紹介されました
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
「かわいいお店だね、よく来るの?」
全然想像出来ないけど……..。
たけるはちょっと、イヤずいぶんと言いにくそうに言う。
「オレん家、ココ」
えっ!?えぇ~~~~?
マジマジとたけるの顔を見たら、そんな視線には気づかないフリして、
「とにかく入ろう」
言うなり私は背中をグイグイ押されて、勢いでドアをくぐらされる。
カランカランとドアの鈴が鳴る。
突然の展開に頭も身体もついていけない私は、ズルズルとたけるに引きずられるまま、カウンターまで連れていかれた。
「紹介するよ、オレの父と母」
顔を上げたら、たけるそっくりの顔があった。
たけるってば思いっきりお父さん似だわ。
それにお母さんはとても優しそうな人。
「こっちが話してた小倉麻子さんね」
「初めまして、小倉麻子です」
ペコリと頭を下げて、これだけ言うのが精一杯だった。
後から考えると、よく挨拶が出来たものだと私は思う。
「ゆっくりしていってね」
たけるのお母さんが優しい笑顔でそう言う。
私はまた、いつ倒れてもおかしくないくらいに動揺している。
たけるはそんな私の状態を分かっているのかいないのか、とりあえず一番奥の席へと私を座らせた。
「麻子、嫌いなものある?あーそう、じゃあメニュー任せちゃっていい?あの人たちに」
と、たけるの指はカウンターを指している。
私が頷くのを見て、たけるはカウンターへと消えていった。
少しの時間の後、戻ってきたたけるの手には、オレンジジュースが2つ。
ハイってグラスを渡してくれるたけるに、私は、
「もぉ、ヒドイよぉ。先に言ってくれればよかったのに……」
ブツブツと、言いながら拗ねてみせる。
「ゴメン、先に言うと麻子は、行かないって言うと思ったから」
あら、お見通しなの?
絶対また次の機会にとか言っただろうなぁ、でもさ…..。
「でもね、心の準備ってものが…….」
「何?また気絶しそうだって?」
たけるはイジワルな笑顔をしている。
膨れてやる、拗ねてやるぅ。
私が黙ったまま俯いたら、なぜかたけるが焦り出した。
「うわ、ゴメン。コレやるから機嫌直せ」
そう言って、私の目の前に差し出されたのは、水族館でたけるが買っていたらしい小さな包みだ。
「…..私にくれるの?」
不思議そうに首を傾げる私に、
「あたりまえ。そのために買ったんだから」
開けてみなよ、と促すたける。
たけるの手から受け取った包みをキレイに開けた瞬間、私はたけるの顔を見た。
私の瞳にはニコニコ顔のたけるが映る。
小さな包みの中には、小さな銀色のイルカのペンダントが入っていたのだ。
「してごらん、あっ貸してオレがしてあげるから」
私の手からそれを取り、たけるは私の首に両手を回しつけてくれる。
この時の私の心臓は破裂寸前だったことは言うまでもない……。
「よかった、似合ってる」
面と向かってそんなこと言われたら、照れる。
しかももう、外せないかも…..。
なんだかこんなに幸せでいいのかな?
それともやっぱりコレも夢なのかな?
「たけるくん、あの、ありがとう」
たけるは私の頭をくしゃっとする。
これってクセなのかな?
私がぼんやりそんなことを思っていると、たけるを呼ぶ声が耳に飛びこんできた。
待ってて、とカウンターへと消えていくたけるの後ろ姿を私は見つめている。
2人分のランチを手にして、たけるが戻ってくる。
「はい、コレ。うちの自慢の一品だよ」
と言って、皿を一つ渡してくれる。
私に手渡した中身はクリーム?スパゲティみたいな感じ。
たける自身の方はミートソース大盛り、という感じ。
「冷めないうちに食べなよ」
言うなりすごい勢いでたけるは食べ始める。
「いただきます」
フォークにくるくる巻きつける……..巻きつかない…..。
不器用という言葉は私のためにあるに違いない、と思うほどいつまでたっても上手くいかない。
たけるは優しく見ている、というよりは見守っていると言ったほうが近い感じの瞳を私に向けている。
食べることで精一杯の私はそんなたけるに気づくはずもない。
「あっおいしい」
一口食べた直後の感想だ。
何とも言えない絶妙なおいしさが口の中に広がる。
私はスパゲティ相手に悪戦苦闘しながら、何とか食べ終わった頃には、たけるは当然食べ終わっていた。
「麻子、まだ時間大丈夫か?」
時計の針は15時を少し過ぎただけだった。
「うん、まだ平気」
「じゃあ、家寄っていけよ。ここの2階だから」
「えっ!?でも……」
初めて来たのに、それはちょっと…….。
戸惑う私を見て、たけるはこんなことを言う。
「もしかしてあの人たちのこと気にしてる?それなら大丈夫。あの人たちのご要望でもあるから」
「えぇぇぇっ!?なんで!?」
私のそんな驚きに、たけるはいやぁな顔をひとつして、
「つまり、オレが女の子連れてくるの初めてだからだろ?」
と、横を向いてしまう。
「う、そでしょっ!?だってたけるくんメチャクチャモテるのに….」
なんかすごく意外なカンジ…..。
「まっ、人には色々と好みがあるからムズかしいんだよね」
んっ!?どういう意味だろう!?
首を傾げる私をよそに、
「とにかく2階行こーゼ」
と、手を引いて歩くたけるの後ろをチョコチョコとついて歩く。
途中、たけるの両親に挨拶も忘れない。
初めて入った男の子の部屋は私に、
"どこか違う世界に迷いこんでしまった"
そんな錯覚さえ覚えさせる。
「その辺に座んなよ、汚い部屋だけど」
と言うけど、たけるの部屋は全然キレイに片付いている。
何となく、落ち着かない私は、借りてきた猫のようにチョコンと座る。
あまり褒められたことじゃないのだけれど、私は部屋をキョロキョロと見まわしていた。
女の子の部屋なんかと全然違って、たくさんのモノで溢れている。
例えば、小さなバスケゴールだったり、天球儀に月球儀だったり、パソコンにTVゲーム、それに壁一面に並べられた本だったり……。
「すごいね、壁の本」
たけるはちょっと得意げに、だろ!?と、唇の端をニッと上げた。
コンコン。
と、部屋のドアが突然鳴って、
「開けるわよ」
とお母さんの声が聞こえた。
「はい、ケーキセット。麻子ちゃんゆっくりしていってね。こんな子だけど仲良くしてやってね」
その言葉にたけるは、
「こんな子はないだろ?こんな子はっ」
と、今まで想像していたたけるとは少し違うたけるを発見する。
嬉しくてかわいくて、くすくす私が笑うと、
「何笑ってんだよっ、おまえは」
と、おでこを小突く。
あっ、今おまえって言った。ちょっと嬉しい。
そんなことで幸せになれる私が、とても私らしかった。
「何やってるのよ、たける。かわいそうじゃない、麻子ちゃんが」
小突かれた私へお母さんの助け船である。
「もぉ、早く店に戻れよ、行っちゃって下さいっっ」
たけるもお母さんには敵わないらしい。
お母さんは肩をすくめて、部屋を出ていった。
「ゴメンな、あんな母親で」
「ううん、かわいいたけるくん見れてちょっと得したかも」
また、睨まれちゃうかな?こんなこと言ったら。
私の予想に反して、たけるは思いっきり脱力していた。
それから数時間、たけると色々な話をして、少しずつでもお互いのことが理解できるように、それが今の2人の思いだった。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




