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13.穏やかな日々の中で

結婚してから数ヶ月が経ち、ルシアとアレクシスの生活は穏やかに流れていた。


毎朝、彼の腕の中で目を覚まし、寄り添いながら一日を始める——


そんな日々が当たり前のようになりつつあった。



「今日は何をしましょうか?」



ある朝、ルシアが食卓で微笑みながら問いかけると、アレクシスは少し考え、静かに答えた。



「そうですね……午後には少し外に出て、湖のほとりを散歩するのも良いかもしれません。」


「それ、素敵ね。」


ルシアは嬉しそうに微笑んだ。


(こうして二人で過ごせる時間が、とても幸せだわ。)


彼女はそう思いながら、温かい紅茶を口に運んだ。



しかし、その日の午後から、ルシアの身体に異変が起こり始める。






「……ルシア?」



湖のほとりを散歩していたときのことだった。


ルシアはふと立ち止まり、眉をひそめた。



「どうしましたか?」



アレクシスがすぐに気づき、彼女の傍へと歩み寄る。



「なんだか……少し、眩暈がするの。」



ルシアは額に手を当て、ふらりと身体を揺らした。


アレクシスはすぐに彼女の肩を支え、優しく抱き寄せた。



「無理をしないでください。屋敷へ戻りましょう。」


「でも、せっかく……」


「いいえ。あなたの身体の方が大事です。」



アレクシスは迷うことなくルシアを抱き上げ、そのまま馬車へと運んだ。


(こんなこと、今までなかったのに……。)


馬車の中でアレクシスの胸にもたれながら、ルシアは自分の体調の変化を不思議に思った。






屋敷へ戻ると、アレクシスはすぐに侍医を呼んだ。



「旦那様、奥様の容態は?」


「少し眩暈がするようだ。詳しく診てほしい。」



侍医はルシアの脈をとり、いくつかの質問をした後、静かに微笑んだ。



「奥様、最近疲れやすくなったり、食事の好みが変わったりはしていませんか?」


「ええ……少しだけ、食べ物の匂いが気になったり、食欲が変わったような気がします。」



ルシアが答えると、侍医は満足げに頷いた。



「おめでとうございます、奥様。ご懐妊されています。」


「……え?」



ルシアは、一瞬理解が追いつかなかった。



「わ、私が?」


「はい。まだ初期ですが、おそらく二ヶ月ほどでしょう。」



驚きと喜びが混ざった感情が、ルシアの中に広がっていく。


(私……子供を授かったの?)


彼女はふと、アレクシスの方を見た。


彼は侍医の言葉を聞くと、驚いた表情ルシアを見つめていた。



「アレクシス様……」



彼の表情がわずかに緩み、次の瞬間、そっとルシアの手を握りしめた。



「……ありがとう、ルシア。」



その声は、普段の冷静なものとは違い、どこか感情が滲んでいた。



「あなたが……私の子を宿してくれたのですね。」



彼の手は震えていた。



(喜んでくれている。。こんなに嬉しそうに。)



ルシアの胸に温かい感情が込み上げてきた。


彼女は静かに微笑み、そっと彼の手を握り返した。



「私も……とても嬉しいわ。」





侍医が退出した後も、二人はしばらくお互いの手を握ったまま、静かに座っていた。



「……信じられないな。」


アレクシスが静かに呟く。



「私が、こうして父になるなんて……。」


「ふふっ。」



ルシアは優しく微笑んだ。



「あなたは素敵なお父様になるわ。」



アレクシスは少し驚いたようにルシアを見つめ、やがて穏やかに微笑んだ。



「そうでしょうか。」


「ええ。私はそう思うわ。」



彼は何かを考えるように一瞬目を伏せた後、ルシアの手を握る力を少しだけ強めた。



「……これから、あなたと子供を全力で守ります。」


「……うん。嬉しい。」



ルシアはそう伝えてアレクシスに抱き着いた。


アレクシスも優しくルシアを抱いた。


二人の間には、確かな未来への誓いが交わされた。





翌日、アレクシスとルシアは、リューンハイム侯爵夫妻に妊娠の報告をした。



「まあ……!本当に!?」



アレクシスの母である侯爵夫人は、驚きと喜びの表情を浮かべ、ルシアの手を取った。



「おめでとうございます、ルシア!あなたがこの家に幸せを運んでくださったのですね。」


「ありがとうございます、お義母様。」



侯爵は深く頷きながら、静かに言葉を紡ぐ。



「アレクシス、お前が父になるとはな……。」


「はい、父上。」


「責任は重いぞ。だが……お前なら、良い父親になれる。」


「……はい。」



普段は厳格な父が見せる、滲み出るような喜びの表情に、アレクシスも深く頷いた。




その夜——。


ルシアはベッドの中で、アレクシスの腕の中にいた。



「……ありがとう。」



彼が優しく囁く。



ルシアはアレクシスの顔を見上げた。


アレクシスはルシアのその表情を見ながら優しく話した。



「あなたが、私の子供を宿してくれたから。」



ルシアは微笑み、そっと彼の頬に手を添えた。



「あなたとの子供だから、きっと素敵な子に育つわ。」



アレクシスは満足げに微笑み、そっとルシアの髪を撫でた。



「……楽しみだ。ルシア、一生大事にするよ。君も、子供も。私の宝だ。」



アレクシスは、そうルシアに囁き感謝の気持ちを伝えた。



「ええ……。」


ルシアはアレクシスの言葉を受け止め、この人と一緒になって良かった。と、心から思ったのであった。



二人は静かに目を閉じ、これから始まる新しい命との日々を想いながら、眠りについた。


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