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Episode1-(6)

こんばんは。藁氏です。



「はぁっ! らああぁぁぁぁぁぁ!!」

 ラルクとパーティを組んでから30分後。俺は、初めての戦闘に四苦八苦していた。今までは、自分の右手でマウスをクリックしたり、キーボードを叩いたりするだけで、様々な魔法や技が使えたのだがどうやらこのEXMMORPGではそう簡単にはいかないようだった。

 俺が今までに、どれだけのゲームを八頭にやらされてどれだけのゲームをクリアしようと、その技術は全く持って役に立たない。

 かろうじて、基本的な知識が役に立つぐらいである。

 後は、生まれ持った自分の運動センスとどれだけこのゲームに早く順応出来るかが、恐らくはこのゲームで強くなるための鍵だろう。

 改めて目の前のモンスターに意識を集中させる。食虫植物を思わせる、というよりまんま食虫植物の姿をしたモンスター。やけにリアルな大口が、グロテスクに思える。

 表示名は《ムーヴィード》《動く雑草》。

 《ムーヴィード》の攻撃はほぼ大体が、そのツタによる触手のような遠距離攻撃。行動パターンが読めればそれをかわしながら攻撃をする事も出来るし、その触手自体を切って攻撃の手段を無くす事も出来る。しかし、それは簡単そうで難しい。

 なにせ、やるのは今まで画面の中で勝手に動いてくれていたアバターでは無く、自分自身だからだ。ましてや、このゲームを始めたての俺が最初からそんな事を出来るなんて思うのは愚の骨頂。

 俺は、なんとかその触手による遠距離攻撃をかわすので精一杯である。

 武器は、右手に握っている短剣一本のみ。ついさっき、《ムーヴィード》と戦う直前にアイテムウィンドウから、具現化させたものである。どうやら、一部の特殊なアイテムを除けばほぼ全てのアイテムは、このアイテムウィンドウにしまっておく事が出来るらしい。

 好きな時に収納、具現化する事が出来るのだ。

 そこで、俺は《ニュートラル》という短剣を取り出した。この武器は自分で買ったわけではなく、初期登録者に最初から配布されている武器らしい。

 当然、性能もそこまで高くない。

 短剣という事で、近接武器のため敵モンスターの近くまで移動しなければならないのだが――。

 《ムーヴィード》は中々、俺を近寄らせてはくれない。

 俺は、舌打ちをすると短剣を襲い来るツタの触手に切りつける。すると、僅かながらツタに裂け目が出来た。

 当然、《ムーヴィード》のHPも少し減る。

 致命傷にまでは至らないのか、減少する量は僅かのようだ。

「Kei! そいつのツタに攻撃しても大きなダメージは期待出来ない。本体を直接攻撃したほうが効率的だぞ!!」

「んなこと言われてもなぁ……」

 魔法も無い、スキルも無いじゃあ近づくのも骨が折れる。

 俺は、フッと小さく息を吐くと迫り来るツタに思いっきり短剣を突き刺す。そして、それを一気に引くと僅かな感触と共にツタが地面に落ちる。

 《ムーヴィード》は小さく奇声を上げるが、すぐにツタが切った所から再生していく。

 だが、俺はその時に生じた僅かな空白を見逃さなかった。

 すぐに間合いを詰める。もちろん、それに反応しようともう一本のツタを使って反撃してくるが、一本程度なら避ける事で対処出来る。

 俺は左に踏み込むと、襲い来るツタをかわして更に間合いを詰める。

 チラッと後ろを振り返るが、俺が切ったツタはまだ再生中。もう一本のツタはようやく俺に向かって改めて、攻撃を加えようと追ってきているが、それも間に合わない。

「はぁっ!」

 俺は短く叫んで、《ムーヴィード》の胴体の辺りを切りつける。短剣で、何度も何度も。ツタのように切断する事は出来ないので、刺す様にして。

 ようやく、ツタが俺に攻撃を当てようとしたときにはもう遅かった。《ムーヴィード》のHPは既に全部が削られて、緑色のバーは赤く染まっている。

 やがて、《ムーヴィード》の身体は無数の結晶となって散っていった。

 そして、目の前に新たなウィンドウが表示される。どうやら、《ムーヴィード》を倒した事で経験地とGoldが加算されたようだった。

 そして、まるで何事も無かったかのように、沈黙の時間は流れていく。

「やった……」

 無言を破るように俺がポツリと呟く。

 俺は、むしょうに心の奥がむずむずと疼くのを感じた。恐らくは、達成感や喜びといった感情だろう。思わずガッツポーズを作ってしまう。

 なにせ、初の戦闘だったのだ。しかも、マウスをカチカチとするだけで終わってしまうような戦闘ではなく、自分自身の身体を使っての戦闘。俺は、この興奮を抑え切れなかった。

 すると、それに便乗するようにラルクが俺に賞賛を送る。

「いやぁ、良い戦いだった! 初戦闘で、中々苦戦したところもあるようだったけど結果的には勝利だしね! 《ムーヴィード》は攻撃自体はそこまで強くないんだけど遠距離攻撃が厄介で僕も最初は苦戦したんだよ。まぁ、レベルが上がって魔法を覚えると大分楽になるけど」

「なるほどね。やっぱり、レベル上げないと苦戦するようだな」

 確かに、魔法を覚えれば遠距離からの攻撃も出来てこういう敵の対処方法も、選択肢が多くなるだろう。今の戦闘で経験地を得たが流石にレベル一でも一回の戦闘ではレベルアップは出来ないらしい。いまだ、俺のスキルや魔法は空白が続いている。

「ちなみに、僕は五回位の戦闘でレベルが上がったかな。でも、まだまだこの《AFO》には知られざる機能が隠されているからね。君は、《レーシー》だろう? もう、知っていると思うけど僕は《ヴォジャノーイ》だ。もしかしたら、種族によってレベルを上げるのに必要な経験地が異なるかもしれない」

「やっぱり、色々と機能が隠されてるみたいだな。じゃぁ、まずはその小さな疑問を解くために俺のレベル上げを手伝ってもらえるか?」

 俺がそう提案すると、ラルクはニヤリと笑って、

「もちろん!」

 と、元気良く返事をした。


どうでしたか?


初戦闘です。

あまり戦闘シーンは得意ではないのですがね...

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