手につきませんでした
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
「麻子っ」
突然呼ばれて顔を上げると、メガネの奥のたけるの瞳が少し怒っていた。
私は、今たけるに勉強を教えてもらっている最中だったことを思い出した。
「ごめん….」
小さく謝るとたけるは、
「何考えてたんだ?全然集中できてないし….」
と、ため息をついている。
自分はやはりおかしいのだろうか、私はそんなことを思っていた。
あれから2ヶ月以上も経っているのに、どうしてなのだろうか、まだ"たける双子説"が頭から離れないのだ。
やっぱり私はおかしいんだろうか….。
私はそう思わずにはいられなかった。
この2ヶ月の間にも、度々違和感を覚えることが何度かあったからだ。
もうひとつ付け加えるのならば、今日も違う感じがしている。
そう感じてしまったら気になって勉強どころではなくなってしまった。
もし、もし本当にたけるが双子だったら?
本当に入れ替わってたとしたら?
それは何のために……?
からかうために?
それとも入れ替わっても気づかない私を笑っているのだろうか…….。
そんな思いが私の中で、どんどん膨らんでいる、たまらない衝動に駆られる。
「今日はもうやめよう。これ以上やっても実にならないだろうし….」
参考書を閉じるたけるに、私は素直に頷いた。
「ねぇ、たける?」
重たく感じる、少しの沈黙を思い切って破り、私は口を開いた。
その割には声がやけに小さくて私自身苦笑いをした。
メガネを外しながら、たけるは手を止めて私を見たところで聞く。
「たけるって一人っ子?」
ポンと教科書を揃えながらたけるは、
「どうしたの?急に」
と、反対に聞き返されてしまった。
「今まで聞いたことなかったから。たけるの家に行っても、お父さんとお母さんしかいないでしょ?だから一人っ子なのかなって」
私は、たけるの反応をひとつも見逃さないようにしっかりと瞳を見て、口を開いた。
「そうだよ。今はね」
いつもと変わらないたける、だけど….!?
今、なんか言った、よね!?
今は…….!?って?
その疑問は私の口から無意識のうちにこぼれ落ちていた。
たけるは瞳を伏せたまま、
「生まれたときはね、三つ子だったんだ。兄と弟がいたんだ。交通事故で死んじゃったけどね」
思いもしなかったことをたけるは、私に告げた。
私はもしかしたら、聞いてはいけないことを聞いたのかも知れない、という思いがとっさに頭を過り、ごめんなさいという言葉が口をついて出た。
「いいよ、別に謝らなくても。もう10年以上前の話だから……」
淋しそうに笑うたけるが痛々しくて、それ以上何も尋ねることが出来ない。
信じよう、たけるはたけるなんだ。
もう考えるのは止めよう。
そんなことあるわけないんだから……。
私は心の中で、自分に強く言い聞かせていた。
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




