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とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
七人目「荒々しく気高き走り屋」
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第40ページ スマートカウ

洞窟はそれほど奥に続いているわけではなく、すぐにスマートカウを発見することもできた。

隠れる場所もなく、堂々と歩いていくしかなかった。

横たわっていたスマートカウは僕らが近づくとフルフルと震えながらも立ち上がる。


「ボルルゥ」


精一杯の威嚇をしてくるが、スマートカウは何やら憔悴しており、僕らが何もしなくても今にも倒れてしまいそうだ。


「落ち着いて。僕らは戦いに来たんじゃないんだ」


ビギンやフェオンにはあらかじめどうしてもの場合は除き、攻撃はもちろん威嚇もしないように言ってある。

二人ともそのことは理解してくれており、それどころかどこか心配そうにスマートカウを見つめている。


「敵意はない。村から依頼があって君と話す為に来たんだ」


両手を挙げてゆっくり近づく。

スキルのおかげもあり、いつもならすぐに敵意がないのは伝わるはず。

でも、スマートカウはなかなか警戒を解いてくれなかった。


一歩一歩と近づいていき、もう一歩踏み出した瞬間に毛を逆立てて威嚇してくる。

まだこれ以上は近づけない。


「どこか悪いの?」


洞窟の中は暗く、ここからではスマートカウの詳細を観察できない。

スマートカウは茶色い毛の牛で、闘牛のような見た目をしている。

息は荒く、どこか悪いのは確かなようだ。


「あの血…怪我をしているの?」


そう問いかけると、限界がきたのかスマートカウはふらりとよろめき大きな音を立てて倒れ込む。


「大丈夫!?」


慌てて駆け寄ると、スマートカウの後ろ脚近くに矢が刺さっているのがわかった。

刺さってから日も経っているようで、矢が血止めの役割をしているとはいえかなりの血を流しているようだ。


「これが暴れていた原因なんだね」


僕は父さんからもらったアイテムバックからポーションと布を取り出す。


「少し我慢してくれる?」


目を見ながら問いかけると、すでに警戒する体力もなくなっていたスマートカウはこちらを信じてくれる気になったのかゆっくりと瞼を閉じて意思表示してくれた。


僕は刺さっている矢に手をかける。


「ビギン、押さえてて」


声をかけると、ビギンの体が一気に膨らみスマートカウの胴体を包む。

これで大きく動くことはできなくなった。


「いくよ」


声をかけ、矢を一息に引き抜く。


「モォォ!!」


スマートカウは痛みに思わず暴れるが、ビギンはその動きを完全に押しとどめてくれた。

こうしてみると、ビギンもとても強くなったことがわかる。


「効くといいんだけど…」


矢を抜くと同時に当てていた布を少し剥がしてポーションを振りかける。

このポーションは飲んでもいいし、裂傷部にかけても大丈夫な代物。

でも魔物に効くかどうかは半信半疑だ。


「よかった!」


しかし、ポーションはスマートカウにもきちんと効果があったようで、傷が癒えていく。

スマートカウは安心したのか、疲れたように眠りについた。

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