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とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
五人目「聡明なる半馬の狩人」
29/42

第27ページ 発見

僕がスーとクロを召喚したのは、何も会いたかったからだけではない。

この二匹は、飛行能力持ちだ。

つまり、上から探すことができる。


そのつもりだったんだけど…


「木が多くて地上まで見れない…」


誤算だった…

重なるように木が生い茂っている為、地上を見ることができない。

これでは森の中に子どもたちがいても見つけられない。


とはいえ、森の周囲を見ることはできるので、スーには上空で待機してもらい、〈共有(リンク)〉で視界を共有し僕が見張ることにした。

今のとこ森の外に出たような形跡はない。


森の捜索は、ケンタウロス種のほとんど総出で行われることになった。

小さい子供や怪我を負っている人、それらの面倒を見る為に少数と、里の守りに少数を残し、他は女性も老人も全員参加だ。


この捜索隊にうちのフェオンも加わる。

フェオンの嗅覚は優秀だからね。

ちなみに僕は村で待機。

悔しいけど森に入っても足手まといにしかならないのはわかっているから。


里の人員も多いわけではないが、それでも30人以上は捜索に出る。

ただ、この森は広く、中には一人では敵わない危険な魔物もいる。

だから総出といっても何人かでグループを作らねばならず、効率がいいとは言えない。


ケンタウロス種の中でも、日ごろから狩りに出ている人たちは一流の狩人で、獲物の追跡なんかは朝飯前だけれど、同じケンタウロスとなると勝手が違う。

ケンタウロス種は日ごろから里周辺で狩りをしているし、勉強の為に子どもたちを連れて行くこともたまにある。

足跡なんかがあったとしても、それがいつのものかがわからないんだ。


捜索の指揮を執るために村に残っているホーキンスさんの所に一人のケンタウロスが駆けてきた。

その顔には焦りが浮かんでいる。


「大変だ!昨日狩りにでた奴らで、グレートベアを見た者がいる!」

「なにっ!?」


こういうときに限って厄介事は重なってしまう。

グレートベアは、一般的な熊よりも気性が荒く、体格が大きい。

ケンタウロスとはいえ子ども二人なんて目ではない。


「チッ!いつもは森の奥にいるくせにこんな時にっ!」


子どもたちがいなくなった理由は未だに不明。

けど、この里の中で連れ去られるということはまずないらしく、自ら森に入ったとしか思えない。

何故そんなことをしたかというと…


「やっぱり僕のせいなんですかね…?」

「…」


ホーキンスさんは何も言わないけど、僕が来て子どもがいなくなった。

理由として考えられるのは、僕のせいで外の世界に興味を持ったということくらい。

それならやっぱり僕のせいなのかな…


「もしそれが理由だったとしても、お前のせいではない。ケビンなんて何度森の外に出ようとしたことか」

「そうなんですか?」

「あいつは好奇心旺盛なんて言葉では表せないくらい知識欲が強くてな。実際にその目で見てみたいんだそうだ。だが…」


里の掟では森から出ることを固く禁じている。

人から受けた迫害の歴史が、そうさせた。


アオォーン


その時、どこかから狼の遠吠えが聞こえてくる。


「フェオン?」


急いでフェオンの視覚を共有。

どうやら走っている最中のようで、まるで新幹線に乗っているように風景が動く。

これが本気で走った時のウインドーウルフの視界か。

こんなときだけどちょっと感動。


いやいや、違う。

流れる風景とは別に、フェオンが向かう先、見ている光景は一つ。


小さいケンタウロスの姿。

男の子だ、確か名前はヤン。

そしてその奥。

今まさにヤンに襲いかかろうとしている大きな熊の姿。


「まずいっ!?」


と、そこに横からケンタウロスが現れて、間一髪のところでヤンを掻っ攫う。


「ケビン!」


ヤンを後ろに庇うようにケビンが槍を構えた。

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