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とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
五人目「聡明なる半馬の狩人」
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第26ページ 召喚

僕はそこから怒涛の質問攻めにあった。

答えられること、答えられないこと、色々あったけどケビンはずっと興奮している様子で、外のことを知りたくてたまらないようであった。


「改めて初めまして!僕はケビン」

「は、初めまして。ケイトです」


質問攻めがようやく終わり、やっと自己紹介をする。

やっぱりホーキンスさんの弟で24歳。

外の世界へに憧れていて、まだ人との交流があった頃から残っている文献なんかを読み漁っているけど、それでも足りないそうだ。


けれどこの隠れ里にはいくつかの掟がある。

森より外に出ないこと。

人を見たら関わらずに里に戻ること。

里のことを誰にも知られないこと。


僕は自分で里に来てしまったから例外ということになるそうだ。


もっとも、僕と直接会ってなくて僕のスキルが発動していない人からは、僕を殺すべきだという意見もあるみたいだ。

長老が反対しているから実際そんなことにはならないだろうけど、早く出た方がいいとケビンが言う。


ホーキンスさんは、その話事態は知らなかったが、そういうことになっているかもしれないとはわかっていたそうだ。

明日の朝に里を出れば問題はないだろうとのこと。


元々そのつもりであったから問題はない。

今日はゆっくり休ませてもらおう。


---


そして翌日。

事件は起きた。


「いない?」

「そうなんです!ヤンとチャーが!」


ケンタウロス種の子ども二人の姿が見えないそうだ。

朝、ヤンの親が起きた時にはもうおらず、こんなことは初めてであり、家の中や、仲のいいチャーの家に行けばそのチャーの姿もない。

どこに行ったのかと探してみたもののお世辞にも広いとは言えない里の中。

いればわかるということから、二人とも里の中にはいないということになった。


しかし、里の外。

より具体的に言うならば人避けの結界の外には子どもだけで出てはならないということになっている。

それを子どもたちもわかっているはずであった。


「おい、お前!お前がヤン達をどこかにやったんじゃないのか!?」

「そうよ!うちの子達をどこにやったのよ!?」

「落ち着け!ケイトは夜中ずっとここにいて、今お前達が訪ねてきたから起きたんだぞ!?」


そう。

いるはずの子がいなくなったことで、その原因はいつもと違うこと。

つまりは、昨日やってきたよそ者の僕に向けられた。


その疑いは当然のものであるとは思うけど、本当に心当たりはない。

ホーキンスさんが宥めてくれているけど、それで納得しているようには見えない。

だからといって僕が直接何かを言っても無駄だと思う。

無罪の証明っていうのは自分からの働きかけだと実は難しい。

だから僕は


「わかりました!僕が二人を見つけます!」


言ってしまった。


ホーキンスさんも、子どもたちの親も何言ってるんだ?って感じで見ている。

けれど、手がないわけではない。


<召喚(サモン)>スー、クロ!」


僕の前に召喚の魔法陣が現れる。

数は二つ。

一瞬光が集まり、すぐにそれは美しい鶴と、小さな黒い竜の姿になる。


「ケェ」

「キュ!」


久しぶりに、と言っても5日も経っていないけど会った二匹は、僕を発見するや否やこちらに向かって飛んできた。

特にクロはものすごいスピードで突進してきて、僕の腹部に直撃する。


「ぐふっ」


今のでHPがかなり減った気がするよ…


「クロ…大きくなった?」


村を出る時は、子犬ほどの大きさだったのが、今はもう中型犬くらいの大きさはありそうだ。

鱗もしっかりと硬くなってきている。


「キュウキュウ!」

「ぐふぅ」


ぐりぐりと頭をこすりつけてきてかわいいけど、それをする度に頭に生えている小さな角が僕のお腹にぐりぐりされる。

正直痛いなんてもんじゃないけど、置いて行ってしまった手前無理矢理離すことはしたくない。


と思っていたら、スーがクロの首元を咥えて、離してくれた。

うん、さすがスーは大人だ。


「ありがとう」

「クェ」


そう言うとスーは撫でろというように頭を摺り寄せてくる。

顔に。


「あわわわわ」


冷たい!

スーも興奮しているのかいつもしてくれている体温調節をしていない!


スーの身体は、雪山仕様なのか冷たい。

けれどそれを任意に調節できるようで、僕や人の近くにいる時は常温程度にしている。

それを今していない為に、まるで氷と触れ合っているような感覚になる。

冷たすぎる!


「わかった!わかったから!置いてってごめんよ!!」


必死に謝ると、スーはやっと離れてくれた。


「…何をやっているんだ?」


呆れたように聞いてくるホーキンスさんの言葉で僕は現状を思いだした。

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