初恋は王子様でした
かなり前に書いたものですが、
データが出て来たので、
手直しして投稿していきます。
春の優しい風に乗って女の子達の騒ぐ声が聞こえる。
「あちゃ、こっちおいでよ。憧れの王子様がサッカーしてるよ」
窓際で里佳が私を呼んでいる。
仲良しの美奈もまた私の手を引いて窓まで連れていく。
もう何度となく繰り返されている毎日の変わらない日常的な光景。
窓から見えるグラウンドでは、私がずっと憧れ続けている黒坂たける、その人がドリブルで切り込み、華麗にゴールを決めるところだった。
「やった、あちゃ。ゴール決まったよ」
そんな“あちゃ”こと、私、小倉麻子は小さく頷くだけで精一杯だった。
人より少しおとなしめ、特にコレといって取り柄もなし。
顔も頭も良くも悪くも人並み。
しかも誰から見てもマイペース、そんな私の憧れの人、黒坂たけるは私だけの憧れではなかった。
むしろこの学校のアイドルといっても過言ではない存在であったのだ。
ハンサムな上、勉強もスポーツもトップクラス、何をやらせても抜群の成績を修める。
そんな人に憧れているなんて、はなっから全然お話にならない、とさえ私自身思ってしまっている。
外で声援をおくっている彼女達と同じスタートラインにも、立とうとはしていないのだから…。
「はぁ、あちゃ?もう少し自分をアピールしないと気づいてももらえないよ?それじゃなくてもファンクラブなんてものまであるんだから…」
美奈は、もう少し積極的にさぁ……と、小さく呟いてため息をつく。
「いーの、見てるだけで」
私がにっこり笑うと、みんなが今度は大きくため息をついた。
「ねぇ?ずっと疑問だったんだけど、あちゃはナンデ黒坂の事好きなワケ?確かに顔も頭もいい、でも何かそんなことであちゃが誰かのこと好きになるとは思えないんだよねぇ」
メチャクチャ納得いかないんだよねぇ、と私の顔を覗き込むように里佳は言う。
「あちゃって黒坂と何かあるの?」
えりかも里佳に賛成、とばかりに言葉を続ける。
私は少し口ごもり、たっぷり動揺しながら、
「なっ、ナニ、かって?べっ別に何も、ないよ?ただ…………」
俯いて次の言葉を続けない私に、そこにいた3人は焦れったそうに、
「ただナニっ!?」
と、詰め寄る。
3人とも…コワイ…。
こういう時は、みんなこれっぽっちも容赦してくれないのを、私は知っていた。
そんな迫力に負けて、いつも思わず口を開いてしまうのだから……。
「一度だけ……前に一度だけ困ってた時に助けてもらったことがあるの」
「それってどういうこと?」
「じゃあ、話しとかしたことあるんだ?」
矢継ぎ早に質問されて、
「え~~~~~っと……!?」
戸惑いとか、混乱とか、困惑とかそんな表情を浮かべた私に美奈が、
「ゆっくり少しずつでいいから、話してよ」
と、笑ってくれる。
少しホッとして、今まで誰にも話したことのない、私だけの心の中のあったかい秘密を言葉にすることにした。
「あのね、たぶん、みんな笑うよ?」
「笑わないって」
と、口々に言う。
けど絶対笑うと思う。
それは予想ではなく確信だった。
私自身、他人事だったら絶対に笑うだろう、と容易に予測がついたからだ。
「実は、ね……」
毎日更新予定です。
よろしくお願いします。




