晴れのち雨
向こうから春桜の足音がきこえる季節になった
蝶がそよ風をあおぎ
蒲公英が高くあくびして伸びをはじめ
蘿蔔の白い肌がのぞく
まだ隣の気持ちには気づかなくて
小川の声が蝉時雨と合唱をする季節になった
大地に緑が映え
空が遠い地まで身を透かし
陽が紅く照りつける
そして桃色の心の輝きに気づいた
遠くから鈴の音が聞こえる季節になった
風が優しく草を撫で
絵に描いた蜻蛉を染めはじめ
水に哀愁の香りが漂う
それでもこの気持ちは変わらなくて
山をつくる銀風が駆ける季節になった
ダルマが手袋をはめ
目に見える息が凍るようになり
赤青緑の花が咲く
そしてこの気持ちが報われないことを知った