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二発目

大陸南側の大国ニイナール

右隣り合わせのオードルフェン

大陸を代表するこの二大国家で戦争が始まったのは二百年前。きっかけは資源の取り合いだったが今では互いの意地の張り合いとなり終戦の兆しは見えない。




雀は孤児だった。


長引く戦争で働き手はみな徴兵によって戦場に連れていかれ国の労働力は減り平民の経済状況は悪化するばかりだった。そんな中で雀の母はどうにか五歳まで雀を育ててくれた。


しかし経済的にどうしようもない状況になったとき母は雀を奴隷商人に売った。僅かな硬貨を手渡され逃げるように自分の前から去って行った母を見送った。

別に母のことを恨んではいなかった。早くに夫を戦争で失い生活が苦しい中で五歳までとはいえ育ててくれたことには感謝している。

この後は自分でなんとかしなければならないのだろう。奴隷商人に連れられながらそう思った。



奴隷商人に連れていかれたものの隙をついて逃げだしスラムに入りそこで15になるまで生きてきた。生きるためにそれなりに悪事は一通りやったが好んではいなかった。

15になってスラムでも古株になったころ何となく兵士になった。スラムで生きるのも良かったが兵士になったほうが稼ぎもいいし住む場所も飯も出る。

戦場に出るのは怖いと思うことはなかった。元々毎日が死と隣り合わせだったし生きている感覚もぼんやりしたものだった。生きながら死んでいるようなものだった。

軍人学校に入りそこで武器の使い方を覚えた。どうも上下関係というものが苦手だったがそれなりに慣れた。

スラムでは強いものが上で弱ければ死ぬところだった。軍では弱くても上に居られ自分だけ安全なところにいることができた。

血筋がどうやらものを言うらしい。貴族で有ればここはなにもしなくていい。只指揮官の勉強さえしていれば。


こいつらはいつまで自分だけは安全だと思えるのだろうか。


そう思いながらそれなりに勉強して卒業した。




卒業してから三年後。何回か戦場に行った。平民上がりの兵士は大抵戦場の最前線に出される。同じ部隊に入った同期はみな死んだ。

平民ばかりの部隊だったしそんなに能力はない。戦場に出れば大抵全滅して帰って来た。数少ない同期達もみな死んでいった。


どうやら自分は軍内で嫌われているらしい。まぁ大体の理由は分かる。自分が入った部隊は戦場で皆死ぬからだろう。


別に自分が疫病神だというわけではなく。只単に経験の差だ。スラムで生き残ってきた経験が自分を戦場でも生き残らせただけだがそんなことを言っても仕方がない。


結局軍に入ってもスラムでの生活とそう大差はないな。と気づいたのは二十歳を越えたくらいのときだった。

割と平民上がりの兵士にしては長生きしているほうだろう。遂に自分が軍人学校にいた時の同期は自分を除いて全滅。新しい後輩達も来ては死にまた後輩が来ては死ぬ。を繰り返していた。



「やぁ!君が噂の平民の死神君かい?」


「どちら様でしょうか」



ある日唐突に声を掛けられた。おそらく自分よりは年上の上官。階級は曹長し自分は伍長だから二階級上の上官だった。


「僕は鴉。階級は曹長だよ。今日は君に話があって来たんだ。」


「そうですか。どのようなご用件で?」


「今度僕が隊長の小部隊を作ることになってね。その部隊の副官を君にして欲しいんだ。」


「そうですか。ではお受けします。」


「え?いいの?まだ待つよ?」


「いえ、問題ありません。」


「そう?じゃあ明後日からよろしく。」


「よろしくお願いします。」


じゃあねー。と手を振って帰った上官を見ながら荷物纏めないとな。と思った。

別に部隊が変わろうとなんだろうと結局やることは同じだから悩む必要はなかった。

本当になにも考えずに部隊の副官を受けたがこれが自分の運命を変えるとはこの時まったく思わなかった。


随分と更新遅れました。申し訳ないです

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