Episode1-(11)
こんばんは。藁氏です。
もっと早い時間に更新する予定でしたが、少し立て込んでしまって結局こんな時間になってしまいました。
拙い文章ですが、どうぞ最後までお付き合い宜しくお願いします。
「ちょっ!? えっ、何コイツ強すぎ! わ! うぉぉ!?」
晴れ渡るような爽快な青空の下。俺は、近くの草むらで動く雑草と戦っている友人を横目で見ながら心地よい風に当たって寝転んでいた。
右手で銀色の髪をくりくりと弄る。傍目から見ればそれは正に、地上に舞い降りた天使のような光景だろう。なにせ、中に入っているのは冴えない男子高校生でもその容姿だけはまるでお姫様のような可愛らしい顔立ちに、綺麗な銀色の髪をした美少女なのだ。
正確に言えば、一応性別は男性なので美少年なのだが。
「おぅい、慶太~! 助けてくれぇ!!」
そして、横で動く雑草のツタによる攻撃でみるみるHPが減っていく友人。《八岐大蛇》またの名を《八頭竜人》。
歴戦の戦士の風貌をしている何とも勇ましくてイカつい男なのだが、それが草のモンスターに無様にやられている様子は何とも滑稽である。既に八頭のHPは半分以上が削られているにもかかわらず、《ムーヴィード》のHPはほとんど減っていない。
俺は、寝転んだまま八頭にラルクから言われたアドバイスを伝える。
「ツタを切ってもダメージはほとんど無いから、本体を直接攻撃するのが良いと思うぞ」
「無理!!」
何とも諦めの早いヘタレ戦士である。
どうやら、八頭はこのゲームの操作が上手く出来ないらしくあたふたとやっている。現実ではスポーツは何でもこなす八頭なのだが、ゲームの世界で剣を振り回すのは苦手らしい。つまり、現実では八頭に劣る俺も、この《AFO》内では勝るという事だ。
そして、俺がまた一眠りしようと目を閉じる。
「見捨てないでくれぇ!」
八頭が情けない声で俺のほうへと逃げてくる。当然、俺はその言葉を無視するが一つの事実に気付き、うっすらと目を開ける。
すると、先程と同じように俺のほうへと逃げてくる八頭。
それに……
「うぁっ! こっち来んな馬鹿!」
八頭に攻撃された事でターゲットを八頭にしている《ムーヴィード》。当然、タッゲットされている八頭が動けばそれを追いかけてくる。そして、八頭が向かっているのは俺の寝転んでいる場所。当然、《ムーヴィード》が最終的に行き着くのも、俺が寝転んでいる場所である。
くねくねと気色の悪い動き方をする《ムーヴィード》に、その厳つい顔を存分に歪めて泣きそうになりながら逃げる戦士。
そして、遂に八頭が俺に抱き着いてくる。一応、俺は男なので抱き着かれるのはこんな男ではなく女の子のほうがいいのだが、親友が本気で困っているらしいので俺は嘆息して起き上がろうとする。
が、何故か八頭が抱き着いたまま離れない。
「おい、八頭。離してくれないとこいつ倒せないんだけど……」
「あぁ……美少女に抱き着けるなんて……。もう死んでも良いかも」
恍惚とした表情を浮かべる八頭。どうやら、最初から俺に抱きつくことが目的だったようだ。俺は、ツタを振り回しながら近づいてくる《ムーヴィード》と八頭を交互に見る。
あぁ、どっちも気色悪いなぁ。
俺は腰から短剣を取り出すと、普段よりも力を入れて握る。
「そうか。八頭。後は俺に任せておけ」
そういうと、俺は恍惚の表情を浮かべている八頭の身体に向かって短剣を突き刺した。
「ぐぼぁっ!? な、慶太……」
「死んでも良いんだろ? なら死ねよ」
ギラリと鈍く光る刃を八頭の身体に突き刺していくと、すぐに八頭のHPは無くなってしまった。先程とは打って変わって、苦悶の表情を浮かべながら結晶化していく八頭。その目は何か言いたげに俺を睨んでいたが、すぐにそれも消えていった。
「さて……」
消えてしまった八頭の変わりに俺をターゲットにしたらしい《ムーヴィード》。以前は苦戦していたが、もう何度も戦っている相手なので俺は特に焦る事も無く冷静に近づいていく。ツタが俺を挟み撃ちにしようと、両脇から伸びてくるがそれを素早い動作で切り落とす。STRが上がっているので、随分楽に切れるようになっていた。
そのまま、何も考えずに本体まで接近していく。襲い来るツタはただ切り落とすのみ。はっきりいって考えの無いゴリ押しだったのだが、ステータスが上がっている分それでもほとんど問題は無かった。
サクッという小気味の良い音を何度も響かせながら短剣を振り下ろす。
奇妙な叫び声を上げて《ムーヴィード》のHPはみるみる削られていく。
数十秒もしないうちに、HPは全て削られて八頭と同じように結晶化していった。
一人取り残されたように立つ俺。
八頭はそろそろ《ファンランタウン》に戻った頃だろうか?
しかし、俺は八頭を待たずにその場を移動する。どうせ、アイツが戻ってきてもまた馬鹿騒ぎになるだけだろうし、何よりアイツに構っていると余計な時間をくってしまう気がしたからだ。さっきの戦いからみてもあまりにも酷すぎた。
俺は八頭を置いて一人モンスターを倒す事にした。元々今の時間にログインしたのは早朝から電話をかけてきた八頭に仕返しをするためだったので、それ以上やる事は無いといってもよかった。
ログアウトしても良かったのだが、せっかく入ったので俺はもう少し適当にモンスターを倒していく事にした。
俺は新たに《ポップ》した液体状の身体に、原理は分からないが鎧を着ている人型のモンスター、《ウォッター》に狙いを定めると、それに向かって突進していった――。
@@@
「うぅ……頭が痛い…………」
結局、五時間ほどぶっ続けで俺は《AFO》にログインしていたおかげで、今は鋭い痛みが前頭部をチクチクと刺している。ベッドから起き上がった俺はフラフラとした足取りで階段を転げ落ちそうになりながら下っていく。
頭は鋭い痛みに苛まれ、朝からゲームをしていたとあって気分は最悪。おまけに、朝ごはんを食べていなかったから腹は減っている。
にも関わらず、食べたら吐きそうな気がしてしまい、食べる事が出来ない。
またしても、憎らしい八頭の顔が浮かんできてしまった。といっても、原因を突き詰めれば八頭が問題なのだが、ここまで熱中してしまったのは自分の責任でもあったので、全面的に八頭を責める事は出来なかった。
俺はこの五時間でラルクと一緒に倒したモンスターよりも遥かに多く倒している気がした。強いモンスターとは戦わずに、弱いモンスターをひたすら倒していたからだ。
経験地は少なかったが、ほとんど時間をかけずに倒す事が出来るため気軽に爽快感を味わえたのだ。
もっと強いモンスターと戦っても良かったのだが、ただ単にこういった単純な作業が好きだったので、つい熱中してしまった。
リビングに行くと、そこにはソファーで寝転んでテレビのバラエティ番組を見ている不亜がいた。
不亜は俺に気付くと、てこてこと歩み寄る。
「あ、けいにぃおはよっ!」
「……おはよう」
普通に話すだけでも鈍痛が頭に響く。
思わず、顔をしかめてしまった。
「? どうしたの? 具合悪いの?」
「いや、ちょっとな……」
「そういえば、今日はけいにぃ起きるの随分遅いよね。もう十時過ぎだよ?」
何だ、まだ十時過ぎか。余りにも早く八頭に起こされたせいで完全に体内時計が狂ってしまった。
「いやまぁ、起きる事には起きてたんだけど」
「そうなの? じゃぁ、具合が悪そうなのは?」
「それはまぁ、あれだ。朝早くからゲームをやっていたらつい熱中しちゃってな……」
「あー、だから気分悪そうなんだぁ。全くもう。朝からゲームなんかやってる暇があるんだったら、私の部屋に来てくれても良かったんだよ?」
「いやいや、おかしいだろその選択肢」
「全然おかしくないよぉ。私昨日の夜は、けいにぃの事を考えてたらつい……何でもない……」
「何だ、昨日の夜一体何が!?」
まぁ、どうせ不亜の事だし何か変な冗談を言って誤魔化すのだろう。
俺は痛みに軋む頭を押さえながら、
「じゃぁ、そういう事で俺はこれからちょっと寝てくるから……」
「私が添い寝を……」
「いらん」
「ぶー」
今更ながら不亜に話しかけなければ良かったと俺は後悔する。先程よりも明らかに頭痛の度合いが酷くなったような気がしてならなかった。
どうでしたでしょうか?
今回はほのぼのですが次回からは…………になるのでお気をつけ下さい。
では、恒例のこのコーナーに行きましょう!
作者「はい、Keiちゃんと話そう! のコーナーが本日も始まりました~」
慶太「いつの間にか題名が!? しかも、女子扱い……」
八頭「ハァハァ。Keiたん……ハァハァ……」
作者「いやぁ、流石人気が鰻上りのKeiちゃんです! 早くもファンがついたようですね~」
慶太「気持ち悪い! とっても気持ち悪い!!」
八頭「美少女に言われると2倍ショック ∑(゜□゜;)」
不亜「けいにぃ……けいにぃ……」
慶太「不亜!? お前まで変な悪霊に……って元々こんな感じだったか」
不亜「けいにぃに言われると2倍ショック ∑(゜□゜;)」
作者「置いてけぼり(´・ω・`)ショボーン」