Episode1-(2)
こんばんは。3話目の投稿になっています。
結構良いペースで更新出来てるんじゃないですかね……?
相変わらず拙い文章ですが宜しくお願いします!
俺がそう言うと、急に目の前が真っ暗になってしまった。いきなりの視界の変化に、思わず目を疑ってしまう。確かに自分は部屋にいたはずだったのに今いる場所はどう考えても、自分の部屋とは思えなかった。今までに味わった事の無いような不思議な感覚だった。身体が確かにあるような感触がしているのにも関わらず、眼には何も映っていない。
暫く俺が呆けたように何も言葉を発する事が出来ずにいると、いきなり大音量でファンファーレが鳴り響く。まるで、英雄の凱旋のように、優雅であると同時に雄々しさを感じさせるような、力強いファンファーレだった。
しかし、それもすぐに鳴り止み辺りは静寂に包まれる。暫くその余韻に浸っていると、急に光が見え始め、聞いたことの無い声が流れ始める。
『ようこそ! オール・ファンタジック・オンラインの世界へ! ガイド役を務める、アラウンド・ワールドだよ、宜しくね! 新規登録はもうしてくれたようだね! それじゃぁ、まずはゲーム内で使う自分自身の新たな名前をつけよう!』
突如、鳴り響いたその声に戸惑いを覚えながらも指示通りに名前をつける。右前方にはさっきまでは無かった、四角で囲まれたテキストが表示されていた。
〝指を振ると、エディタウィンドウが表示されます。表示されたら文字をタッチして名前をつけてみましょう〟
本当にそんな事が出来るのか? そう思いつつも、指を軽く振ってみる。すると、すぐに新たなウィンドウが開いた。ゲームでよく見る、ひたすらに文字が書いてあるウィンドウである。まるで、魔法のような感覚に俺は若干胸が高鳴るのを感じた。日本語表記、英語表記に対応しているらしく名前も二十文字以内と、長めの名前も可能らしい。
ただ、俺は普段やっているゲームが四文字以内なのでそれに習って、自分のお気に入りの名前をタッチして選択する。名前の慶太でも良かったのだが、オンラインという事は全世界の人が全員見ているわけで、無闇に本名を晒す事は避け、《Kei》と入力した。《終了》を選択すると、〝Keiで宜しいですか?〟
と表示され、迷わずに《はい》を選ぶ。ウィンドウは初めから無かったかのように消えてしまった。
『Keiだね! 宜しく、Kei! それじゃぁ、次は種族を選択しよう! 種族は今後のプレイにも関わってくる常用な項目だから慎重に選ぼう!』
アラウンド・ワールドの声が聞こえなくなるとまたテキストウィンドウが表示される。内容はさっきと大して変わりの無いものだった。
指を振る。しかし、今回出てきたウィンドウはさっきのエディタウィンドウとは違い、選択式のウィンドウになっていた。五つほどの種族と思われる名前が並べられている。ここから選べという事らしい。今更ながら、ちゃんと公式ホームページを読んでおけば良かったと思う。
何故なら、今表示されている種族名は俺があまり知らないマイナー、いやマイナーすぎる種族名だった。
一番上にある種族は、《ケットシー》これはギリギリ分かる。確か、獣耳が生えている猫の妖精だったはず。これは、まぁマイナーだが時々出てくるかもしれない。
次にある選択肢は、《クーシー》。いきなりだが、正直言って全く分からない。《ケットシー》と名前が似ているから、恐らくはその類であろう。
そして、《カリカンジャロス》これにいたっては名前から想像することも出来ない。
四つ目の種族は《レーシー》。例によって全く聞いたことがない。
そして、極め付けは最後の種族である、《ヴォジャノーイ》。制作会社は、ユーザーが分からない種族をわざわざ選んで、何をしようというのかが謎である。
――まぁ、吸血鬼だとかエルフだとかいう有名すぎるのもつまらないしな。その類のゲームは八頭に薦められてやったもとい強制的にやらされたし。
元々、俺はゲームにそこまで思い込みや興味は無いのだがコアゲーマーの八頭に薦められて色々とやっているうちに、いつしか友人からはゲーマーという類に入れられてしまった。ただ、あまり興味がないだけで暇な時間にゲームをする分には全く問題無い。
さて、どれを選ぼうか。正直、どれを選んでも変わらない気がする。かろうじて知っているのは《ケットシー》ぐらいなので、これを選んでも良かったのだがどうせやるなら自分が知らないような種族でもいいかもしれない。
俺は何も考えずに、《レーシー》を選択した。特に意味は無い。
すると、間髪入れずに、アラウンド・ワールドが話し出す。
『Keiは《レーシー》になるんだね! 分かった! これで、最初の登録は終わりだよ! じゃぁ、オール・ファンタジック・オンラインを楽しんできてね!』
そう言うと、目の前に光の輪が出る。恐らくは、これをくぐればゲームの世界に入れるということだろう。
「えっ!? ちょっ、キャラクターの容姿とかは……」
しかし、アラウンド・ワールドがこれ以上話す事も無く、虚しく俺の声が響くだけだった。普通は、こういう場面で自分の分身ともなるアバターを造るはずなんだけど……。もしかして、これも公式サイトに載っていたりするのか? しかし、ここで決めないとなるとどうするんだろう。ゲーム内で決めるのだろうか。
俺は、少し不思議に思いながらも光の輪を潜っていった――。
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「――ここが、ゲームの中の世界……」
俺は、目の前の光景にただただ圧巻されていた。透き通るような青い空。それに、合わせるように流れていく雲。更には、微弱ながら風も吹いている。
流れ行く、人々は皆それぞれ異なった容姿を持っていた。人間に見えなくも無いが、中には獣のような耳をつけていたり、尻尾が生えている人も居た。恐らくは、《ケットシー》や《クーシー》を選ぶとこうなるのであろう。その他にも、様々な特徴もった人間がいた。恐らくは、《ヴォジャノーイ》《カリカンジャロス》そして、俺も選んだ《レーシー》を選択した人間だろう。
街の中はそんな人々で溢れかえっている。普通に話し声も聞こえるし、容姿が若干違うという点さえ目を瞑れば、現実世界と何ら変わりの無いものだった。地面にはちゃんと感触があるし、軽く足踏みをするとリアルに音も聞こえてくる。
本当に、ここがゲームの中なのかも怪しくなってしまうな……。
しかし、ここは本当にゲームの中である。それは確かだ。何故なら、行き交う人々の上には、各々に一つづつ、HPを表すバーとMPを表すバーが表記されていた。そして、そのアバターの名前までもがデジタルのブロック体でしっかりと表記されていた。
もっと街を色々と見て回りたいという誘惑の衝動に駆られるが、何とかそれを自制させる。そろそろ、というか恐らくはもう過ぎているであろう、八頭との約束があるからだ。俺が初めにこの街にログインしたということは、八頭も例に漏れずにこの街へとログインしている事だろう。
俺は、待ち行く人々の名前に必死に目を凝らす。すると、労もせずに八頭と思われるアバターが見つかった。八頭は俺と同じでどのゲームでも、名前は統一してある。俺は他のゲームで何度も見せられた、《八岐大蛇》という名前のプレイヤーの下へと向かう。
《八岐大蛇》は首が八つある竜のような伝説上の獣で、八頭の苗字からこの獣に辿り着いて以来この名前を使っているらしい。
「八頭だろ? 悪い、待たせた」
俺は恐らく俺を待っていたのであろう、八岐大蛇こと八頭に声をかける。俺は自分で声を出しておいて少し驚いてしまった。声までもが変わっているのだ。一応、新規登録時に男で登録したはずなのだが、今自分で発した声は明らかに男には不釣合いだった。いや、普通の女子と比べれば断然に低いのだが、男子と比べるとかなり高い。
八頭は俺に気づいたのか、気さくに話しかける。
「お、その見覚えのある名前は慶太だな! やっと来た――――は?」
「――は?」
どうでしたでしょうか?
八頭は慶太の何に驚いたんでしょうかね?
といってもちゃんと読んでくれている方ならばこの先の展開は分かっているかもしれません。
これからも宜しくお願いいたします。感想もお待ちしておりますm(_ _)m