プロローグ
なろう初投稿。執筆暦一週間にも満たない若輩者ですが、どうぞ末永くお付き合い宜しくお願いいたします。
4/6 プロローグを全く別物に変えました。既読の方には申し訳ありませんが、もう一度このプロローグを読んでから、Episode2へ読み進めてください。
ここは、ゲームだ。
目の前に広がる青い空も、俺の手足にまるで泥のようにこびり付いている真っ赤な血も、そしてこの俺自身の身体も全て、仮想上に作られた偽りの物体。
だが、それと同時にこの場所は第二の俺の世界といっても良い。
それは決して良い世界ではない。毎日目の前で日常的に、人が死んでいく。何の希望も無いまま、ただ無残に意識だけが消えていく。
今まで、そんなのは嘘だと思っていた。
周りの光景が、嘘を映し出すように。
俺は、目の前に立ちはだかる超大型モンスターを睨みつける。
「後、三発ぐらいか……?」
大型モンスターの名前は、《ギガルドラン》。大型の、巨人型モンスターだ。
その見かけと同じように、威力も威圧感も申し分無い。今までの俺だったら恐怖におののいて、その場から逃げ出しただろう。だが、俺はもうこのモンスターを目にした時から恐怖は全て無くなってしまった。正確には、無理矢理無くした。
この世界で生きるのに、恐怖などという邪魔な感情は持たない方が良い。俺は、たった数ヶ月の経験だがもうこのゲームの本質を知ってしまっていた。
いや、ゲームではない。
これは、ゲームなんていう代物ではない。ここで、HPが〇になるという事は、即ち《死》を意味する。何をしようがされようが、HPを全て無くした時点で負けなのだ。
命がけのゲーム。
それを、今正に俺は行っている。
《ギガルドラン》はその鬼畜ともいえる攻撃力を武器にして、俺に襲い掛かってくる。
が、しかしその動きは酷く緩慢で俺にはそれが止まって見えた。手に持った棍棒を俺に向かって振り下ろす。しかし、その時点で俺はその棍棒がどういう軌道を描いて俺に向かうのかがもう既に読めている。
俺は、脚に力を溜め、地面を思いっきり蹴る。
ヒュン、という動きと共に風を切って加速する。動きが緩慢でも、AIはしっかりと俺の動きに反応して、すぐに棍棒の軌道を修正する。だが、俺はそれを更に先読み。変則的な動きをして、AIの知能に隙が出来るのを待つ。
《ギガルドラン》の攻撃は一度でも食らえば致命傷だ。それ故に、いくら攻撃を予測出来ると言っても様々な不確定要素を考えた結果、こうした慎重な戦い方になる。
俺が、次々と攻撃を避ける。
プレイヤーに疲れはあってもモンスターには無い。
俺は少しづつではあるが息が上がり始める。
このまま続けば、いつか俺の動きは止まってしまうだろう。
だが、その前にモンスターを倒す。
「今……ッ!」
俺は速度を上げて一気に近づく。やはりAIも反応してくるが、さっきよりも反応が遅かった。AIにはプレイヤーの動き方を学習するという機能がある。
それをすることによってある程度の予測をするのだ。
だが、今俺にパターン等は無い。
だから、急に動いた俺にAIは追いつけなかったのだ。
走りながら、スキルを発動する。
呪文を詠唱すると、身体が鈍く光りだす。
「終わりだ!!」
呪文の詠唱により現れた、今まで使っていた短剣の代わりになる赤錆色の巨大な斧を巨人めがけて振り下ろす。
俺は真っ赤に染まった視界の先で、ズズンと音を立てて倒れる《ギガルドラン》を視覚した。
荒い呼吸でスキルを解くと、真っ赤に染まっていた視界が徐々に通常の色を取り戻していく。
既に、結晶状になって消えてしまった《ギガルドラン》がいた場所を静かに見やる。
「……帰るか」
HPはそれほど減ってはいないが、数値には表れない疲れが俺を襲った。
青い空が続く道を歩いていく。
そして、思い出す。
――全てが始まって、全てが終わったあの日を……。
プロローグ、短いですが……。
この作品に興味を持っていただけたら幸いです。