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虚無の旋律  作者: 東屋 篤呉
終章
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『虚無の旋律』

 終章・虚無の旋律



 ぼろぼろのただ広大なだけの屋敷の敷地、そこに赤根雫は立っていた。目の前には石を積んだだけの簡単な墓のような物が二つ。

「ずいぶんと辛気臭い顔ね、幽霊かと思ったわよ」

紫藍(きらん)?」

 紫藍(きらん)はその墓のようなものに、手にした地味な色の花束を一つずつ、捧げる。

「弔い……?」

「……自分の心の整理をつけたかっただけだ」

 周囲には低く、地面を覆うように葉を伸ばした紫色の花を咲かせている植物。その足元を見る雫の手には長い黒髪が握られていた。

「髪、切ったのね」

「ああ、もう俺の中の姉さんに頼るわけにもいかない。俺の中にいる空身はすでに落ち着いているからな」

 雫は二つの墓の間にその髪の毛をおく、その顔はまだ無表情ながらも、どこか声に穏やかさを感じさせた。

 沈黙が流れる。

「俺、行くよ」

 紫藍(きらん)は何も答えない。墓に向け手を合わせ、黙祷している。

「俺の中の空身達の心の置き場所を探しにあちこちを回る、これが俺に課せられた責任……みたいなものだと思うから」

 紫藍(きらん)の黙祷は続いている。

「どうせ再生のしすぎで早死にする運命だ、早ければ早いほうがいいと思った」

「死にそうになったらいつでも連絡しなさい」

 紫藍(きらん)は黙祷から戻るなり、雫のほうに顔を向ける。

「ひっぱたいてでも地獄から引っ張り出してやる、あの彼女を泣かせないの」

「……美紀は彼女じゃないって一年前から言い続けているはずだけどな?」

 紫藍(きらん)は明らかに不機嫌そうにする雫の額を「いいから、大切にしてやりなさい」と人差し指で小突く。

 ため息をついて荷物を手にする雫。

「しかし……お前は本当にこの花(キランソウ)と同じで『地獄の釜に蓋』だな、地獄に堕ちたいのにこれじゃあ死ぬに死ねない」

 足元の花を指さしながら小さく笑う雫に、首をかしげる紫藍(きらん)

「まあ、行くのよね……」

「ああ、行ってくる。みんなのこと、頼んだ」

「早く帰ってきなさい」

「ああ、恨み言を増やす前に、だな」

 あの日のやり取りを思い出す。自分の忘れていた思い、それは確かに不明瞭なものであったことは確かだった。でもその虚ろな想いは確かに誰かに届いていた。

 今から始まるこの旅がいつまで続くかはわからない、でも帰る場所がある限りはやり遂げるまで旅を続けよう。永遠(死ぬ)まで





 * In rhythm of oblivion *


 その思いは無為なもの

 その想いは無常なもの


 しがみ付いて悲しんで

 壊れたことに怒りを覚える


 それは確かな虚ろなもの

 人に理解はされないもの


 だけど奏でよう

 だから奏でよう


 こんな思いも誰かを動かすだろう

 こんな想いに耳を傾けてくれる人もいるだろう


 吐き出された虚ろな旋律は

 いつか己が血となる肉となる


 だからそれは虚ろなものでも

 決して虚無ではないのだろう


 消えゆく言葉は心に残ることもあるのだから


 * Out rhythm of oblivion *



はい、いまさらながらあとがきを書いています。


 まずここまで読んでくださった方々に大感謝! 本当にありがとうございます。

 完結させるさせる詐欺からはもう足を洗いました(笑)

 まあ、自分でも消化しきれていない想いとか、思想とかをぶち込みまくったのでいろいろともやもやしたところもあるので、改稿や校正、などなどいろいろやらかします。

 ところでこれを書き終えた時点で完結設定にしますが……

 できますよね? 修正作業(苦笑)


 では、最後に本当にありがとうございましたー!

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