Episode1-(8)
ほのぼの団欒話です。
物語が動くのはもう少し待っていてくださいね!
ゆっくりペースなんです。
相変わらずの文章ですが、最後までお付き合い宜しくお願いします。
少し大きめの皿と、それよりは一回り小さめに作られているシンプルな白い容器に作りたての熱いシチューを流し込む。
クリーミーなシチュー独特の匂いが鼻腔をくすぐった。
俺は、皿にシチューを入れ終えると、まだ鍋の半分程まで残っている残りのシチューを用意しておいたタッパーに移し変える。カレーを一日置くと美味しくなるというのは聞いたことがあるが、シチューを一日置くとどうなるんだろうか? という疑問を抱きつつもタッパーを冷蔵庫にしまう。
少し多めに作ったのは、明日の夕食にもう一度このシチューを出す為だ。もしかしたら、明日も母は家に帰ってこないかもしれない。
同じメニューが二日間続く事に全く抵抗は無いのだが、不亜に同じ思いをさせるのは少し気が引けた。まぁ、作っているのは俺なのだから文句は言えないだろう。
金属製のスプーンとよそりたてのシチューをテーブルに向かい合うようにして配置する。白いテーブルデスクに白い食器。味気も何も無い。
俺は、階段を上がると不亜の部屋のドアをコンコンと二回ノックする。
「不亜、ご飯出来たぞー」
「んー、分かったー。今行くー」
不亜は部屋の中からそう返事をすると、何やらゴソゴソと物音を立ててから部屋から出てきた。
気のせいか、ほんのりと顔を赤い。
いや、気のせいではなかった。俺は少し不安になり不亜の額に手を当てる。熱かどうかを見極めるためだったのだが、どうやらそれは思い過ごしのようだ。さして熱があるわけではなく、ほんのり温かいぐらいだった。俺が手を離すと、不亜の顔が余計に赤くなっていた。
「? どうした、不亜。顔赤いけど。熱は無いみたいだけど……。今日は寒かったから温かいシチューにしたんだけど、どうする?」
しかし、俺が不亜に話しかけてもポーッとしている不亜はまるで気づいていないようで反応が無い。一体、どうしたのだろうか?
「不亜? 本当に大丈夫か?」
俺がもう一度呼びかけると、不亜はやっと気づいたのか弁明を始める。
「ほぁ? え、あぁ嫌。違うんだよ!?」
「……何が?」
「あ……。と、ともかく何でもないから! 早くご飯食べよ。ほら、けいにぃも一緒に下降りるよ! シチュー冷めちゃうよ!」
「え? あ、おい……」
俺は半ば引っ張っていかれるようにして、不亜に連れて行かれる。――本当に、何があったのだろうか? 不亜が時々こういった反応をするようになったのは、昔からではない。最近というほどでもないが俺が高校生に、不亜が中学生になった頃からだ。
原因は良く分からない。
俺は不亜に連れ込まれるようにして椅子に座る。その頃には、もう普段どおりの不亜に戻っていた。さっきまでの挙動不審は感じられない。
シチューのスープを息を吹きかけて冷ましながらそっと口元へ持って行く。シチューは良く煮込んだおかげもあった、しっかりと味が出ていた。小さめに切ってあるブロッコリーやじゃがいもにもスープが良く染み込んでいる。
「美味い。どうだ不亜?」
「うん。美味しいよ。毎度の事ながらけいにぃには感謝してもしきれないよー。でも、何とかけいにぃの役に立ちたいから今日は、けいにぃのベッドで一緒に寝ても良い?」
「素直に味の感想だけ言ってくれればいい。それと、不亜が俺の部屋に来るのは負担でしか無いから提案は却下させてもらう」
「ぶー」
と、不機嫌そうに呟きながらもシチューをハフハフと食べている不亜に苦笑いしてしまう。何か、平和だなと漠然とだが感じてしまう。
不亜は本当の妹じゃないし、血も繋がってはいないけど今ではもう俺達家族にとって居なくてはならない存在になっている。忙しくて中々家に帰ってこれないけど、俺達に変わらず愛情を注いでくれる母がいて。真面目で今はもう一人暮らしを始めているけれど、頼れる憧れの存在である兄がいて。決して裕福な家庭じゃないけど、時には笑顔も溢れてて。
俺は、そんなこの家が大好きだった。
そして、これからも続いて欲しいと思う。これから色々な事があるかもしれないが、それを乗り越えていって欲しいと思う。
不亜には、少し自重して欲しいけど。
「不亜――」
「ん?」
「美味しいな」
思わず顔を綻ばせる。
「……そうだねぇ」
どっちが先だったのだろうか。二人きょとんとして顔を見合わせて、笑いあった――。
@@@
とくんっと心臓が高鳴ったのを私は感じた。
けいにぃが私の額に手を当てて、何かを計るかのように深刻そうな顔つきを見せる。でも、私にはそんな事は関係無かった。あの時はただ、けいにぃに自分を触られたという深い感慨と興奮が私の中で渦巻いていた。もちろん、今までもけいにぃと触れ合った事はある。
けど、そういうのは大抵私から手を出したりしたものだった。何とか、けいにぃの気を引こうと行動してのものだ。
でも、今回は違う。
私からじゃ無くて、けいにぃから触ってきてくれた。恐らくは、私の顔が赤いのを見て風邪かなんかと勘違いしたんだろう。決して、私が思っているような夢のような展開では無い事は確かだった。
でも、私は嬉しかった。例え、まだ私を異性として見てくれてなくても、妹として心配して貰えたことが私は嬉しかった。
夕食を食べ終えた後、一人自室のベッドの上でそんな事を思い出しながらクネクネと身体を動かして身悶える。
もしも、この状況を誰かが見ていたら確実に引かれるであろう。が、今この部屋には私以外は誰もいないのでそんな事は関係無しである。
私の部屋は女の子らしい清楚とはほとんど無縁だ。
あちこちに脱ぎ捨ててそのままにしてある服が散らかっている。ベッドの上はがさつに置かれている大量のぬいぐるみで埋め尽くされていて、私が寝るスペースも無い。
といっても、私は気にせずぬいぐるみを下敷きにして寝るんだけど。
壁には数十枚の写真がある。私の友達は、好きなアーティストや俳優の写真を貼っているらしいけど、私は違う。全部、けいにぃの写真。
好きな人を貼っても問題無いよね?
そこで私はふと、不安が頭をよぎる。
果たして、けいにぃが私を好きになってくれる日がくるのかということ。私の直感だけど、けいにぃは私の事を嫌っているという事は無いと思う。もし、嫌っているなら私の事をもっと邪険に扱っているだろうし。それは、普段のけいにぃを見ていればわかる。
でも、けいにぃは多分、私を妹として扱っているんだと思う。いや、それは間違いじゃない。だって私は事実けいにぃの妹だから。でも、血が繋がっていないんだから私がけいにぃに恋するのも自由だと思う。普通に付き合う事だって不可能じゃない。
けいにぃが、私を妹としてじゃなく一人の女の子として見てくれないとそれも全て実現しないんだけど。だから、私は絶対に振り向かせる。
「待っててね。けいにぃ。絶対、ぜーーったい私の事好きにして見せるんだから!」
私はそう言うと、手で銃の形を作って胸の前へ持っていて方目を瞑ってゆっくり標準を定める。
的は勿論、壁にかかっているけいにぃの写真だった――。
前話とは打って変わって。2900文字しかいってないです。
まぁ、ほのぼのな話なのでそこまで文字数いらないんじゃないか? と思いましたので。
では、恒例? のキャラ達のショートストーリーをお聞き下さい。
作者「はい、今回も始まりました~」
慶太「何時の間かこのコーナーが恒例になってる……」
作者「今回は特別ゲストとして、不亜ちゃんに登場して頂きます! もとい、出せと脅迫されました」
不亜「余計な事は言っちゃ駄目だよぉ~?」
作者「(llllll゜Д゜)ヒィィィィ」
慶太「不亜……馬鹿な事をしたな。作者はどんなに低脳な人種でも一応はこの小説を書いている。所謂神と言える存在なんだぞ? 逆らったらどうなるか……」
不亜「すっかり忘れてた!? どうしよう……このままじゃけいにぃが他の女の人に取られる話になっちゃう……」
作者「そ……そうだ、そうなんだぞ! 僕は神だぞ!? ていうか、慶太君もさりげなく酷い事言ったような気がする……」
慶太「気のせいだ」
不亜「そうだ。いっその事作者を――――ミンチ――磨り潰せば――それで、私が物語を書いてけいにぃを……」
慶太&作者「気のせいであってくれーーーっっ!?」