第18ページ 交戦開始
父さんの弓が唸り、発射された矢は狙い違わずオークの頭を撃ち抜く。
同時に三頭。
え?意味がわからないって?
僕もわからない。
矢を三本、弓につがえて同時に発射。
それがそれぞれ別のオークに命中って。
うちの父さんすごすぎない?
今までも強い強いとは思っていたけど、まだまだ父さんの本気は見たことがなかったようだ。
次々とオークが討ち取られていく。
これは本当に一人で十分そうだ。
でも、異変に気付いた上位種のオークたちが、ここでようやく動き始めた。
既に半分まで減らされたオークたちだけど、ここからはそう簡単には討ち取れなさそうだ。
その光景に見入ってしまっていた僕だけど、肩を叩かれ、自分の役目を思いだす。
そうだ、僕もやることやらないと。
この時点で僕は、父さんを心配することを止めた。
あれは心配するだけ無駄だよ。
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(あそこだ)
小声で指を指す狩人に言われ見てみると、確かに扉が開いている小屋の中に、獣人の女性たちの姿が見えた。
衰弱しているのがありありとわかるその姿に、僕らは息を詰める。
同時に、早く助け出さねばという使命感が湧きあがった。
辺りにオークの影はなく、少し離れたところで戦闘の音が聞こえる。
スーの目を借りてちょっと見たけど、セーラの風で刻まれたり、父さんの矢で目を撃ち抜かれたりと、逆に可哀そうになってくる有様であった。
(チャンスだな。行くぞ)
狩人の一人が合図を出し、僕らはそれに頷き、進む。
何の問題もなく小屋の中に侵入。
生きている女性たちは全部で3人いた。
小屋の隅には、既に死んでいる人も見える。
僕は唇を噛んで目をそらす。
でも、生きている女性達も、小屋に入って来た僕らに何の反応も見せなかった。
壁を背にして座っていたり、横になっていたりする。
目の焦点があっておらず、僕らを認識できているのかも怪しい。
声をかけても反応しなかった。
だけど、触れた瞬間に「キャァァァ」と声を上げる。
そして、全力で暴れだす。
どう宥めようと収まらずに、連鎖したように他の二人もシクシクと泣き始めてしまった。
このままではまずい、と思った時。
それは来た。
「グモォォオ!」
小屋の前に一際大きく、堅固な鎧を纏ったオークの姿。
オークキングがそこにいた。
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私は疑問を感じていた。
既にオークの数は半分を下回っている。
それなのにオークキングが姿を見せないことに、だ。
逃げられた可能性もあるかと思ったが、セーラは何も言わない。
セーラには、もしオークキングが逃げるのを発見したら、それを追い仕留めてくれと言ってある。
風を介して辺りの情報を得ることのできるセーラならば容易いことだ。
「セーラ!オークキングはどこにいる!?」
俺がそう叫んだタイミングで、女の悲鳴が聞こえてきた。
そちらには、今ケイト達がいるはずだ。
マズイと思ったがどうやら遅かったようだ。
そのすぐあと、オークの咆哮が響き渡った。




