第6ページ 獣都到着
「着いたぞ。ここが、獣大陸の首都と言ってもいい、獣都ライオウッドだ」
「うわぁ!」
獣都ライオウッドに着くまで、僕らは他の村には滞在しなかった。
村には宿屋というものは基本的になく、空き家に滞在することになるし、そうなると結局食事など全部自分たちでやることになるから、野宿するのも変わらないそうだ。
あいにくと宿があるような町は、ヤム村から獣都までの道にはなく、遠回りしないといけなくなるそうだ。
そうであるなら、早めに獣都へ行ってしまった方が楽ということだった。
獣都は、獣大陸の首都と言われるだけあり、大陸中から様々な人種が集まっているようだ。
それは、まさにファンタジー世界というような感じで、逆に僕のような人族はあまりいない。
鎧なんか着ている冒険者風の人たちが偶にいるくらいだ。
「さて、とりあえずは先に宿を取りに行くか」
「はい!」
今までの道中がずっとテントの野宿生活だったために、実は体のあちこちが悲鳴を上げている。
どういうわけか、疲労はあまりないのだが、敷物はしてあっても固い地面で寝ているとそうなってくるのだ。
なので獣都に来たからには安宿ではなく、少し奮発していいところに泊まると、ロアさんは旅の途中ずっと言っていた。
冒険者時代に野宿の経験はもちろんあるが、最近は野宿なんて一切していなかったため、ロアさん自身体がだるくて仕方ないそうだ。
申し訳なくなる。
というわけで、獣都に来た時は、ロアさんがいつも泊まっているという宿に行くことにした。
最高級の宿というわけではないが、それなりのランクであり、ゆっくり休めるとして高ランクの冒険者や、商人からは人気があるそうだ。
その分、空いている部屋が少ないために先に宿を取っておく。
「おや!ロアベーアさんでないかね!久しぶりだねぇいつ来たんだい!?」
宿屋に向かう途中、ロアさんは色んな人に声をかけられていた。
その度にロアさんは、懐かしいと嬉しそうに笑って話していた。
結局、昼過ぎには獣都に着いていたのに、宿屋に着いたのは、夕方となってしまった。
「これはこれは、ロアベーア様。よくおいでくださりました」
「久しぶりだな、ツェッペル」
宿で出迎えたのは、老紳士といった感じの男性で、その耳には白い狼耳がついている。
尻尾は白と黒の斑模様になっており、僕は我慢できなくなってしまい、
「さ、触ってもいいですか!?」
「ほ?」
思わずそれに手を伸ばしてしまう。
あと少し、というところで、ロアさんに抱きかかえられてしまった。
「やめろ、ケイト!」
少し恥ずかしそうにロアさんが言ってくる。
はっとして大人しくなった僕を、ロアさんはゆっくり床に降ろしてくれた。
「いいか、獣人の尻尾や耳を触るのは厳禁だ。大抵の奴は尻尾を触られることを最も嫌がるからな」
「そ、そうなんですか…」
なんと、それは大問題ではないだろうか。
僕は今無意識のうちちに手を伸ばしていた。
一種のトランス状態と言ってもいい。
これを我慢しないといけないなんて!!
「これはこれは、このような小さな人族の客様とは珍しい。ようこそ、「緑の宿り木」へ。歓迎致します」
ツェッペルさんは胸に手を当て、僕に向かって恭しく礼をしてくれる。
「ど、どうも」
どう反応していいかわからず、僕もとりあえずペコリと頭を下げる。
ツェッペルさんは頭を上げると、笑顔でこちらにどうぞと案内してくれた。
その夜は、久しぶりに美味しい食事を食べさせてもらい、明日の朝一で教会へと行くことになり、そのあとは、獣都観光をする予定。
今から楽しみだ!