第36ページ 提案
「と話が逸れたね」
カルラさんがカップを机に置くと今度はティーポットが飛んできておかわりを注いだ。
カルラさん達は再度苦笑い。でもどこか面白そうにもしている。
「それで、坊やのことさ」
「はい」
「坊やの力のことはわかって貰えたと思う。それが狙われる可能性も」
「…はい」
僕は自分の能力がそんなに凄いものだとは思っていなかったけど、人から言われると自分がすごく大層な人間になったような気がする。
「坊やの覚悟を見せてもらったのさ。それ程の力を持つに足る人物なのかどうか」
ゴクリと喉が鳴る。
あの時もし退いていたら、力に相応しくないとされていたら、カルラさんの槍は僕を貫いていたのだろう。
「さっきも言ったが坊やは合格だ。私の<覇気>を受けてなお、あれだけの啖呵を切れるんだからね。私もあんたの後ろ盾の一つになってあげよう」
「あ、ありがとうございます!」
僕が頭を下げるとカルラさんは気にするなというように手を振った後、真剣な顔をした。
「だが、現実は知らないといけない。あんたがいくら魔物と仲良くなれても、他の者にとって魔物というのは恐怖の対象でしかない。この家が優しい気質だということを私達もわかったが、それで人々の恐怖は消えたりしない。守りたいなら、しっかり従魔契約を結んでおきな」
「…はい」
僕は確かに甘かったのかもしれない。
モンスターハウスが優しいことを皆が知れば、それで解決すると思ってた。
魔物に対する人々の恐怖を本当の意味で知らなかった。
「…モンスターハウス、僕は君が優しいことを知っている。それでいいと思ってた。でも、僕は間違ってたよ。君を守るためには、君の優しさを知って貰う為には、君が無害であるとまず証明しないといけない」
グモォ
「だからねモンスターハウス。僕の従魔にならない?僕の従魔になれば、僕は君のことを守ってあげれる。司教や、カルラさんも力になってくれる」
そう言って二人を見るとモンテ司教は優しげに笑い、カルラさんは楽しそうに笑って頷いてくれた。
「僕と友達にならない?」
グモォォォォォ!!
家を震わせる程の音が響き、僕とモンスターハウスの間に魔力のラインが生まれたことがわかった。
「ありがとう。今日から君はメゾン、僕の友達だ」
グモモォ
こうして僕は新しい友達を得た。
―・―・―・―・―・―
[モンスターハウス]名前〔メゾン〕ランクC
家に擬態し侵入した生物を吸収する魔物。
自身の体内となる家の中はある程度操作可能であり、部屋を増やしたり、物を動かすことも可能。
体内で生成された物は、外へ持ち出すと消滅する。
状態:従魔
性格:お人よし
スキル:擬態、体内操作、結界、擬音、自爆
―・―・―・―・―・―
…えっと、スキルの最後は見なかったことにしようかな。
「さて、これでモンスターハウスのことは落着だね。それで、後見人となったからにはやりたいことがあるんだけど、いいかい?」
「やりたい事?」
「そうさ。あんた自身はもうかなり弓に特化しちまってるし、元々運動が得意ってタイプでもない」
「うっ」
事実だけどそんなはっきり言わなくても…
「だが他の子らはそうじゃない」
そう言ってカルラさんは、僕の友達を見まわした。
皆一様に不思議そうにしている。
その中でケビンだけがいち早くカルラさんの言いたい事をわかったようだ。
「もしかして僕らを鍛えるってことかい?」
「その通り」
「なるほど…」
え、それって僕は何もせず友達に守って貰うってこと?
いや、それは…どうなんだろう…
「だが、現実問題今と変わらないだろう?」
「うっうっ」
僕がそこを指摘するともっともなご意見が返ってきた。
その通りでございます…
「さて、そういうわけで私はあんたらを鍛えたいと思う。異論はあるかい?」
「そんなものあるわけないさ」
「ガウ!」
「キュッ!」
グモォォォ
皆がそれぞれにやる気を漲らせる。
今回の件で、思うところがあったのは僕だけじゃなかったみたいだ。
「…悪いけどメゾンの相手は無理だよ」
グモッ?!
カルラさんが言い、メゾンの驚いた声が響く。
僕らはそれに笑い、ああこの日常がずっと続けばいいなと思った。
「さて、それではケイト君。次は私からの提案です」
「え?は、はい」
ずっと口を挟まず話しを見守っていたモンテ司教からの提案。
僕は思わず身構えてしまったけれど、モンテ司教はいつものように笑みを浮かべていた。




