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Episode1-(7)

こんばんは。藁氏です。更新遅れてしまって申し訳ありません。来年は受験生なので、更新難しくなりそうですが必ず完結させるので、これからも宜しくお願いします。


久しぶりに4500文字突破しました。後、日に日にお気に入り登録やアクセス数が増えて嬉しいばかりです。


 その後、ラルクの助力もあって俺はひたすらモンスターを倒しまくった。巨大なネズミのようなモンスター《デッドラッド》や、何故かは知らないが液体状なのにも関わらず鎧を着ている人型のモンスター《ウォッター》等。

 何体倒したのだろうか。最初の10体辺りまでは、頭の中で数えていたが次第に戦う事に夢中になってしまって、数えるのはすっかり忘れていた。モンスターを切った時の未経験だった感触が、俺の手にまだ残っている。

 俺は、荒い呼吸を肩でしてゆっくりと背を伸ばす。長時間の戦いと緊張状態で凝り固まった身体はまるで、本物の生身の肉体のようにほぐされていく。

 つくづく、現実に忠実だなぁ。どう考えても、これがゲームの中の世界だとは思えないほどに、感覚等は精巧に感じる事ができる。

 現実だけではなくゲームの世界でも疲弊を感じるようになったという事は、現実の世界に戻ったらもっと酷い事になっている可能性がある。俺は自分のHPをチラリと横目で見る。連戦だったのでこまめに、ラルクに回復して貰っていたはずなのだが、既にHPの残りは注意を表す黄色に色が変わっていた。

 レベルはどうなっているのだろうか?

 このゲームでは一定の経験地が割り振られるのではなく、どれだけ敵にダメージを与えたかで経験地が割り振られる。

 今回は、ラルクにはサポートに回って貰っていたのでほとんどのダメージは俺が与えた。よって、経験地は俺に多く集まっているだろう。

 メインメニューを呼び出し、ステータスを確認する。

 レベルは一気に八に上がっていた。

 しかし、ステータスに変化は無い。俺はバグかと思ったがすぐにそれが仕様だと気づく。《AFO》ではステータスの割り振りが手動だったのだ。

 しかし、俺はすぐには割り振らずに今はそのままにしておくことにした。

 ラルクは俺に回復魔法を使っていたので、前線に出てないからHPこそ余裕のあるもののMPは底が尽きようとしていた。

 俺は、モンスターの《ポップ》が治まった頃合いを見計らってラルクに話しかける。

「ラルク、そろそろ止めない?」

「そうだなぁ。そういえば、今は何時なんだ? 時計を見る事が出来ないから何時間《AFO》に入りっぱなしなのかいまいち掴めないなぁ」

「確かに。そういうのを表示してくれる機能があればいいんだけど。まぁ、アップデートに期待するしかないか……」

「どうする? 今日はもうここら辺で止めておくか」

「そうだな。それじゃぁ、今日は助かったよ。また機会があれば付き合って欲しいな」

「いやいや、こちらこそ。とても充実したさ。あ、そういえばまた会う時に連絡先ぐらいは教えておいたほうがいいか?」

「連絡先か。自宅とか携帯のは無理だけど……」

 すると、俺の考えを察したのかラルクが提案を持ちかける。

「あぁ、それじゃぁフリーの捨てアドでいいさ。僕のは今教えるから後で、そこにメールを送っておいてくれるかい?」

 そういうと、ラルクはスラスラとメールアドレスを言ってきた。それは、何とも覚えやすかったので俺は労せず覚える事ができた。

「ありがとう。それじゃぁ、また今度」

「それではまた」

 俺は、ラルクに別れを告げると《AFO》からログアウトした。

 軽い頭痛に思わず顔をしかめる。

 やはり、あまりログイン状態をし続けていると疲労が溜まるようだ。ズキズキと痛む頭を押さえながらベッドからゆっくりと起き上がる。

 窓から見える外はもう既に日が落ちていた。

 慌てて時計を確認してみると、午後七時を少し過ぎたあたりだった。

 携帯を開くと、そこにはメールの受信を知らせるメッセージが表示されている。八頭かと思ったがどうやら違うようだった。

 メールは仕事中の母から。メールの内容を見る限り、今日は母は家に帰ってこられないらしい。俺は、若干落ち込みながらも、了解の意を示すメールを送った。

 俺の親は、通訳の仕事をしていてしょっちゅう家を開けている。勿論、今更それを寂しいとは思わないがやはり、親と居る時間が恋しくなってしまう。

 そのおかげなのかどうかは知らないが、俺はいわゆる反抗期を経験せずに過ぎてしまったし、晩御飯を自分で用意出来るという、何とも男子高校生らしくない特技が身についてしまった。色々と便利なのは否めないが。

 俺は、携帯を閉じて机の上に置いておく。フィールプロテクターを頭から外しベッドに投げるように置いた。確かに、これは貴重な物だがこれぐらいの衝撃で壊れるならば製品として出すべきではない。

 ゲームの世界がフィードバックしたかのように俺はゆっくりと背伸びをする。背骨や腰骨の辺りがパキパキと小気味の良い音を立てた。俺はそのまま十秒程脱力すると、重い足取りで自室を出て行く。

 閑散とした自室を出て、廊下を出る。俺の家は二階建ての一軒家で、一階は主に家族全員での共有スペースとなっている。俺の部屋は二階にあり、微かに冷たい階段を上がって突き当たりが、俺の部屋である。二階には他にも三つ部屋がある。勿論、全て個人用の部屋だ。

 一つは俺の母さんの部屋。普段から外出しているから、使用される事がほとんど無いのだがそれでも帰ってきた時にはこの部屋で寛いでいる。

 他の二つは俺の兄妹の部屋。

 兄の名前は、|《悠馬》《ゆま》で妹の名前が|《不亜》《ふあ》。兄の悠馬はもう既に大学を卒業して有名な企業に就職し、一人暮らしを始めていた、常に、何事においても優秀な兄は俺達家族にとっての自慢であり、俺にとっての憧れの存在でもあった。よっぽど会社が忙しいのか、兄が家に帰ってくるのはお盆と正月くらいで、この部屋も空き部屋というに相応しい。

 一方、妹の不亜は悠馬とはまるで正反対と言って良かった。勉強が出来ないわけでは無いが、悠馬にはもちろんの事、悠馬に憧れて必死に勉強していた俺にも若干見劣りしてしまう。勿論、不亜が俺ぐらい勉強すれば結果は変わってくるのかもしれないが、当人にその気は全く無く寧ろ成績が悪くても今が楽しければそれで良いという思考の持ち主。

 そこまでならまだいい。しかし、不亜にはもう一つ欠点がありそれが毎日俺を苛んでいる。いわゆる重度のブラコンなのだ。しかも、悠馬に対してではなく俺に対して。不亜は元々は俺の家族ではない。母と再婚した男の連れ子だった。その男は数年前にパチンコや競馬等のギャンブルで作った借金と、不亜を俺達家族に残して逃げていった。

 今思い出しても何か黒い感情が出てくるほどの下衆だった。しかし、そんな男に似ず不亜はしっかりと成長していき、今ではきちんとした人生を歩んでいる。ブラコンを除いて。

 恐らく、不亜がこうなってしまったのには俺に原因があるのだろう。当時、悠馬は受験で忙しくて不亜に構っていられなかった。そこで、次男である俺が不亜の遊び相手に抜擢されほとんど毎日不亜と遊んでいた。

 それが、何時からだったろうか。初めのうちは兄妹での遊びだったのが成長していくにつれ、何か別の感情が入っている気がしてならない。

 不亜の俺に対する認識は次第に変わっていき、義兄から男として見るようになっていた。もちろん、これは俺の憶測なのだが今では無性にそれが、不亜の本心のような気がして気が気でならない。

 最近になると、人前では自粛するものの家に二人きりが多くなるとまるで恋人同士のように、近くに座るのをせがんで来たり、やたらと甘い声を出して俺の気を誘おうとしてくる。

 流石にここまで来ると、俺も注意しなければ為らず色々と説得を試みたのだがまるで効果は無く。

 妹の言い分では、兄妹だけど血は繋がっていないのだから恋をするのは自由。らしい。

 堂々とブラコン宣言をする妹は例え義兄であっても複雑な気分だった。

 俺はキッチンで冷蔵庫から取り出した食材を並べると、手際よく野菜を切っていく。今日の夕食はシチューだ。

 一通りの手順を済ます。後はじっくりコトコト煮るだけ。俺は、手を洗って一人ソファーに座ってテレビをつける。

 妹は習い事をやっていて帰ってくるのは、三十分後位だろう。

 俺は、適当にテレビのチャンネルを回していく。

 ほとんどのチャンネルでは先日発売した話題の《AFO》やフィールプロテクターについての、ニュースが取り上げられていた。

 やはり、世界的に反響を呼んだようでほとんどチャンネルでは特番が入ってしまっている。俺は、唯一普通に放映しているドラマを見る事にした。

 画面では二人の外国人の男女が手を取り合って涙を流している。感動のクライマックスシーンなのだろうが、その前の話が分からないと只の泣いている男女である。

 俺は冷ややかな目線を送りつつも、他にすることが無いのでテレビを見る。

『お鈴! 僕はずっと君に言いたい事があったんだ。聴いてくれるかい?』

『えぇ、勿論よ五右衛門さん』

 おかしい。絶対何かが間違っている。

 俺はそんな事を思いながらも続きが気になってしまいテレビを見るのを続行する。

『僕はずっと君の事が好きだった! これからも変わらぬ愛を捧げよう。だから、僕と……』

『五右衛門さん……。――私も、ずっと貴方のことが好きでした。だから……』

『五右衛門さん!!』

『お鈴ーッ!!』

 ひしと抱き合う二人。そして、夕日をバックにして徐々に視界はフェードアウトしていき、画面に終わりのテロップが流れた。

 なんというか、話自体はありがちだったのだが細部が気になって仕方が無いドラマだった……。

 俺がテレビを消すと、まるでタイミングを見計らったかの様に玄関から声がしてきた。

「けいにぃ、ただいまー」

 妹の不亜が帰ってきたのであろう。俺は玄関まで行くと、軽く声をかける。

「お帰り。不亜」

 若干茶色がかっている髪をポニーテールにして束ねている少女。美人というよりは、幼さの残った可愛さを感じさせる顔。見間違う事も無く、妹の不亜だった。

「ふぇー。疲れたよ……」

 不亜が玄関に仰向けになる。俺は、そんな妹の姿を見て小さく溜息を吐くと、注意するつもりで少し強めに警告する。

「ほら不亜。そんなところに寝るなよ。自分の部屋行けって。あ、それと母さんは今日も帰ってこれないみたいだから。夕食は俺が作っといた」

「うー、けいにぃも大変だねぇ。あっ、そうだ……!」

 不亜がまるで、閃いたとでも言わんばかりに手をポンと叩く。

「けいにぃ、疲れ溜まってる?」

「うーん、少し溜まってるかなぁ」

 夕食を自分で作ったって事や八頭の相手をするのもそうなのだが、今日は《AFO》に長時間ログインしていたおかげで、余計に疲れが溜まっている。

「じゃぁ、そんなけいにぃの為に、不亜が癒してあげるよ?」

「そんな事だろうと思った。女の子がそんなはしたない言葉を使うな。さっさと部屋に戻って……って、うわぁ!? 怪しい動きをするな!」

 俺は上目遣いでこちらを見て、近づいてくる不亜に危険を感じて逃げるようにして素早く後ずさる。

「けいにぃの意地悪……。不亜と――――しよ?」

「しよ? じゃない! 早く部屋に戻って着替えろ! もうすぐご飯出来るから呼んだらすぐ来いよ」

「ぶー」

 俺は、玄関でうだうだとやっている不亜を一喝するとリビングのソファーに寝転がる。本当に、最近はやる事が段々高度になってきているから困り者だ。

 そろそろ、兄としては一刻も早く改善してほしいのである。といっても、俺が何を言っても不亜が考えを曲げる事はしないと思うから、本当に無駄なのだが。



どうでしたでしょうか?

今回またまた新キャラ登場でした。


兄の悠馬は忘れられていく存在なので気にしなくて良いと思います(ぇ

作者が言うのもなんですが、僕もこんな妹が欲しいです(・ω・)


慶太「人の気も知らないで何を暢気な事を……」


作者「いいじゃないか」


八頭「俺の居ないところでキャッキャウフフなんて断じて許さねぇ!」


作者「ムサい男はフェードアウトしていく予定です」


八頭「Σ( ̄ロ ̄lll)」

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