第38ページ 村の様子
依頼を受けた僕は、ビギンとフェオンだけを連れてスマートカウが暴れているという村へと来ていた。
獣都からフェオンに乗って休憩を挟みながら五日ほど駆ける。
あれからまた大きくなったフェオンは、僕くらい乗せるのは問題なさそう。
さすがに大人サイズは乗せられないけどね。
たどり着いた村は小さく、どこか元気がないように見えた。
「すみません、冒険者ギルドから依頼を受けてきたんですけど…」
村の門番をしていた男の人にそう声をかけると、初めは僕みたいな子どもが来たことにびっくりしていたけど、ひとまず村長さんの元に案内してくれることになった。
村長さんは、かなりの高齢でアギーラさんから預かった紹介状を渡すと腕を目いっぱい伸ばして読み始める。
老眼なのかもしれないけど、それで見えるなら逆に目はいいんじゃないだろうか?
「なるほど…討伐ではなく対話とな」
村長さんは目をぎろっと見開いて僕の方を見る。
若干というかかなり怖いけど、その目を見返し僕は力強く頷いた。
「必ず暴れている原因をつきとめます」
そう答えた僕に、村長さんは目を穏やかにし「よろしくお願いします」と頭を下げてくれた。
―――
村長の家を辞した僕らは、まず被害が出たという畑を見に行った。
「これはひどいね…」
そこはまるで嵐でも通ったかのようで、土は掘り返され、作物は踏みにじられていた。
片付けも大変だろうし、父さんの村で農業を手伝っていたからなんとなくわかるけど、これを元の状態に戻すにはかなりの時間がかかりそうだ。
「あれこれって…」
被害を見ていた僕は、地面に赤い点が残っていることを発見した。
これは血液だ。
村人に被害が出たとは聞いていなかったけど、誰か怪我をしたんだろうか?
「おい、お前何やってるんだ!」
とそこに村から同い年くらいの弓を背負った少年が走ってきた。
何やら焦った様子の少年は、矢を引き抜き僕に向ける。
「グルル」
「お、落ち着いて!怪しいものじゃないから!」
少年の敵意に反応して、毛を逆立て威嚇を始めたフェオンを抑えつつ、敵意がないことを表すように両手を挙げて見せる。
少年は怪訝そうにしながらも、僕に敵意がないことは伝わったようで構えていた弓矢を下した。
「ここで何してたんだ?」
「様子を見てたんだ」
「様子?見たことないやつだ。何しにこの村に来た?」
完全に何か疑われている様子に苦笑しながら僕はここに来た理由を説明する。
犬人の少年は、ケインという名前らしく村の警備をしているらしい。
この畑は彼の知り合いの畑のようで、必要以上に警戒したことを謝ってくれた。
「でもお前すげーんだな!俺と変わらない歳で仕事してるなんて!」
僕が冒険者ギルドから派遣されてきたと言ったあたりから、ケインの態度は急激に軟化した。
どうやら冒険者に憧れがあるみたいだ。
ケインからはこの村のことや被害についてを聞いた。
やっぱり怪我人は出ていないようだ。
替わりに僕は獣都についてや冒険者のことを話す。
お父さんのことを話したらびっくりしていた。
やっぱり獣大陸に住む人にとってお父さんは尊敬される存在のようだ。
僕は誇らしくなりながら話を続けるのだった。




