「うん――そうだね。これ以上ボク達みたいに無理矢理呼ばれて強制的に命の危険に晒される人は出しちゃいけないよ……」
そうか。そういえばこのショタっ子、自分が喚ばれた時には邪神の一撃を受けて死にかけてたッスね。瘴気と共に刻命の呪いまで受けてたんで実際あと少し自分が喚ばれるのが遅かったら手遅れになってたかもしれないス。あの時はガタガタ震えて暫く喋る事も出来なかった位だし、余程怖かったんスねぇ。
あ、瘴気は自分の【聖なる裁き】で邪神本体と一緒に消し飛んでたし、呪いはサービスで自分が喰っといたんでもうこの子の命に別状は無いス。邪神を名乗るだけはあって中々質の良い美味い呪いだったッスねー。
とりあえず魔界に戻る前にこの国の召喚術式関連は根こそぎ潰しておくッスかね。契約も無しにほいほいと強制召喚を成り立たせてたら悪魔の商売あがったりってもんスから。元々召喚自体マイナーになりつつあるってのは置いといて。
「んー……これあの連中には内緒ッスよ?」
「何々――え?」
「表向きは今まで通り、従順なフリでもしとくッス」
勇者君の首に自分の手を翳し少しばかりの間念じる。そして数秒の後、勇者君の首にかけられていた制約の鎖が解けそのまま霧散する。
勇者君、自らの身に起きた事を俄かには理解出来なかった模様。定命の人間にゃ到底無理ッスけど自分を含む悪魔達はたまにあるこういった強制術式対策として破術の能力を持つ奴も多いんスよ。矮小な人間共に舐められんのも癪だしね。
その後感激した勇者君から抱き付かれしまい、我に返ったショタっ子が顔を真っ赤にして自分に謝る姿にゾクッときちゃったり、更に懐かれ度合が上がったりと好感度アップが目白押しだったのは言うまでもない事ッスね。
まぁ色々あったッスが、概ね問題も無く数か月後には魔王とやらを祀る邪教集団の本拠地を突き止めることが出来たッス。途中仲間になりそうな冒険者達も居なくは無かったんスけど、来る奴来る奴下心満載の軟派野郎共ばかりでねぇ……半分以上はショタ勇者の方をナンパしにかかっていたんで一度この国本気で滅んだ方が良いと思うッスね。ここまで可愛い子が女の子な訳があるまいに。
「ついに―――来たね。生きて……一緒に帰ろう、聖女様」
「あいよ~勇者君は我が身に変えても守り抜くから安心するッスよ」
「そんな哀しい事言わないでよ!聖女様も一緒に帰るんだからねっ。僕の世界の美味しいものとか、一緒に食べ歩きしたいし……」
「その意気ッスよ。それにしてもこの状況でも食べ歩きの話が出るとは、勇者君の食いしん坊は相変わらずッスねー」
「―――もぅ、聖女様の意地悪」
ハハハ、何この可愛い生物。魔王なんてほっぽっといて今直ぐこの場で食べちゃいたい位ッス。あ、自分スマート派なんで物理的な意味じゃないッスよ?頭からバリボリ喰うとか下品だし、どうせなら儚くも美しい魂を堕落させる瞬間にちゅるんっと喉越し爽やかに行きたいッス。その前提として勿論……じゅるり。
……おっと思考が有らぬ方向に脱線しちゃったッスね。そろそろラスボスとのご対面になる訳だし最後位はちょっとばかり気を引き締めるッスかね~。
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「ク、クハッ―――わ、私が死せども既に魔王召喚の条件は満たした……もう、遅い……遅いのだよ」
「そんな……聖女様っ!」
正にお約束と言える様式美を飾り事切れる邪教集団のトップ、大僧正ッス。ベタ過ぎるんで動画でも撮ってバーの飲んだくれ仲間連中に送っとこ。マスターなんかこういうB級動画大好きだから大ウケしそうッスね。
あ、そうそう魔王の召喚ッスよね。ショタ勇者君は絶望に彩られた表情をしちゃってるけど、幾ら何でも悪魔王様とかが出てくる訳じゃあるまいしまぁ何とかなるっしょ、多分きっと。最悪無理そうなのが出て来たらこの国見捨てて勇者君だけでも何処か別の世界に避難させとけば強制召喚術式も労せずブッ壊せるし、むしろそっちのが手間が省けて良いかもしれないッスね。
そんな益体もない事を考えながら心折れそうになる勇者君を後ろから両手で抱き抱え、神聖魔法もどきの各種強化とヴァラちゃん謹製の加護をかけていく。この数か月ですっかり聖女の真似事も慣れちゃったもんス。これからは聖属性にも通じる新世代悪魔ってキャッチフレーズを売りに出すッスかねー。それとも聖魔の相反する属性を抱えた厨二的悪魔の方がウケるかな?
「―――我は異界にて魔を統べる王なり、不遜にも我を呼び出した不届き者は貴様等か?」
召喚陣を中心に空間が歪み、裂けた穴の中から雷光やら魔気を伴って山羊頭の典型的なサバト系悪魔が現れたッス。
プヒッ……何コイツ、台詞が三流過ぎるんだけど。
「ってゴスマ、何やってるんスか?」
「貴様何故我の名を……なあっ!?」
よく見たらコイツ、三流悪魔のゴスマじゃないッスか。道理でボキャブラリーが不足している訳ッス。
「おやおや~?ただの悪魔が魔王を騙るのは禁止されてたッスよね~?」
「これはっ、その……へ、へへへっ。ヴァラ様ご機嫌麗しゅう」
「……大公様に密告ってやろっと」
「うわあああああっ!?勘弁してくだせぇヴァラの姉御!これ以上ペナルティ喰らったら等級すら没収になって能力が更に制限されちまう!」
このゴスマ、上にも挙げた通り最下級の三流悪魔なんスよ。素の能力も低めだから時々こうやって召喚者をだまくらかしては過剰な代償をせしめようとセコい事をやってるんス。まぁ悪魔召喚時の契約なんて多かれ少なかれそういった要素もあるし、それそのものについては前回あんな詐欺契約を結んだ自分が言えた義理じゃないッスけどね。
「さ~てどうしよっかな~?」
「姉御ォ、マジ見逃してっ!!」
正直こんな小物のセコい騙りを馬鹿正直に報告したところで自分に対してメリット無いんスよねぇ……かといって野放しにするのも問題があるし―――そうだ。
「いいッスよ」
「……へ?」
「その代わり、今此処で自分等と本気で戦うッス」
「ちょおっ、それ俺に滅びろって事っすか!?そこの人間は兎も角、姉御とまともになんか……」
「ちゃうちゃう。戦うのは勇者君、サポートは自分、ラスボスお前、オーケィ?」
そしてラスボス戦が始まったッス。これで一応周りの邪教徒達という証人が出来るから勇者君の立場も安泰だし、こんな三下悪魔でも本気を出せば人間相手なら結構なモンなんスよ。
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「……姉御の嘘吐きぃぃ、やっぱ戦ってるじゃないですかぁ!!」
「何言ってんスか、ちゃんと神槍遊戯の聖職者キャラ程度の力で魔法のみ縛りかけて相手してたじゃないの。この程度なら十分サポートの内ッスよ」
「俺、貧乏なんで対聖コーティング買えて無いんですよぉぉぉぉ……」
ゴスマは情けない叫び声を上げながら元の亜空間への歪みへと消え去っていったッス。フ、悪が滅びるは世の常ってやつッスね。
「あの、聖女様……?あの魔王、聖女様の知り合いだったり?」
「だから前から言ってたじゃないッスか。自分は悪魔だって」
「えぇええぇっ!?じゃあ、聖女で悪魔……?」
「―――面倒だしもぉそれでいいッス」
さて、魔王(騙)は倒したッス。あとのこの世界でのやり残しは―――
「勇者君。元居た世界に帰りたくはないッスか?」
「え―――か、帰りたいっ!帰れるの!?」
「さっきも言った通り自分は悪魔ッス。勇者君とは何か月かの間一緒に旅した仲ッスから、こちらの提示する条件を飲むなら特別サービスで現状の力を維持したまま、元の世界に返してやるッスよ」
「う……はい!聖女様の言う事なら何でも聞きますから!ボクを元の世界に返して下さいっ!」
勇者君、一瞬躊躇するもすぐ頷いた。てっきり即時否定するか、若しくは悩みまくって返事を先延ばしにするものとばかり思ってたッスが……。
「……良いんスか?自分は冗談じゃなしに悪魔なんスよ?」
「ボク、聖女様のこと信じてるからっ」
「―――フゥ。勇者君はどこまでも勇者君ッスね」
これで言質は取った訳だから後は似て喰おうが焼いて喰おうが自分の自由となるんスが……我欲の為に悪魔と契約を交わすような人間なら兎も角、この子は何も知らないまま一方的にこの世界の都合に振り回されて、その結果が今だしねェ。
ゴスマの様な低級悪魔じゃあるまいし、これでもこのヴァラ、悪魔としての最低限の矜持位は持ち合わせているつもりッス。情もそれなりに移っちゃってることだし……それにこの自分を信じきった無垢な心を裏切るのは、ちょっとね。
「じゃあ今から条件を提示するッス。心して聞くッスよ?」
「ごくり……」
「今から自分と一緒にこの裂け目に飛び込んで、もう良いって言う迄出た先に居るモノをひたすらに蹴り潰すッス」
「……え?」
「ほいそれでは一名様ご案内~♪あ、邪教徒の諸君。自分等は魔王との戦いで力尽きこの歪みを閉じる為に最後の力を振り絞って天へ帰るんで!その辺りの語り継ぎ宜しくッス!」
そんじゃあ亜空間の内側から裂け目を縫い縫いして、目的地に向かうッスよー。
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「おっおっおふう……そこそこ」
「あぁんもぉ大神官様ったら。こぉんなに腫れ上がちゃって……」
場所は某王国、神聖教大神殿の一室にて―――
神聖教のトップ、大神官は部下の神官とイチャついてるまっ真っ最中であったッス。
「いやぁ最近の激務で肩こりが酷くてのう。助かるわい」
「大神官様は三月程前にも勇者召喚の儀を執り行ったばかりなのですから、ご自愛下さいね?」
「おーぅ。しかしあの勇者と聖女とやら、無事邪教集団を壊滅させたは良いが以来連絡が付かんのだよな」
「よろしいではありませんか。どうせ戻ったら口封じに消すか連中の『首輪』を絞めて奴隷の如く働かせるかのどちらかだったのですし。邪教徒共と相討ちになったなら手間も省けるというものですわ―――」
「ふっふっふ。お主も悪じゃのぅ?」
「いえいえ、大神官様程では……」
現在自分等は大神殿の裏側の亜空間内部から覗き穴を通して室内の様子を観察してる最中ッス。取りあえず勇者君に人間の醜い現実と言うものを見せてやったッスよ。
「………」
「解ったッスか?ひとを信じるなんてこと迂闊に言っちゃダメッスよ、人間こそこういった悪意に塗れてるんスから」
「……うぅう、聖女様ぁ」
「男の子がこの程度でピーピー泣くんじゃねッス。それよりも、せめて仕返ししてやりたいとは思わないッスか?」
「でも、殺しちゃうのはさすがに……」
「もぉ勇者君は本当に甘ちゃんッスねー。じゃあこういうのはどうッスかね―――」
―――その日の夜、王都内の全ての王侯貴族と神聖教の幹部達の男全てが見悶える様な絶叫と共に身体の一部に大怪我を負い、以降どんな回復魔法を使っても何故かその傷を癒す事が出来ないという不気味な事件が起こったそうッス。怖い話ッスね……自分強制召喚術に関する書物や陣を消す作業に忙しかったんでちょっとその辺よく分かんないッス!
あ、因みにヴァラちゃんオリジナル、不能不治の呪いなんで人間風情にゃ解除するのは無理ッスよ?ソコ以外は普通に自然治癒も可能だし回復魔法も効くけどね。ここオフレコでヨロシクッス。
「聖女様、いえ悪魔さま。本当に有難うございますっ」
「いえいえ、勇者君も達者でやるッスよ~」
「あ、そうだ。ええとね……」
「ん?なんスか?」
「恥ずかしいからちょっと耳寄せて」
「やれやれ……」
無事勇者君を生まれた世界へと送り届け、別れの時がやってきた。勇者君、結局自分が本物の悪魔だと分かってからもずっと自分にべったりだったッスね。最後に何やら言いたい事があるみたいで自分に耳打ちしようとして―――
「―――んっ」
「……んむっ!?」
これは不意打ち過ぎて躱せなかったッス……まぁ即時に反撃を実行して足腰立たなくなるまで唇と舌を貪ってやったッスけどね。
「……っぷぅー。少年、いきなり何しやがるッスか」
「うぅう、それはこっちの台詞だよぅ……」
少年曰く、恥ずかしいけどお礼代わりにちゅっとしたかっただけだとか。少年だから許されるけどムサいオッサンとかがやったら間違いなくおまわりさん来るッスからね?
「まぁこれで本当にさよならッスね。精々長生きするッスよ、少年の魂を刈り取るのは出来るだけ後回しにしてやるッスから」
そんじゃま。最後に思わぬ報酬も頂いたし、これ以上情が移る前にとっとと退散しまスかね~。
最後位雰囲気を出そうと、ちょっとばかり浮かんでから徐々に亜空間へと身を潜めていく自分。少年はそんな自分に慌てた様子で話しかけ―――
「あのっ!ボク――いえわたしもいつか悪魔さまみたいな素敵な女になりますからっ!!また、いずれ……!」
………え?
「―――ふむ、『【玉ひゅん女】某世界にて男性の睾丸を潰し自らの拝する悪魔に収める儀式が大流行、その首謀者は自らを<<破丸嬢王>>と名乗っている。【倒錯性愛者?】』か。近頃は本当に多種多様な性癖持ちの人間が増えてんなぁ」
ここはとある魔界上層の片隅に立つくたびれたバー。そのバーのマスターがグラスを片手に魔界のゴシップ板を見ながらそんな事を呟いた。
自分はいつも通り召喚掲示板を漁りながら、それを興味なさげに聞き流す振りをしつつも内心脂汗をダラッダラに流しているところッス。
マジやべー……マスターの見た記事の通り、実はショタっ子もといロリっ子だったあの勇者君からの信仰心が物凄い勢いで今も自分に上納され続けてる真っ最中ッス。
この勢いだとあと二十年も経たない内にあの勇者君、サバト的な要素での悪魔化条件を満たしちゃうかもしれないス。しかも信仰心によるライン構築が出来た事で判明したんスが、こんな現状になっても心は無垢のままっていう。え、これもしかして潰されてる連中も自分から望んでやってたりするッスか?何それ怖い。
自分は何も視なかったし知らなかったッスだから何も悪く無いッス―――よし言い訳完了、後は知らん振りしとこ。
まぁ……もし無事に悪魔化出来たら。あの子の望み通り逢いに行ってあげるのも一興ッスかね。
とことんネタを突っ込んでみたらこうなった、後悔などしよう筈が無いっ。