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14.夫婦として支え合う日々

結婚して一年が経ち、ルシアのお腹には新しい命が宿っていた。


アレクシスとルシアは、夫婦としてだけでなく、リューンハイム侯爵家の当主とその妻としての務めも果たし始めていた。


2人の関係も更に深くなっていっており、子供が宿ってからは更にお互い深い愛情を感じずにはいられない程だった。


「アレクシス様、今日は領地の視察に行かれるのですよね?」



朝食の席で、ルシアは夫に尋ねた。



「ええ。農作の収穫状況と、村の工事の進捗を確認しに行きます。」



アレクシスは紅茶を飲みながら、領地の管理帳を確認していた。


彼は元々騎士としての経験が豊富だったが、侯爵家を継ぐことになった以上、政治的な手腕も求められる立場にあった。



「私も同行してもいいですか?」



ルシアが静かに微笑みながら言うと、アレクシスは少し驚いたように彼女を見た。



「……身体は大丈夫か?疲れない?」


「大丈夫ですわ。領民の皆さんともお話をしてみたいの。」



彼女の申し出に、アレクシスは少し考えた後、穏やかに頷いた。



「分かった。無理のない範囲で。ルシアの身体が大事だ。」



アレクシスは常にルシアの身体を心配してはそう伝えていた。


ルシアは嬉しそうに微笑んだ。


彼女にとって、この領地は自分の"新しい家"。


領民たちと関わり、この地を知ることで、彼らの生活をより良くしたいと思っていた。





その日の午後、二人は領地の村へと向かった。


馬車の中で、ルシアは窓の外の景色を眺めながら、アレクシスに話しかけた。



「この領地、とても広いのね。」


「ああ。リューンハイム侯爵家の領地は、広大な農地と鉱山を持っている。」



アレクシスは冷静な口調で説明した。



「領民の生活を守るために、税率を見直し、収穫の管理も厳格にしているが……まだ改善の余地はあるかな。」


「あなたは領民のことをよく考えているのね。」



ルシアが微笑むと、アレクシスは少しだけ肩をすくめた。



「当たり前だよ。彼らがいてこそ、この領地が成り立つのだから。」



ルシアはその言葉に深く頷いた。



「あなたは立派だわ。しっかりと領民の幸せを考え、領主としての役目を果たそうとそれているのね。」



アレクシスはその言葉に目を見開き、

「リシア、そう思ってくれて嬉しいよ。ありがとう。」


アレクシスは少し照れた様に微笑んでルシアを抱きしめた。


「私もあなたの力になれる様、頑張るわ。」



彼の誠実な姿勢を改めて感じ、ルシアは彼を支える妻としての役目を強く意識するようになった。






領地の村に着くと、村人たちがアレクシスとルシアを出迎えた。



「侯爵様、奥様!ようこそ!」



農民や商人たちが集まり、敬意を込めて頭を下げる。



「皆さん、元気そうで何よりです。」



アレクシスは落ち着いた声で答え、村長に視線を向けた。



「収穫の状況はどうですか?」



「今年は天候も良く、作物は豊作です。しかし、倉庫の管理が追いついておらず、いくつかの作物が傷み始めているとの報告があります。」



村長が説明すると、アレクシスは顎に手を当てて考え込んだ。



「倉庫の管理が不十分であれば、新たな貯蔵施設を作るべきですね。領の予算を調整し、早急に対応しましょう。」


彼の判断の速さに、村人たちは安堵の表情を浮かべた。


ルシアもまた、村人たちの様子を観察しながら、ふと目の前の女性に話しかけた。



「こんにちは。お元気ですか?」


「はい、奥様。おかげさまで、家族も元気に過ごしております。」


「それは何よりです。でも、何かお困りのことはありませんか?」



ルシアが優しく尋ねると、女性は少し戸惑った後、小さく頷いた。



「実は……この辺りでは、冬になると病が流行ることが多くて。薬草が不足してしまうのです。」


「まあ……!」



ルシアは驚き、すぐにアレクシスの方を見た。



「アレクシス様、この村には医療施設はありますか?」


「最低限の診療所はあるが、医師の数が足りていないな。」


「それなら、もっと薬草の供給を増やして、医師の巡回を増やせませんか?」



彼女の言葉に、アレクシスは少し考え、静かに頷いた。



「いい案だね。王都の医師に協力を依頼し、薬草の備蓄も増やすよう手配しよう。」



村人たちはその決定を聞くと、安堵の表情を浮かべた。



「ありがとうございます、侯爵様、奥様!」



村人たちの笑顔に、ルシアもまた嬉しそうに微笑んだ。



視察を終え、夕暮れ時に二人は馬車へと戻った。



「今日は、お疲れ様。」



アレクシスがルシアを見つめながら言うと、彼女は微笑んだ。



「あなたと一緒に領地のことを学ぶのは、とても楽しいわ。」


「そう言ってもらえて嬉しいよ。だけど……無理はしないで。」



アレクシスはルシアの手を取り、そっと握った。



「ルシアの身体には、新しい命が宿っているのだから。」



その言葉に、ルシアは胸が温かくなった。



(この人は、私と子供のことを本当に大切に思ってくれている……。)



彼女はそっと彼の手を握り返し、静かに言葉を紡いだ。



「ありがとう、アレクシス様。あなたとなら、どんなことでも乗り越えられる気がするわ。」


彼は優しく微笑み、静かに頷いた。



「私もだよ、ルシア。」



こうして、二人は領地を支えながら、夫婦としての絆をより深めていった。



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