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酒場にて

何時も通り、適当です。

「はぁ~……満足」


 俺は心地良い満足感に自然と息を吐くと身体を弛緩させ椅子の背もたれに深く体重を預けた。


 冒険者相互扶助会の建物を出て食事を終えるまでに多少時間は過ぎた。だが、多分未だ鑑定は終わっていないだろうと推測している。なのでもう暫くは時間を潰した方が良いだろうと、俺は給仕の女性に追加で飲み物を注文する事にした。


 店内を見渡すが、今の時間は客もまばらなので席を立つべきかなどとは考慮する必要もないだろう。昼過ぎではあるがこの世の中で昼間に昼食を食べる習慣は無い。基本は2食、昼は休む間に適当につまむ程度だ。俺も昨日の夜中に依頼をこなしに出歩いてなければこの時間に食事等は取っていない。因みに冒険者はその過酷さから3食以上取ることもざらなのだが、基本日中は依頼のために走り回っている為、実は酒場の昼は暇なのである。……その為この様な状況となる。


 注文を持っていた給仕が余りの暇さに俺の席に座ってきた。その手に自分の飲み物を持ちながら。……もしかしてあれって酒か?


「いやー、全くこの時間は暇で仕方ないたらありゃしないよ」

「……俺、客なんですけどね?」

「ケチケチすんなよー、つーか顔見知りに愛想笑いとか面倒な事する身にもなって」


 そういうとだらーっとテーブルに給仕は突っ伏した。客が入ってきたら如何するつもりだ。


「お客様が来たらあんたが私に無理矢理お酌を……とか言うから大丈夫」

「いや、それだと俺が大丈夫じゃないから」

「まーまー、昔からの馴染みじゃん。冗談は軽く流せ?」

「……冗談だろうと流したら、以前本当にやった事を俺は絶対に忘れない」


 ジト目でダレた給仕を睨んでやったら、ヤツは視線を逸らした。

 こいつの名前はテヘルミナ。俺が子供の頃良く忍び込んでいた孤児院で出会った一人だ。

 運悪く院の子供達に見つかった際、調子付いて殴りかかってきたガキ大将を逆にボコボコにした直後ケラケラ笑いながら話しかけてきたのがこいつである。最初は頭おかしいんじゃないかと思ったのだが、実際は想像以上だった。事ある毎に先程の調子でおちょくられると流石に途中で性別を考える気も失せた。お陰で今でもたまに行き過ぎた時はついぶん殴ってしまう事がある。

 外見としては、酒場の給仕が務まる程度には整っている。但し中身がコレなので俺は全く興味を抱けない。


 因みに、孤児院とは信仰を広める為にある宗教団体が始めた政策の一つで、末端の穢れを知らない神の僕が運営している。まあ、中には児童買春とかさせて儲けている腐った所もあるらしいが。


「最近調子どうよ?」

「んー? 私は給仕服着てここで働いてるだけだかんねー。特に代わり映えはしないよ。孤児院にも仕送りしているし、あっちも潰れそうって話は聞かないからね」

「それは何より。俺もあそこには世話になったからなー」

「その割には私達に名前すら教えてくれないじゃない」

「あ? 俺は教えただろうが」


 俺は記憶を辿りながら、眉根をひそめた。うん、確実に言った。


「俺の記憶が確かなら確かに言ったはずだけどな」

「あんたの言った《コウノ・タケヒサ》なんて偽名を信じろってか」


 と、俺の返事に対して憮然とした表情をしながら言ってきた。ああそうか、俺は本当の事を言ったんだけどな。信じてもらえないとは残念無念。……まあ、如何でも良いか。

 そんな訳で俺「元」河野武久は、違う場所、違う時代から生まれ変わったというおぼろげな記憶を持った特異な人物である。但し、明確な何かを覚えている訳ではなく、名前もガキ大将に頭を殴られた拍子に出てきた訳だが。あの時は喉に引っかかった魚の骨が取れた様に喜んで、ついポロっと言ってしまったんだった。

 まあ、子供の時の戯言だと思ってるんだし流した方が無難だよな。

 別に何か特別な事が出来る程明確な記憶は無いし。そもそも特別とか如何でもいい。


「本当か? それは悪かったな。俺の名は《テイザー・エルサファス》だ」

「おや、あんた本名も家名持ちだったのか。しかもその文字数は結構良い所の坊ちゃん?」


 なんか急に身を乗り出しそうな勢いになったな。……本当にこいつ良い性格してやがる。


 この国では名と家名の間に入る名が多いほど高貴であるとされ、次に最後に来る家名の長さで血筋の良さを示している。因みに小文字は数に含まれない。俺の家名は5文字なので一般としての家名持ちとしてはとても多い。因みに、殆どの者は家名の所を《生まれの村》を語ることが慣習となっている。それすらない場合は捨て子となる。しかし、捨て子でも孤児院に拾われたものはその院の名を家名として用いる。


「いや、5代前の爺さんがお付の召使と逃避行して出来た家系らしくてな。俺の家自体は特に金持ちじゃない」

「ふーん」


 金持ちではないと知った途端、明らかに適当になった。しかし、もし金持ちだったら何をされたんだ?

 俺は初めて家の貧しさに有り難味を感じた。きっと俺の想像が当たった場合俺はこいつを八つ裂きにする。


「さて、そろそろ良い時間だし勘定を」

「はいよーまたよろしくー」


 

 こうして若干のストレスは感じたものの食事による満足を得た俺はもと来た方向へ歩み始める。

 ……もう二度と暇な時間はあの店には立ち寄らないと心に強く誓いながら。


 「会計でヤツの飲んでいた分まで支払わされたのはどうしてなんだろうな」


 そう軽く痛めた手を振りながら呟いた。



 因みに、デヘルミナはその日夜中まで気絶していたとか。そして起きた直後にオーナーに仕事中に酒など呑むからだとしこたま怒られたらしい。

 ほんの少し溜飲が下がった。

読んで判る通り、名前も即興ですので似たようなのがありましたらたまたまです。

あと、世界観にあわせた思考をさせるのが面倒になったので主人公にはこちらの人になって頂きました。

その内きちんと世界観が纏まったら大修正するかもしれませんが。


主人公の戦闘技術は子供の頃孤児院のガキ大将を使って磨かれました。

はたから見ると子供の喧嘩ですが、実際はアミ○が爺さんつかって暗殺拳を練習している感じでしょうか。えげつないです。


因みに、この時代の戦闘技術は勘と腕力が優れたものが勝つモノだとしております。非力な者が用いる技術もあるにはありますが普及はしておりません。

現状、その人個人の奥義みたいな状態。

騎士でもとても実力がある一部のものだけが技術は会得している感じです。


そういう風に考えると、今の世の中スゲーってなります。

が、その分この時代の人たちは身体能力が半端ないので。

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