8.
ブックマークありがとうございます。よかったら感想ください。
改稿しました。話の流れには影響ないです。
「はい?」
この国の名前はツァディール王国だ。もう一回言うぞ?この国の名前はツァディール王国なんだよ!おいおいおいおい、誰か嘘だよ~とかドッキリ成功!とか言ってくれ。
「ははは、驚いたかな。」
え?マジで?ということは、王太子、ではないな。あり得ない。俺は第二王子の顔を知っているけどあいつより年下、か?
「え、第三王子、ですか?」
「うん、そうだよ。」
うっわ、王族でしかも直系。貴族から見て現在最高に幸せなポジションにいるわけだが、俺にとって死亡フラグでしかないこの悲しさ。胃も頭も痛い。だ、誰か代わってくれ。
「お前そういえば、従者はどうしたんだ?」
そうだよ!従者居ないじゃん。従者の騎士団への同行は公爵以上の家格にしか認められていない。一緒に居たら確実にその時点で席を立って逃げたのに。
「ああ、人混みにのまれたから置いてきたんだ。ところでさ、エドガーはどこに入るの?」
従者って基本、常に主人の側に控えてるものだよな。そんなにさらっと流していいことなのか?
「……相変わらずだな。俺は第2に入るつもりだ。」
ブラムとエドは苦虫かみつぶしたみたいな顔してるな。うん、やっぱこれが正しい反応だろ。
「とするとブラムも当然第2だよね。そっか、じゃあ僕は第1かな。」
へえ、王子は第1か。俺の進路はこれでほぼ決まったも同然だな。
「そうか、じゃあアランのことをよろしく頼む。」
「いいよ。」
ちょっと待て!
「いや俺は第1入らないから!」
『はあ!?』
仲のいい返事をありがとう。これまでずっと第1騎士団に入るって言い続けてきたやつが何言ってんだって感じだよな、うん分かるよ。でも、ひょいほいで決められると困るんだよ!今この瞬間に真面目に俺の人生がかかっているんだ。ここで言えなかったら、死亡フラグ満載の抹殺ルート一択。
「俺、第3騎士団に入るから!」
そんなん絶対に嫌だよ。回避だ回避!
「はあ?お前俺の話、聞いてたか?第3は立場悪いっつったろうが。」
「第3は諜報を主とし、貴族の不正を暴く部隊ですよ。あなたが求める分かりやすい格好良さはないですが。」
怒濤の突っ込みをちょうだいした。こっからだよな。せめてブラムは納得させないと。
「昨日から今朝にかけて人生を考え直した結果なんだ。魔物を倒すより、貴族の不正を正した方がたくさん人を助けられるし、格好いいと思ってさ。」
うう恥ずい。というか、痛い。でもこのくらいじゃないと一昨日までと違い過ぎて魔物憑きを疑われるかもしれないし、これでもギリだ。一昨日の自分がほんとに眩しい。
「ていうか君って絶気とか出来るの?第3の最低入団条件は絶気が出来ることだったと思うけど。」
絶気というのは体から常に流れ出るマナを極力抑えることで、マナのかなり精密な操作技術が必要になる……らしい。
「ああ、それは問題ないです。」
俺は気付いたら使えてたけどな!
「へえ、エドガーにくっついてる庶民はほとんど魔法が使えないって聞いたけどね。」
「それは事実だな。こいつ、自分の体から離れた所でほとんど魔力動かせないから。」
事実でも、人から言われるとカチンとくるのは何でだろう。まあ的を射ていて文句の言いようもないが。
そういう訳で騎士団に入りたかった俺はひたすら体内のマナの操作を磨いた。他人が体内外のマナの操作の訓練に費やしていた時間を一つのことに振ったのだから、チートでもなんでもなく、努力の成果だなこれは。おかげで本当に色々なことが出来るようになった。……身体強化一択だけど。前世から考えるとそれでも凄いというかやばいんだが、前世があるからこそ派手な魔法を使えないのが悔しくてならない。
「磁石のようなものですね。引き付け過ぎて外に出せない、けれどそれゆえにアランのマナの容量は貴族と比べても破格ですよ。うん、もろもろ考え合わせると第3でいいのかもしれませんね。いちばん真っ当に役に立って働けそうです。珍しくアランにしてはまともなことを言っていると思いますよ。」
と、いうことは?
「私はアランが第3騎士団に入ることに賛成です。」
よっしゃ、ブラムの賛成ゲット!