先客がいました
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
「もぉ、みんな私のことイジるのが生きがいみたいだからなぁ」
ブツブツ独り言を言いながら、図書室のドアをくぐった。
いつものことだけど、人のほとんどいない図書室だ。
市立図書館にもないような、いい本がたくさんあるのにもったいないなぁ。
私はそんなことをぼんやり思いながら、前回来た時に目をつけておいた本を手に取り、
いつもの場所 ―窓際だけど、少し奥にあって一般の閲覧席とは隔離されてる気分になれて、その上椅子が三つしかない、とても静かな席― へと向かった。
そこには、先客がいた。
珍しい、人がいる。でも、どうしよう!?
ここが一番落ち着いて読めるんだけど……。
先客は男の人だ、よく見ると、本は開かれているだけでページはめくられてはいない。
下を向いていてどんな人なのかはわからない、でもなんか寝てるみたい。
それなら私がここで本を読んだからといって邪魔にはならないだろう。
勝手にそう解釈して、その人の向かい側の席に座り本を開いた。
私は本を読み始めると周りのことが一切目に入らなくなる。
今日もそうだった。
ページが進むにつれ、どんどん主人公に感情移入してしまうのだ。
そう、外界の音も聞こえないくらいに…..。
初めはそれにまったく気づかなかった。
だから突然、ホントに突然響いた笑い声に驚いて顔を上げた。
私は一瞬で現実に引き戻されたため、
ここがどこだったとか、
何が起きたとか、
そんなことが全然分からなくて、
俯いて笑っている目の前の人を見て、
ここが図書室であることと、
この人はここで眠っていた人だということに気がついた。
どうして眠っていたはずのこの人が、笑っているのかなんて私に分かるハズもなく、なんだろう?と首を傾げる私に気がついたのか、その人は笑いながら顔を上げた。
ナントイウコトダロウ!?
ドウユウコトナンダロウ!?
何で!?
何度瞬きをを繰り返しても、瞳に映っているのは確かに憧れの人、黒坂たけるその人の笑顔だった。
あまりの驚きで声も出せなければ、身動きも出来ない私を見て、たけるは言った。
「あれ?あんたってもしかしなくても、塀の上の子?」
えぇっ?私のこと覚えてる…の?
信じられないくらい瞳を見開いた顔の私を見て、
「あ、やっぱりそうだよね?あんたと会う時って、オレいつも爆笑だな」
って、まだ何もいえない私にたけるは言葉を続ける。
「オレのこと知ってる?オレ黒坂たける」
そんなの知ってる、もちろん知ってる。
だけど、私は頷くだけで精一杯だった。
たけるは、そっか知ってるか。と、鼻の頭を人差し指でひとつ掻いて、
「名前教えてくれる?」
と、ハンサムな顔を少し傾けて、私の顔を覗きこんでいる。
私の顔は真っ赤だった。
言うまでもなく、確認するまでもないくらい火照っていた。
「…麻子。小倉麻子」
やっとの思いで告げたのは、本当に名前だけだった。
名前が伝えられただけ、私にとっては上出来だったのだが…。
「麻子ちゃんか、一年生?じゃあ、オレと同じだね!」
たけるはそこで言葉を一度止めて、言った。
「麻子ちゃん、オレと付き合わない?」
えっ!?
今、なんて……!?
一瞬私の耳が現実逃避を起こした。
何で?何か変じゃない!?
「聞こえてる?麻子ちゃん?おーい、大丈夫?」
私を呼ぶたけるの声が、遠くに小さくなっていく。
もうダメ。
思考回路ショート……。
プログラムストップ………。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




