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第4話、お掃除メイドの宿命

「それで、気になることって?」

 パンをちぎって食べながら、アリスは訊く。

 ここは食堂――の前の廊下。私達が着いたときには、すでに席が全て埋まっていたのだ。

 そこで、仕方なく待合スペースである廊下の椅子に座っているわけで。

 そうしたら、アリスが話の続きを促してきたのだ。

「うーん……ここだけの話なんだけどね?」

 うんうんと頷くアリスに、「もっと近寄って」と手招きをする。

 そして私は、小声で先程あった出来事をアリスに全て話した。

 話を聞き終わったアリスは、難しい表情をしていた。

「はぁ、なるほど。そりゃあエミリーも落ち着かなくなるよねぇ……」

「うん。私、アンドルフ様に何かあったらと思うと、心配で心配で……」

 相槌を打ちながらしばらく考え込んだあと、アリスはガバッと顔を上げた。

「その話が本当なら、もしかしたら今日なにか起こるかも」

「え!今日!?」

 狙われているかもとは思っていたが、それがまさか今日の訪問でわかるとは思っていなかった。

 でも、確かに今考えてみれば、怪しい話を聞いたまさにその日、ターゲット(?)がお屋敷に来るのだ。もし何か起こったとしてもおかしくはない。だけど……

「でも、そんなことあるかなぁ……」

 だって、警備は厳重だし、なんなら騎士だっているし……

 そんな私に、アリスは真剣な顔で話す。

「私ね、先輩メイドから聞いたんだけど、今日あるのってお茶会らしいよ」

「え、ほんと!?」

 お茶会といえば、「毒を盛られる」という王道なシチュエーション(?)があるではないか!

「そうなの!だから、もしかしたら警備の目をかいくぐり、お紅茶に毒を入れ……的な事件が起こるかも!」

「えーっ!」

 いつの間にか声量を忘れた私達に、同じく廊下で食事をとっていた先輩メイドから叱責が飛んだ。

「こら、そこの二人組!もう少し静かにしなさい!」

 明らかにあなたの方がうるさいでしょ!と言いたくなるのを我慢しながら、私達は「すみませーん」と謝る。

「……そんなに怒らなくてもいいじゃんね」

「ねー」

「何か文句でも!?」

「「……ありませーん」」

 良いのか悪いのか揃って返事する2人に、先輩メイドは機嫌が悪そうに「フンッ」 と鼻を鳴らした。

 私が最後のパンのかけらを口に放り込んだとき、お昼時間終了の鐘がなった。

「あっ、じゃあ私もう行かなくちゃ!またね、エミリー。そんなに引きずっちゃ駄目だよ」

「うん!アリスもお仕事頑張ってね!!」

 アリスは、仕事がお掃除のみの私とは違いたまに表の仕事もさせてもらえるらしい。今日もその例に漏れず、少しだけだがお茶会室のセッティングを手伝わせてもらえるそうだ。

 いいなー、と羨ましがりながら、私は自分の部屋へと歩く。

 お茶会は3時から。それが終われば私達お掃除メイドのお仕事の時間。だからそれまでは寮の自室で待っているのだ。

「あーあー。つまんない」

 そんな言葉をこぼしながら、私はスピードを少し早めた。

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