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驚くようなスピードで真っ赤な髪をした大柄な男が踏み込み、相対していた青みがかった銀の髪の男を弾き飛ばす。眩しい深紅が目を焼いて次の瞬間には銀の髪の男の後ろにあった第2騎士団の紋章が入った旗は燃やし尽くされていた。
あ、皆さんもうお分かりかもしれないけど、別に赤いやつが口に酒含んで火ぃ吹いたわけじゃないぞ。この世界、なんと魔法というなんともファンタジーな力があるんだ。
キャーッと新入団員、もとい俺の同期だろう人々がどよめく。つーかキャーって。女性も居なくはないけど半数以上男だよね。……だめだ、おっさんにはそのテンションは理解できないよ。
「あれが第1騎士団長ゼス・ウェラード第1騎士団長か。さすがだな。」
「“焔と戯れる者”と呼ばれるだけはありますね。第2騎士団副団長のルーデン・マクライド様もお強いですがウェラード様と比べると少々劣るでしょうか。」
どうも見覚えあるなあと思ってたら、花形だった二人は有名人だったみたいだ。エドとブラムは知ってたし、周りも納得したような感じでうなずいてるのが多い。
べ、別に知らなかったからって俺が無知な訳じゃないんだからね!いや、ふざけじゃなくて、マジで。
貴族は騎士団の地位高めな人々の顔知ってるかもしれないけど、普通ど田舎の平民はそんなの知らない。魔物の討伐とかやってるから知る可能性も無くはないけど、騎士団が出張るっていうのは地元の有志とか冒険者とかじゃどうにもならないヤバイ魔物が出たってことだから、あまり歓迎される事態じゃないし、滅多にないことだ。
事実、俺の記憶の中にある第1騎士団団長はたぶん先代だろう臙脂色の髪をしたナイスミドルだしな。
というかこの世界、魔法だけでなく、魔物も冒険者も冒険者ギルドも存在しているという、まあ何ともテンプレな剣と魔法の世界なんだよ。前は憧れてたような気がしなくもないけど、実際きてみると現代日本の素晴らしさがよく分かるな。命の危険ほぼないし、飯旨いし。何より、現在進行形で感じている刺すような視線がすごくうざい。身分の差って本当面倒臭いよな。
その気持ちも考えていることも記憶がよみがえってしまった今は分からなくもない。金髪に緑の瞳と薄めの藍色の髪にグレーの瞳で明らかに高位の貴族とその従者といった感じの幼馴染み二人と比べ、俺は見るからに庶民な焦げ茶の髪に焦げ茶の目だからだろう。ついでに言うなら見事に整っていてかつ男らしい、これぞ貴族のいい例なエドとも、繊細で芸術品みたいな美形のブラムとも違って俺は前世の顔をちょっと洋風に彫りを深くしたって感じだ。ええ、前世も今世もなんとも平凡ですよちくしょう。
あっと、うざったい奴らを気にしてたらなんか見逃したっぽい。ザワザワと再び同期の皆さんがゆれているけど、さっきの歓声上がってたときとはどこか違う気がする。自分の応援してたチームが負けた、みたいな空気だ。ん?第1騎士団の紋章が入った旗が折られてるな。
「第3騎士団が優勝か。」
誰かが呟くように言うのが妙に響いた。
すいません、主人公とかの見た目について一切書いてないことに気付いたんで入れました。不自然じゃなければいいんですけども。