第4ページ 獣大陸
バリファルファ大陸に国と言えるものはない。
種族ごとの集落や村があり、その全てを統率・管理するのが獣王のいる獣都ライオウッド。
つまりは、この大陸全土をして一つの国と言える。
この世界に大きな大陸は3つ。
獣族の住むバリファルファ。
人族の住むアルクラフト。
魔族の住むベスペリア。
バリファルファ大陸は、アルクラフト大陸よりは小さいが、広大な大地と自然を誇る。
そんな大陸で何故一つの国として機能できているのかというと、獣族が持つスペックに依る。
獣族は魔力は人族よりも少ないが、総じて圧倒的な身体能力を有する。
駆ける速度は馬と変わらず、何か伝達があれば自分で走った方が速いという程だ。
更には、この大陸全土において、魔物の被害というものが少なく、種族間同士の争いというものもあまりない。
それぞれの種族で自給自足は行われ、偶に行商が持ってくる珍しいものを買えばそれで満足。
獣族は剛毅で血気盛んである者もいるのだが、皆が仲間思いであり同族意識が強い。
争うことも無ければ、供給の必要もないため、国として機能する必要がほとんどないと言える。
一応として対面的に獣都を中心として何かあれば動くことになるのだが、滅多にないことなんだそうだ。
そんな中だからこそ、領地なんかも特には決められておらず、遥か昔に亜人種族が移り住んだのもそういった理由からだそうだ。
ロアさんのエルフや、ドワーフ、ホビット、他にもいるらしい。
ここはミレイさんのような狸人が住むヤム村。
みんなのんびりとした性格で、お前はいい場所に迷い込んだな、とロアさんに言われた。
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「ここから一番近い教会はあるにはあるが、どうせなら獣都まで行った方がいいだろうな」
「なんでですか?」
「獣都まで行けば小さいが書館もある。情報も集まりやすいし、距離もそれほどあるわけじゃない。お前にとっては都合がいいだろう」
「ふむふむ」
よくわかんないけど、ロアさんが言うならそうなんだろうな。
「わかってないな?」
「あははは」
「まったく…そういうわけだレイア。俺はこいつを獣都まで送って行く」
「ええ、気をつけてね」
「え!?でも、そんなご迷惑じゃ…」
「子どもがそんなこと気にするな。ここで何も知らんお前をほっぽり出す方が心臓に悪いわ」
無愛想に、でもどこか照れ臭そうにロアさんが言う。
僕は零れそうになる涙をこらえて、頭を下げた。
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「さて、行くか」
「はい!」
一日程しっかり休んで、僕らは獣都に向かって出発した。
昨日は、ロアさんが村を案内するついでに、旅に必要な物を用意してくれた。
何から何までお世話になりっぱなしだ。
いつかお返しできるようになればと思う。
獣都までは、徒歩での旅となる。
商団が来るのは随分先になるようで、それが来るのを待って随行していくよりも歩いた方が速いそうだ。
大丈夫か、と聞かれたが、大丈夫と答えておいた。
この世界では自転車なんてものはないんだから、足腰は鍛えるべきだろう。
レイアさんが持たせてくれたお弁当を持って、僕らは獣都に向かって歩き始めた。