第8話、あれるぎー?
「「ありるぎー?」」
マルドス様とメアリーさんの声が揃った。どうやら、ふたりとも知らないらしい。
私は「はい」と頷いて、自らの体を指さした。
「アレルギー。別名、過敏反応。これは病気ではありません。ただの体質だったのです」
アレルギーというのは、体には免疫機能という有害な物質を追い出す機能があり、それらが無害な物質までにも過剰に反応してしまう状態を指す。
その原因物質は人によって異なり、卵や小麦粉などの日常でよく摂取する食物に反応する者から、金属や水などに反応するという非常に珍しいものもある。
だが年齢を重ねることによって徐々にアレルギーがなくなるということも。
まあつまり、毒でも病でもないことだったということ。
そのことを丁寧に説明すれば、ふたりとも納得したように首肯した。
「なるほどな……、つまりはただの体質だったというわけだ」
「そうですか、それは恥ずかしい。ただの勘違いだったのですね」
メイドの言葉を信用していいのだろうか……と思ったが、まあいいのだろう。
よし!これにて一件落着!
だけどそこで、今まで黙っていたレイチェルさんが声を上げた。
「アンドるフ様の倒れた理由がわかったのは良かったのですけれど、でしたら一体、アンドロルフ様はなんのあれるぎー?だったのですか?」
そういえばそうだ、というようにマルドス様がこちらに視線を向けてきた。
続けて使用人の皆も。
「ああ、それはですね……――アリス!」
急に呼ばれたアリスは肩をビクッとさせた。
そして、恐る恐るというふうにこちらにたずねてくる。
「どうしたの?」
「あのさ!アンドルフ様が飲んだ紅茶って、どんな種類?」
「え?……ちょっとまって」
そしてアリスは何かを思い出すようにギュッと眉間を寄せた。
「えっと……そう、たしかアップルティーだった」
やはり。
私はみんなに向けて声高らかに告げた。
「おそらくアンドルフ様は、林檎アレルギーです」