第12ページ 家へ
本日5本目です。
「驚いた。まさか、一日も経たずに契約してくるとは。お前の能力は確かにヤバい代物らしいな」
アイスヘロンと契約し、僕はそのアイスヘロンにスーと名付けた。
これで契約は完了となる。
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[アイスヘロン]名前〔スー〕ランクB
季節ごとに水場を求め大陸を渡り飛ぶに鳥形魔物。
活動するのに水が不可欠であり、体に水を溜めこむことが可能。
美しい純白の体を持ち、その翼は希少品として高値がつく。
状態:従魔
性格:優雅
スキル:飛翔、遠目、冷気操作、温度感知、
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「しかもそいつは、かなり強い個体みてーだなぁ。ふっ、これは俺より遥かにすげー従魔師になりそうだ」
言い忘れてたけど師匠は犬人だ。
獣人は総じて魔力が低いので、魔法をあまり使えない。
師匠が一体としか契約してなかったのも、複数と契約しても御しきれない可能性があったからだそうだ。
通常の従魔契約は、なるべく自分と相性のいい相手を選び、相手の力が弱くなる時を選び、相手に魔力を浸透させ契約を結ぶそうだ。
その際、魔物は従魔になるまいと抵抗することもあり、そうなると一種の闘いと言ってもいい状態になる。
師匠の相棒であったイールは、エアロタイガーというAランクの魔物で、師匠はイールと契約するだけで俺はもう疲れたんだよと苦笑している。
師匠がイールと契約したのは、まだ10代のとき。
色んな条件が重なって師匠にかなり有利であり、また契約できなければ自分が食い殺されるかもしれないという状況だったから契約がでにたのだと語っていた。
けれど、ロアさんが言うには当時Aランクの魔物と契約できる者など限られており、そのことで大陸中に師匠の名は知れ渡るほどであったという。
師匠はどこか気恥ずかしそうに、ロアさんと話す僕を見ず食事していた。
「試験は文句なく合格だ。お前のスキルがあれば相性など考えなくてもよさそうだし、お前ほどの魔力があれば多くの魔物を御せるだろう。これは餞別だ」
「これって…」
師匠がくれたのは、召喚術の指導書だった。
そこには、召喚術のことが詳しく書かれており、これを読めば召喚術が使えるようになると、師匠のお墨付きだ。
僕はありがたく貰って、頭を下げる。
「お前はこれからどうするんだ?」
ロアさんが師匠に話しかける。
師匠は、昨日よりは血色がよくなっており、昨日はぐっすりと眠れたようだ。
イールが死んだ時の夢を見て、眠れないんだよ。と昨日は泣きそうな顔で言っていた。
「人族の大陸に、魔法について教える学校がある。そこで従魔法の教鞭を取らないかと誘われたことがあるんだ。そこに行ってみようと思う」
そう言うと、ロアさんは少し心配そうな顔をした。
人族の大陸では、獣族が差別されている国もあるからだ。
「安心しろ。あの国はそんなことはない。研究者の集まりらしくてな。そんなくだらん差別に割く時間はない、と俺を誘ってくれた人は言ってたよ。それにな」
そこで師匠は言葉を切り、僕の頭にポンと手を置く。
「いつまでも沈んでたんじゃイールにも悪い。あいつは俺を庇って逝ったんだ。あいつに恥ずかしくない生き方をしねーとな」
無理してるとわかるけれど、初めて見せてくれた師匠の笑顔に、僕は胸が締め付けられるようだった。
ロアさんも同じ気持ちのようで、そうか、と一言だけ言ってからお酒を呷った。
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獣都での用はこれで済んだ。
僕らは次の日一日、師匠を含む三人で獣都を散策した。
しっかりと楽しんで、師匠に別れを告げる。
僕らは明日の朝に獣都を立つ。
師匠も、近々アルクラフト大陸に向けて出発するそうだ。
僕はなんとか泣くまいとして、失敗した。
師匠は笑いながら僕を抱き締めてくれる。
僕の師匠は、どこかやさしい匂いがした。
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「さて、帰るかケイト」
「はい!」
僕は獣都を一度振り返り、小走りで先を行くロアさんを追った。
とりあえず一区切りです。
次話からは2年飛びます。




