第5話、なんだか事件の始まりっぽい!
「あー、何もやることない!」
私はベッドの上で足をバタつかせる。
すると、骨組みがギシギシと音を立てた。その拍子でホコリがパラパラと舞い落ち、下のベッドを汚す。
「あっ、やばい、怒られる!」
急いでベッドから飛び降りると、すぐに布団の上のホコリを手で払った。
ここは私の自室――といっても、4人共有のボロ部屋だ。
いくらきれいで美人だったとしても、平民である限りはほとんどの場合一人部屋は与えられない。
唯一持っているのは、メイド長のローズさんと、その他諸々の偉い人たち。まあつまりは出世が大事ってこと。
でも私は、一人でいるより皆といた方が楽しいので、案外この暮らしも気に入っている。
……そう、私は一人が嫌なタイプなのだ。
だから今この状況も気に入らない。だって、私以外部屋に誰もいないんだもの!!
他のルームメイトはそれぞれの管轄でお手伝いに駆り出されている。いーなー、私もなにかしたい!って思ったけど、お掃除メイドの出来ることは「掃除」だけ。そもそも御主人様の顔すら見たこと無い私には、お茶会の準備でさえ儚く遠い夢だ。
ベッドの上でボーッとしていたら、気づけば3時をまわっていた。もうこんな時間か。
(あー、今頃アンドルフ様と御主人様はお茶会か……混ぜてとは言わないけど、せめてその場面を見たかった……)
誰しも、「推し」が優雅なティータイムをしていると聞いたら、すぐさまその場に駆けつけたくなるだろう。
はぁっ、とまるで恋する乙女のようなため息をついた、その時――
――パリンッ
……となにか軽いものが割れる音がした。
なんだろう、と首を傾げた直後、甲高い悲鳴。
「えっ、えっ」
パニックになった私は、体の思うままに部屋から飛び出した。
(なんだか事件の始まりっぽい!)
その物語思考だけが頭を巡っていたのだ。
かくして、私は急いでお茶会室まで走った。
「お掃除メイドはお茶会が終わるまで、自室から出てはいけない」という決まりも忘れて――