表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある従魔師の交遊記録  作者: 安芸紅葉
二人目「美しき氷の渡り鳥」
12/42

第10ページ 従魔法の勉強

本日3本目です。

「悪かったな。話を聞こうか」


少しして落ち着いたトーマスさんは、変わらず顔色を悪くしていたが、それでも優しそうな雰囲気を出してくれていた。


テーブル席に座りなおした僕らのところに、料理が運ばれてくる。

それを食べながら、まずはお互いの自己紹介ということになった。


「紹介する。こいつはケイト・イリス。訳あって今は私が面倒を見ている。ケイト、こっちはトーマス。私の友人で、従魔師のSランク冒険者だ」

「はっ、ルーイがいない俺はもうよくてBってところだろうよ」


ルーイというのが、亡くなったというトーマスさんの獣魔なのだろう。

その名前を出す時に、悲しそうに顔が歪んだ。


「よ、よろしくお願いします」

「ああ、よろしく。だが、さっきも言ったが従魔法の講師なら他を当たってくれ。そんな気分じゃないし、俺よりいい奴なんていくらでもいるだろうよ」

「それがそうもいかないんだ。実はな…」


ロアさんは僕の事情を説明した。

異世界人であること、僕を助けここに来た経緯、僕のスキルのこと。

そして、僕のスキルが呼ぶかもしれない脅威の話を。


僕も初めて聞く話で、うまく実感が持てなかったけどトーマスさんまで有り得ると頷いたので、急に怖くなった。


「なるほどな。ロアが信頼できると判断した相手でねぇとダメってことか」

「その通りだ。そして、私が一番信頼している従魔師はお前だ、トーマス」


トーマスさんは、見定めるように僕を見る。

僕は何故だかそうしないといけないと思って、その瞳をじーっと見つめ返した。


「ふん。いいだろう」

「ほんとかっ!」

「ああ。どうしてだかな。こいつを見ていると放っておけなくなる」

「はは、私と同じだな」


僕はその時、ある一つの考えが芽生えた。

でも、それを気づかなかったことにした。

それはとても、恐ろしい考えだったからだ。


---


「従魔法が契約魔法と呼ばれているのは知っているか?」

「はい!」


従魔法の講義は、そのもの講義で、座学だった。

ちょっとワクワクした僕の気持ちを返して欲しいけど、これはこれで楽しい。


「従魔法が契約魔法と呼ばれている理由は簡単だ。ほとんどそれだけの為のものだからだ」

「?」

「従魔法を使うのは、契約の際、それからまぁ便利な呪文もあったりはするんだが、主なのは契約だけだと思ってくれていい。ただ…」

「ただ?」

「契約はもうできてるんだよな?教えろと言われたが、具体的に何を教えればいいのかね?」


僕らの間にむなしい沈黙がおりた。


気を取り直すようにトーマス師匠は、咳払いを一つ。

そう師匠だ。


教えるにあたって、師匠と呼ぶようにと言われた。

最初は断ってたくせに結構ノリノリだ。


「契約には、相手のことを知る必要がある。そして従魔法にはそのための呪文があるんだ。それが、〈精査(チェック)〉。魔物の一部でも視界に入っていれば使えるが、見える範囲が大きいほどよくわかる。これは魔物のステータスを表示できるんだ」

「…あの師匠、その呪文は知らなかったですけど、魔物のステータスは見たことあります…」

「そうか…ま、まぁ呪文なんてものは補助にすぎないからな。従魔法のスキルを持っているなら知りたいという気持ちだけでできなくはない」


再び沈黙。


「では、次。〈看護(ケア)〉だ。これは、従魔の軽傷を治したり、体力・魔力を回復させたりすることができる。ただ、回復魔法のように大きな怪我は無理だし、相手に触れる必要がある」


試に、ビギンにやってみた。

僕の手が輝いて、呪文が正常に発動したことはわかったけど、ビギンに変化はない。

消耗してなかったから当たり前だけど。


「その次に、〈共有(リンク)〉。従魔と感覚を繋げ、視覚や、嗅覚、聴覚、触覚なんかを共有する呪文だ。これは遠隔地にいる従魔にも使えるので覚えれば便利だぞ。遠くにいる相手と従魔を使って会話をしたり、従魔の視界で相手に気づかれないよう偵察したりもできる」


こちらもビギンで試してみた。

ビギンに目はないため、どうなるのかと思っていたけど、どうやらスライムは熱によって物や人の場所を感知しているようだ。

前に見たことがあるサーモグラフィーのような見え方をしていた。


「最後が、〈召喚(サモン)〉。遠隔地にいる従魔を自分のいる場所に召喚できるようになる。だが、正直これは使い勝手が悪い。何故なら召喚している間ずっと魔力を消費し続けるからだ。お前の魔力量は聞いているが、これを使うくらいなら召喚術を覚えた方がいいな」


召喚術は、知識さえ持てば誰でも使えるようになるらしい。

従魔法で契約、召喚術で召喚。

これが、最もベストなスタイルだという。


「最後に覚えておかねばならないことがある。それは、進化についてだ」

「進化…ですか?」

「そうだ。魔物にもランクがあるが、成長するに連れて上位の魔物へと進化することがある。これは明確にどのような基準でなるのかわかっていないが、自然界でも行われていることだ。例えばスライムなら、その上位種である特殊能力つきのスライムになったりな」


経験値を集めると進化するという奴だろうか?

それは、少し面白そうかもしれない。

ビギンが大きくなったりするのかな?

それは嫌だなぁ。


「ふむ、お前はスキルのおかげで細かい契約手順やら相性やらを考えなくていいのだろう。つまり、お前に教えることはもうない!」


うん。

短い勉強会だったなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ