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8. 未来への決意

舞踏会が終わり、二人は広間を出て、夜の静かな回廊を歩いていた。


アレクシスは月明かりの下で立ち止まり、ルシアを静かに見つめた。


「ルシア。」


「……はい」


「私は、あなたと一生を共にすることを決めました。」


彼の声には、迷いはなかった。


「あなたが私を信頼してくれるなら、私は誓います。あなたを守り、あなたの望む未来を共に歩むことを。」


ルシアは、その言葉をしっかりと受け止めた。


「行きましょうか。」


アレクシスが静かに声をかける。


低く落ち着いた声が、夜の冷たい空気を震わせるようだった。


ルシアは小さく頷きながら、彼の手を握り返した。


(この手を取ってもいいのね。)


ほんの少しの戸惑いを抱えながらも、心の奥に広がるのは不思議な安堵感だった。


(彼が隣にいるのなら、どんな場所へ行っても大丈夫な気がする。)


ルシアは静かに微笑み、アレクシスを見つめた。


彼はまっすぐ前を向いていたが、その横顔には確かな誇りと、彼女への信頼が宿っていた。


今までの彼との時間が、ゆっくりと蘇る。


彼はどんな時も誠実で、言葉少なにルシアのことを気遣ってくれた。


(この人を選んでよかった……。)


そんな想いが、自然と胸の中に浮かんでくる。


「……私も、あなたを信じます。」


彼女は静かに微笑み、彼の手を取った。


「これから、よろしくお願いします。」


アレクシスは満足げに微笑み、その手を優しく握り返した。


こうして、二人の関係は確かなものへと変わった。

それは、愛ではなく、信頼に基づいた絆の誓いだった。


この夜、ルシアは初めて、アレクシスという人を心から信じてみたいと思った——。





舞踏会の余韻を残したまま、二人は静かな回廊を歩き続けた。


月明かりが白い石畳を照らし、夜風が優しく二人の間を吹き抜ける。


アレクシスはルシアの手を離さず、ゆっくりと歩を進めていた。


ルシアは、彼の温かい手のひらを感じながら、この夜が特別なものになったことを実感していた。


「……星が綺麗ですね。」


ルシアがふと夜空を見上げて呟くと、アレクシスも視線を上げた。


「ええ。戦場では、よくこうして星を眺める時間がありました。」


「戦場で?」


ルシアは驚いて彼を見つめた。


「夜の見張りや、作戦会議の後など……。静かな時間になると、こうして夜空を見ていました。」


アレクシスの声はどこか懐かしさを帯びていた。


「その時、何を考えていたの?」


「……家のこと、未来のこと……そして、帰る場所があるということを。」


彼の言葉に、ルシアの胸が少し痛んだ。


戦場にいる時、彼は常に死と隣り合わせだったはずだ。


その中で、彼が頼れるものは何だったのだろうか。


「アレクシス様にとって……私は、帰る場所になれるかしら?」


彼女の問いに、アレクシスは一瞬驚いたようだったが、やがて柔らかく微笑んだ。


「……きっと、なれると思います。」


「そう?」


「ええ。あなたといると、不思議と心が落ち着く。」



アレクシスの言葉は、いつもより少しだけ優しかった。



「だから、あなたと共に歩む未来を選びました。」



彼はルシアの手をそっと握り直し、その温もりを確かめるように指を絡めた。


その仕草に、ルシアの心が静かに震えた。


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