みんな、おなじ
「なあ、最近どうだ?」
「そうだね……僕はもうすぐこの村から出て、もっと賑やかな場所へ行くことになりそうなんだ」
「本当か? それは寂しくなるな」
「うん……でも確かに、君はずっとここから離れられないにせよ、ちゃんと将来を約束されている恵まれた身分じゃないか」
「幸か不幸か、ね。……聞くところによると、お前も頑張り次第では、俺みたいな身分になれる可能性もある、そうじゃないか」
「そのためにはもっともっと今後の努力が不可欠でね。皆にチヤホヤされる人気者になって、沢山子供をつくって幸せな家庭を築く……それが僕の、今いちばんの夢だなぁ」
「現実はそう甘くないぜ。まあ、精々頑張れよ」
「ああ。これでサヨナラだね」
そして本当に、これがあいつとの「サヨナラ」になった。
それから数年後――
「……あいつ、夢半ばにして死んだのか」
俺は、仕事の合間に横目で眺めていたTVニュースを見て、呟いた。
成程、確かにあいつは訃報が報道されるくらいの人気者にはなれた。
だがそれで、本当に幸せな生涯だったと言えるのだろうか?
「全く……俺自身が生きるためとはいえ、全然楽しくねえ仕事だし、ちっとも気持ちよくならねェ……」
あいつは、今の俺みたいな生活を夢見ていたようだが、それが本当に幸せな生活だとは限らない。
「幸せな家庭」だって? 笑わせてくれるぜ。そんなものがこの世界のどこにある?
それを、俺自身は骨身に染みてよくわかっているつもりだ。
「あいつも俺も、結局は同じ境遇に生まれながらにしてとらわれている、にすぎないんだよ……」
こんな世界に生まれてきて、本当に俺は悔いている。
それを、俺はこれから生まれてくる連中に、大声で叫んでやりたい気分でいっぱいになった。
そう思いながらも、俺はただ黙々と身体――腰を動かし続けた。
俺以上に不幸な運命を背負って生まれてくるであろう、体は残しても一切名は残せない子供達のために……。
(本文終わり。解説は下↓)
※解説
「俺」は食用馬の種馬で、「僕=あいつ」はサラブレットの若馬。
牧場が隣同士で、それで顔見知りになった関係。
「僕=あいつ」はその後競馬界のスターホースにはなれたが、どうやら競争中の事故で予後不良、になったらしい。
そして「俺」は食用馬の種馬。従って、その今後続々と生まれてくる子供達の運命は……?
〈END〉
……話に聞いた悲劇の名馬テンポイント(1973-78)の逸話が元ネタです。
だからキーワードの中に「10点」が……(分かりにくすぎるヒントだなー!)。




