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虚無の旋律  作者: 東屋 篤呉
第四章『夢想現会』
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7.エピローグ『現会』

「おい、美紀。一週間遅れで入学、もとい転校してくる奴がいるって本当か?」

 私こと大崎美紀は昔からの男友達の剣持大介に耳打ちされる。

「うん、本当だよ。何でも親の急な転勤で鞠池市(ここ)に引っ越してきたみたい」

「……美人姉妹だって事は本当か?」

 期待のこもった声に思わず美紀は苦笑いする。

「残念、美人『兄妹』、かな」

 大介は怪訝な表情を浮かべる

「おかしいだろ、それ」

「何言っているの! この情報屋に過ちは無い!」

 未だに納得のいかない、と言った表情の大介を何時ものうたい文句と笑顔で黙らせる。

 私のこういった『予言』は必ずあたっている、それは周知の事実だから「美紀が言うなら間違いない」とみんなが信じてくれていた。

 大介は「おかしいだろ」とぶつぶつ呟きながら自分の席に戻る。もうすぐ朝のホームルームが始まるからだ。

 チャイムが鳴る。

 私は教室の前方の扉から来る人物を三人、知っている。

 一人は担任の小野町義男(このまちよしお)先生、もう一人は腰辺りまで伸びた髪を持つ転校生の妹の赤根稲穂さん。

 そしてもう一人。私は既に会っている。

 おとといの夜、公園で出会った無表情の仮面を貼り付けた彼。

 ちょっと荒療治だけど彼の表情を崩してみるための作戦を実行するときが来た。

 引き戸が擦れる音、若く細長い小野町先生が先に入ってくる。その後入ってきた二人にクラス中が歓声を上げる。何しろ顔立ちが整っていて、なおかつどちらも華やかな美しさを持っている。このクラスの中で片方が男だと気がついているのは何人いるだろう。

 美紀は大きく息を吸って勢い良く自分の席から立つ。

「あーっ! おとといの家出女男!」

 額に青筋を作る赤根雫さん、それでもまだ無表情は崩れていない。

「そういうお前は徘徊女子高生じゃないか」

 なかなか手ごわい切返しをする雫さん。

 まあ、いきなり表情豊かになんて出来ないことも知っている。これから気長にいこう、と私は騒然としているクラスの中、赤根雫さんに睨みつけられながら立っていた。



『現会・完』


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