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とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
五人目「聡明なる半馬の狩人」
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第25ページ 異種間交流

「ここはケンタウロス種の隠れ里だ。昔の魔導師が張ってくれた人は入れない結界があるはずなんだが、そのウインドーウルフによって連れて来られた君には効かなかったようだな」


警戒を解いてくれた後、村長(むらおさ)のところへ連れて行くと言われた。

そこでどうするか決められるようだ。


僕を案内してくれているケンタウロスは、ホーキンスさんと言って、想像通り村の防衛隊長であるらしい。

この村で一番強いそうだ。


だけど、このホーキンスさん以外の人は、僕に近寄ってこない。

子どもが物珍しそうにこちらに来ようとしたけど、親ケンタウロスが止めていた。

どうも人を恐れているように見える。


「人によれば我々は魔物なのだそうだ」


拳を握りしめ、悔しそうにホーキンスさんが言う。


ケンタウロス種は、人を襲って食べたりしない。

しかし、半獣半人であり体内には魔石を持つ。

人ではなく獣でもない。

魔物であるとして狩られていた歴史もあるんだそうだ。


そんな時、一人の人族の魔導師が事情を知り、保護する為にこの村に人避けの魔法をかけたのだそうだ。

ケンタウロス種はその後この森でのみ生活し、森の外へ出ることを禁じた。

故に、今でも人は恐怖の対象であるそうな。


「不思議だが、どうにも君を警戒する気にはなれないんだ」


多分だけど、スキルの効果だろうね。

誰とでも友達になれるってのは、そういうことなんでしょう。


「ついたぞ。ここが長の家だ」


ほんの少しだけ他の家よりも立派だった。

ほんの少しだけ。


「よう来ましたの。小さい客人」


村長は、お爺ちゃんケンタウロス。

もう足が弱まっているようで、横になっている。

もっとも、人の部分の上半身は起き上がっているけど。


「ここに人が来たのはかれこれ何十年ぶりかのぉ?迷ったということじゃったが、もう遅い。今日は泊っていきなされ」

「え!?いいんですか!?」


確かにもう陽が沈んできている。

けれど、村の事情からして人は歓迎されないと思っていた。

だから野営を覚悟していたのだけど。


「いいのじゃよ。お客人は、どこかあの魔導師さまに似ておるしの」


この村に結界を張ってくれた魔導師は、黒髪をしていたそうだ。

ひょっとしたら僕と同じ異世界人だったのかもしれない。


それから少し村長と他愛もない話をして、僕はホーキンスさんの家へ。

今日は彼の家に泊めてくれるそうだ。

よそ者を見張るという意味もあるのかもしれないけど、少し親睦を深めている人で僕的にはよかった。


「いっらしゃい」

「いりゃっしゃい!」


ホーキンスさんの家には、彼の奥さんと娘さんがいた。

ケンタウロス種の女性は、胸に布を巻いているだけの危ない格好をしている。

正直ドキドキしてしまう。

男性はもちろん裸だ。

いや、そういう意味だと皆下半身は裸ということになってしまうけど。


それでも、ホーキンスさんの奥さんは美人だった。

なんでも村長の娘さんらしい。

ホーキンスさんもまだ30歳という若さだった。

貫禄があるからもっと歳に見えていたんだけどね。


ケンタウロス種に床という概念はなく、地面だったけど、この世界ではこれも特に珍しいものではない。

ほとんどの家は地面で生活だ。


嬉しかったのはベッドがあったこと。

人が使うようなものでなくて、干し草のベッドだったけどこれがどういうわけか気持ちいい。

ふわっふわだ。


夕飯は、森で採れたキノコを使った汁に、ホーキンスさんが狩った鳥肉だった。

これも何かの魔物らしいけどとても美味しかった。

従魔たちの分まで出してもらってありがたい。


食事をしながら楽しく話していると、外から走り寄ってくる蹄の音が聞こえてきた。


「村の中でこんな全力疾走する奴は一人だけだ…」


と、ホーキンスさんは苦い顔をしてやれやれと首を振っている。

奥さんはそれを面白そうに見てて、娘さんも楽しそうだ。

僕は首を傾げる。


やがて、家の前で蹄の音は止ま…らず、勢いよくドアが開けられた。


「兄さん!人が来たっていうのはホントかい!?」


入って来たのはホーキンスさんより少し若い男のケンタウロスだった。

ホーキンスさんに向かって兄さんと言ったことから、おそらく弟さんなんだろう。


「本当だ。少し落ち着けケビン」

「これが落ち着いてられますか!」


ケビンは、僕の方を向いて何やら興奮している様子だ。

目をキラキラと輝かせている。


「お願い!僕に外のことを教えてくれない!?」


…はい?


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