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夢
私はまどろみの中、目を覚ます。
目の前に今は静かに眠る、添え木を巻きなおした雫兄さんの姿。
確か私は夜中、すごくうなされている雫兄さんが心配になって、一晩中傍にいたんだっけ。
「この表情だけは昔から変わらないな」
少しだけ懐かしさがこみ上げる。
昔は近所に住む幼馴染だっただけに、今の兄妹と言う関係はとても奇妙だ。
「こんなに情けない兄なんか持ちたく無かったよ。兄は一人で十分だったのにな」
あのころ抱いていた「好き」と言う感情は今はもう、無い。
でもあんなことが無く、昔のままの純粋でまっすぐだった二人に戻れるのかな。
起きている時よりも人間味のある雫兄さんの寝顔を眺めていたら、私も眠くなってきた。
いいや、このまま雫の枕元で寝ちゃえ。
私はまた眠りに落ちる。
輝いていた過去に思いを馳せて。




